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二重彼氏  作者: 風宮吠魅
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「抱きしめたよ」

 私が後ろを向くと、木下君は笑顔で立っていた。


「どういうこと?」


「後で分かるよ。ほら、三角巾結んであげるから鏡見て」


 そう言った木下君の手には、私のデニム風バンダナが握られている。


「自分で出来るから」


「だって鈴本さんがやったら時間掛かるじゃん。もうみんな集まってるよ?だからやってあげる」


 辺りを見渡すと、もう私達以外に残っていなかった。みんな調理室に行ったみたい。


 私は素直に後ろを向いた。


「……よろしく」


 木下君は少し微笑むと、私の頭に三角巾を結び始める。その手は何だかぎこちない。


「よし、出来た」


 ぎこちなくても、私より早く結べた。私はそれくらい不器用なんだろうか。


「ありが――」


 お礼を言おうとした時、私は後ろから木下君に抱きしめられていた。


「やっぱりもう用事済ませちゃうよ」


 目の前に映る私の頬は赤い。木下君も赤い。


「鈴本さん、俺はあなたが大好きです」

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