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「男なら抱きしめて来い」2
俺は素直に好きな人の名前を出した。
「鈴本かぁ……頑張って」
背中を強く叩かれた。
「痛いよ」
不満を口にすると、千鶴は俺をじっと見つめていた。
「どうしたの?」
「心配なんだよ」
「心配?」
俺は首を傾げる。鈴本さんに何か問題でもあるのかな?
2人の間に、しばらく沈黙が流れる。
鈴本さんについて悪い噂は聞かない。いい噂を聞いたこともないけど。
俺は鈴本さんの体育の姿に一目惚れして、今日のハンバーグを作る姿を見て確信した。
スポーツ万能で、一生懸命頑張る所。そこが好きなんだ。
「ちょっと!まだ分かんないの?」
いつの間にか、目の前に寮が現れていた。かなり時間が経ってるらしい。
「あっ」
間抜けな声を出したら、千鶴に再び背中を叩かれた。やっぱり痛い。
「『つーくん』だよ」
あぁ、そういうことか。全く分からなかった。
俺と千鶴は、寮に入る。