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キス
正直、木下君となら付き合っていいと思ってた。言うチャンスを逃したけど、告白の返事はイエスだった。
優しいし、かっこいいし……。ちゃんと私を大切にしてくれそうだった。
けど『罪の翼』はその真逆。
「大嫌い」
私は乱暴に口を拭う。涙が溢れてくる。
「お前なんか、『罪の翼』なんか大嫌いだ!」
キスは好きな人、彼氏とするって決めてたのに。
何であんな奴と。何で、何で。
付いて行かなきゃ良かった。玄関で待ってたら良かった。
「こらっ、つーくん」
下駄箱にローファーを入れようとした時だった。
毎日と言っていい程テレビから聞くあの人の声が、スピーカーを通さずに聞こえた。