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王子様の誤算
「はぁぁぁぁ……」
心臓がはちきれそうだ。口からは間抜けな声が漏れ出る。
後ろから伝わる温もりは、現実を教えてくれる。
今、王子様に抱きしめられているということを。
「返事は後でいいよ」
そう言って木下君は私から離れる。
「まって」
体が勝手に動く。後ろを向いて、右手が木下君の手を握っていた。
「どうして、私なの?部長じゃないの?」
昨日、木下君は告白してたのに。
「え、千鶴?」
佐原千鶴。部長の名前だ。
「だって昨日告白してたじゃん」
そう言って、私は手を離した。
「えっ!聞いてたの?」
木下君の顔が真っ赤になる。
「聞かれてたのかぁ……」
木下君は、その場にしゃがみ込む。
「うん。少し聞こえた」
「あれは……」
しゃがみ込んだまま、木下君は昨日のことを話してくれた。