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王子の母
さすが長身の木下君、短足の私に比べて、歩くスピードが速い。私は早歩きになってしまう。
「はい、到着」
早歩きに夢中になっていた私は、木下君の背中にぶつかりそうになってしまうが、何とかバランスを取り、木下君と衝突するのを避けた。
そこは玄関だった。私たちの使う玄関ではなく、来賓の人が来る玄関。
「ここで外部の先生を迎えるのが俺達の仕事」
「何で部長じゃなくて木下君と私なの?」
こういう時は普通、部長や顧問の先生が迎えるはずだ。
「俺の母さんだからだよ。料理研究家ーー」
木下という名の料理研究家を脳内検索するが、すぐ終了した。
「あの木下晴菜!?」
驚きのあまり、意識を失いそうになる。
木下晴菜といえば、最近有名になった料理研究家だ。
お昼の番組で料理のコーナーを持っているのはもちろん、最近ではバラエティー番組にも出演している。
そんな有名人の子供と仲良く、しかも告白されるなんて信じられない。