やっと。
そのまま無言で食べ終わり、私と木下君は食器を洗う。
外から聞こえるみんなの声と食器洗いの音だけが響く。
先に木下君が洗い終わり、その数分後に私が洗い終わった。
「鈴本さん」
王子様はこんな時も笑顔だ。悄然とした声はその笑顔に似合わない。
「告白した事、忘れて。付き合ってもあいつが迷惑かけるから」
無理に笑わないで。
「嫌だ」
俯いていた木下君が私を見る。
「そんなの嫌。木下君はおとぎ話知らないの?」
「あ、いや知ってるけど」
木下君は状況を読めてないけど、そんなの知ったことじゃない。
「知ってるなら分かってるでしょ!どんな障害があったってお互いが好きな2人は結ばれる!シンデレラだって白雪姫だって、死んでも貧乏になっても、互いが好きだから結ばれるの!」
目を見開いたのが分かった。木下君も、なぜか私も。
「……俺達は?」
「木下君はまだ好きだし、私は嫌いじゃない!」
私は木下君の目をじっと見つめて
「そんな悲しい顔見たくない!」
そう言った。自分の言いたかった事を全て伝えたつもり。
木下君は、無理矢理笑顔を保っていた。口角がピクピクと動いている。
「付き合ってくれるの?」
王子様なのに、声が震えてた。
「当たり前っ」
私は、王子様じゃない木下君に強く抱き締められた。