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隣の王子様
まだ明るい放課後。家庭科室にジューシーな香りと、肉の焼ける音が漂う。
「ハンバーグの臭い、髪に付きそうなんだけど」
私の苦笑が、家庭科室の後ろに設置してある鏡に映る。
「女子ってそういうの気にするよね」
話している相手は皆様の王子様、木下啓斗。
同級生とは比べものにならない程整った顔。
ただ整っているだけではなく、人を安心させる笑顔があるからこそ、王子様と呼ばれるのだ。
身長は高くないけど、存在感がある。きっとその存在感が、木下君のあだ名、王子の由来なんだと思う。
私は今、そんな高嶺の花とペアを組んでハンバーグ作りをしています。