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ときめきか勘違いか
「すいません!」
ドアが開く音と共に、木下君が帰ってきた。
「早く座って」
部長が私の向かい側を指す。
「はい」
目の前に座った木下君は、いつもと同じように見える。今さっきのは勘違いだったのかな。
「では、いただきます」
「いただきます!」
みんなで手を合わせて食べ始める。
「鈴本さん、ハンバーグ美味しいよ」
笑顔で言ってくれる木下君。
「木下君がたくさん教えてくれたからだよ。私だけだったら全然ダメ」
「違う」
木下君は首を振る。
「鈴本さんが頑張って作ろうとしたからだよ。俺がサポートしても、本人にやる気がないと意味が無いよ」
「……ありがとう」
ダメだな……涙腺が弱い。
「ちょ、泣くなって」
木下君は私の頭を撫でる。
「誉めてるんだから笑って」
「ごめんん……」
木下君の優しさを勘違いしそうで怖い。