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次も、絶対

作者: きら☆麿
掲載日:2026/05/02

 ワイパーの音が、やけに大きく聞こえる。


 手の中のスマホが、まだ少し熱い。

 画面を消しても、さっきの光景が消えない。


(ほんとに、撮れたんだ)


 指先が、少しだけ震えている。

 深く息を吸っても、うまく落ち着かない。


「〇△駅まで」


 それだけ言って、視線を落とす。

 顔を見られたくなかった。

 たぶん、変な顔をしている。


 嬉しくて、でも、どうしていいか分からなくて。


 ネオンが流れていく。


 窓に映る自分の顔が、少しだけ歪んで見えた。


(あんなに近くで……)


 思い出した瞬間、胸の奥がまたざわつく。


 声も、表情も、まだ耳に残っている気がする。


(ずっと、会いたかった)


 長かった。


 何度も外れて、そのたびに諦めかけて。

 それでも、今日ここにいられた。

 気づけば、口元を押さえていた。


 うまく息ができない。


 そのとき。


「……会えない時間が長くなると、つらいですよね」


 不意に、声が落ちてくる。


 一瞬、意味を考える。


(……あ)


 少しだけ、可笑しくなる。


 たぶん、この人は違う意味で言ってる。


 でも。


「……えぇ。ずっと、待ってたから」


 間違ってはいない。


 言葉にすると、少しだけ現実になる。


 胸の奥が、ゆっくり落ち着いていく。


 それきり、また静かになる。


 さっきまでのざわつきが、少しだけ遠のいた。


 スマホを開く。


 画面の中で、自分が笑っている。

 隣には、ちゃんといる。


(……また、頑張れる)


 小さく息を吐く。


 外を見ると、雨は少し弱くなっていた。


「……〇△駅、着きました」


 車が止まる。


 現実に戻る。


 少しだけ名残惜しい気がした。


「ありがとうございます」


 ドアを開ける。

 外の空気は、少しひんやりしていた。


 一歩、踏み出す。


 さっきまでの自分より、ほんの少しだけ軽い。


 スマホを、もう一度だけ見る。


(次も、絶対行く)


 背筋を伸ばして、歩き出す。

 振り返ることは、しなかった。


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