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俺様王子様
彼は木下君ではないと明らかに分かる。
「このまま部活抜け出すぞ」
『罪の翼』は私を無理矢理立ち上がらせると、左手で私の腕を掴み、下駄箱へ走り出した。
「離してよ!」
「俺は啓斗と違って、あんなもんやってらんねーの。分かる?」
前だけを見て、『罪の翼』が言う。
「あんなのより、女といちゃつく方がいい」
「ちょっと!」
男の子の強い力に私が勝てる訳がなく、下駄箱へと連れていかれる。
豹変した木下君が怖い。同時に、どこからか楽しさが湧き上がる。
2つが混ざり合い、乳化していくのを、私は止められない。
下駄箱に着くと、『罪の翼』が私の靴を出してくれた。
私は黙って履いていたスリッパを片付け、靴に履き替える。