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「男なら抱きしめて来い」
明かりのまばらな職員室前の廊下。俺は千鶴を待っていた。
気軽に話せる女の子。それが千鶴だった。
なぜか沢山の女の子に好かれる俺。でも、誰とも友達にはなれなかった。
「お待たせ、けーちゃん」
昔からの呼び方で呼ばれる。やめて欲しいが、癖はなかなか治らないから仕方ないだろう。
「どう?『つーくん』は出てない?」
「まぁ、今はね」
苦笑しながら、寮へ向かって歩き出す。
「あいつは出てないけど、好きな人は出来たよ」
「えーっ!」
大声を出す千鶴。ちょっとうるさい。
「誰?誰?」
今度はつかみかかる。そんなにしなくても、最初から教えるつもりなのに。