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脱走
「どこ行くの?」
歩くスピードの速い『罪の翼』に、私は小走りでついて行く。
「人気の無い所に決まってんじゃん」
『罪の翼』は後ろを向いて、王子に似合わない下品な笑みを浮かべて私を見る。
「何すんの!」
「嫌?」
「当たり前っ」
木下君とは正反対だ。木下君なら、絶対こんな事しない。
「じゃあさ」
急に『罪の翼』は立ち止まる。私も一緒に止まった。
『罪の翼』はくるりと後ろを向いて、私に触れた。
「……んっ」
自分の顔が赤くなるのがよく分かる。『罪の翼』は、勝ち誇ったように笑うだけだ。
……『罪の翼』は私の唇を奪った。