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小さな話し声
何か言いたそうな顔で、みんなが私を見ている。
そりゃそうだ。だって王子様に頭撫でられてるんだもん。
泣き止んだのを確認すると、木下君はいつものように微笑んで、食事を再開した。
合宿の夜にすることといえば、やはり恋の話である。
「王子ヤバいし」
小林先輩がそう言うと、茶髪の先輩とスカートの先輩も深く頷く。
「王子様に抱かれたいー」
「ケイコエロっ!」
下品な笑い声が広くない和室を騒がしくする。
同じ机に座った6人が同じ部屋で寝泊まりする。木下君は別室だから実質5人。
部長は先生と明日の準備をしているから、今いるのは4人だけ。
「ちょーーんでなったの」
「ーー大きくてーーたみーー」
部屋の外から、男女の話し声がかすかに聞こえた。
先輩達がうるさいし、小さな声だから聞き取りにくいけど……きっと木下君の声だ。