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罪の翼
「罪の、翼……?」
どう聞いても、これが名前とは思えない。しかし木下君はこくりと頷いた。
「変な名前だけど、本人がそう名乗ったらしいんだ」
苦笑しながら言う木下君を、私はじっと見つめる。
「俺は啓斗を助ける翼になるけど、俺の存在は罪なんだ、って言ってたらしい」
「らしいって?」
「初めてあいつが現れた時に、そう言ってたらしいんだ。あいつが現れてる時の事、俺は覚えてなくて」
「そうなんだ」
座り込む私達の前を、長い棒を持った作業服を着た人達が出入りする。
「……あのさ」
急に木下君が私を見つめる。まるで電気でも流れたかのように、心臓が飛び跳ねる。
「こんな俺に、引いたかな?」
心配そうに見つめる木下君。
その顔はみんなの王子様なんかじゃなくて、お母さんに甘える子供で。
母性本能って奴なのかな、それを見た私は思わず笑みがこぼれて。
「そんな事ないよ」