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二重彼氏  作者: 風宮吠魅
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母は強い

 私が後ろを向くと、『罪の翼』と、スーツを着た女性が立っていた。


 1つに結んだ長い茶髪。すらりとしていて、かっこいいそのシルエット。


 間違いなく木下晴菜だった。


「痛ぇ……」


 『罪の翼』は木下晴菜を睨み付ける。


「グーで殴るな」


「あんたが悪い。全部見てたのよ」


 鋭い視線を私に向け、私を指差す。


「あの子の気持ちを考えた?あんたは自分がしたいからってキスしたんでしょっ!」


 そう言って、木下晴菜は再び殴る。もちろんグーで。


「殴るなって!」


「いいや、殴るよ」


 『罪の翼』は舌打ちした。そしてなぜかしゃがみこんだ。


 『罪の翼』はなかなか立ち上がらない。私が遠くから見ていると、木下晴菜は私を手招きする。


「しばらく待ってあげて」


「あ、はい」


 私は自然と背筋を伸ばす。


 無言で立ち尽くしていると、やっと立ち上がる。


「……あ、母さん」


 その瞳は、王子様に戻っていた。

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