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 彼女は言う

「ずっと好きだった」

と。そしてゆっくりと続けた。

「この姿のまま会いに行けば、天使である私の存在を感じた時、そこから離れていってしまうでしょう。例え、どうにか会うことができたとしても信じてなどくれないでしょう。天使が悪魔を好きだなんて__。何度も会いに行くという手も考えました。ですが.迷惑かと思いまして。いえ、(おこな)った手も大概ですが」 


 何故だか硬く話す彼女。そして当たり前だが、見知った部分が見えた。それは、風で揺れるカーテンの向こう側のような。だが、一度気づいてしまえば見えやすいか、見えにくいかの違いでしかなく。目の前の見知らなそうだった天使は、既知の存在となるのだった。相手のことを考えたかのような言葉。大人しそうな風に指を前で重ねる姿。無意識か意識してかは知らないが、少し下から見てくる何故か不快にならない上目遣い。


 本当は分かっていた。少し前から。違和感などは際限がないほどは言い過ぎかもしれないが、人間換算での年数でいえばそれなりに共に居たのだ。……人間換算、人間換算なんて言葉を頭を捻らずに出てくるなど。大分……大分……。

 そもそも、何故指摘しなかったのか。能力__。

 いや、惹かれていたなんてことは、万が一にもありえないと……。ありえないと言いた……。


 いやそれより名前だ。向こうは契約時の名前が本名では無いはず……いや、確定だ。この状況なら確定と言っていいだろう。


 悪魔との契約は偽の名では出来ない。しかし、天使の名でも……。

 ならばやはり、あの人間だったときの体。肉体の名として、上手くやったのだろう。

 こう相対して思うが、やはりこいつ天使の中でも指折りの方だろう。実力者がこんなことするはずがないと思ったが、こんなこと実力者でないとできない芸当だ。故に、正体については謎が解けない場所があったのだが……そのままだったようだ。なんという変態……。




 付き合いの長さか。いや、こいつ俺の事「ずっと」て__。

まあとにかく、目の前の変態……は俺の長考を静かに待っていたみたいだ。


「おまえ、名前」

と文の始めだけしか言えてないにも(かか)わらず。速くもそれは

「ああ!」

と言い、すぐに名乗ってきた。


 こちらを好きなのは先程までもさして疑っていなかった。

 恋愛、好き、なんでも良いがそのほうがまだ辻褄が合う。とはいえこんな返答の早さは__癇に障る。こんな、こんなものに捕らえられるとは。やや……いや、ややより一掬は苛立った。


 先程まではこちらを気にしているのを全面に出していたそれは。俺と話せて嬉しいのか、名前を聞かれてなのかは、知らんが。顔とか目とかが爛爛と輝いており、その様がそこまで気にならなかったことがまた癪に障った。

 それでもそちら側の感情の動きの程度の低さが。何を意味するかは明白だ。それは自分でも分かっている。


 だから__俺は。億劫なことに観念したように溜め息を()き、まるで心底嫌いなものを見るような目で輝かしい顔を見て言う。

「__してきたのはお前だ。責任、取れるよなぁ。後、事の全ての責任もお前にある」

(まばゆ)いそれはそこそこに目を瞬かせ、小声で「せきにん」と呟きながら聴いていたようだ。




いくらかして今にもいたずらをしそうな、したり顔がでそれが言う。

「責任、取れます」

見覚えのある顔。それは、お前は判断を間違えたのだと。そう誰かに言わている様でうざったい。

 

 そんな始まりだった。


 その後は、どう責任を取るんだとか。ずっと好きとは何だったのかとか。彼女が決めた責任の取り方によるあーだこーだがあった。

 結論から言うと、今は一緒に暮らしている。

 天使の住処と悪魔の住処の真ん中辺りに両者が住める様な空間を協力……。ああ、ごたごたしながら創った。

 以外と相手に興味があった者がいたというか……。喧嘩相手としていいとか、違いが面白いとか。

 なんだかんだ、此処も閑古鳥が鳴く様な程ではない。

 



 閑古鳥といえば、あの後。

 彼女が天使の方が性格が悪くて、我儘だし、極まると手がつけられない。悪魔の方が人間からすると常識的なはずだ。人間が上手くすれば、問題はない。悪魔との交流は、売買と似ているのではないか。それは人間の身近なのではないか。

 だが、それでなにが起きてもしらないが、とにかく__。といった感じで行動を起こし、この件や前回の人間成りすましの件によってそれを自ら証明するような事件。いや、勇気ある前例なき行動により、人間の世界もこちらの方も変化があった。悪魔も昔よりは__ではないかと思う。彼女は偉大であると、称えられてもおかしくない功績だろう。


 俺は。未だに、あれらの行為はあんなに自らの色々を賭けてするほどの事だったのか。と思う部分もあるが。彼女の楽しそうな所を見るとよかったのかななどと思う。俺は彼女に甘い。だがそれは、それなりの労力の末に悪魔と天使が契約を結ぶというこれまでには無かったものを生み出すことに成功し。俺逹は互いに互いのすべてを懸けることで、契約をした。

 つまり、彼女は逃げる事はできない。それは俺も同じ。詰まる所、甘やかして他にゆくなんて心配しなくていいのだ。




 この契約は差し出すものがある程度大きくないと、上手くいかない。故に、契約している者らは多くない。

 多くないということは、俺らの他にも__。これは変わり者が多くて飽きない世である。




 最近、彼女に大天使の仕事が回ってきた。使える権限が増えるらしく、試しに力を入れて眩しくされた時はそこそこに危なく感じた。

そこそこだ。 だが、大天使。そのあたりの加減を解っているらしい。性格が悪いと自称することはある。

 そんな可愛い彼女は、増えた権限で常に彼女の後ろに感情の色が出ており。俺の彼女はカラフルになったのがここ最近の面白、可愛いポイントである。


 恒に大天使でも良いらしいのだが、彼女も含め幾らかの者らは。それを嫌がっているらしく、仕事が回ってくるらしい。悪魔にはそんな仕事はなく、個人主義。といっても交流が無い訳ではなく、(たま)に会っていたりはする。彼女との話を聞いた大抵の奴らは、始めは少しの同情の色を見せている。これが可笑しかった。そんな日もあった。




 まあそんなこんなで。忙しくはないのは良いのだが、彼女が居ない間も忙しくない。そのため彼女のためにが、趣味である。家事とか、噂話とか、プレゼントを探すだとか。何でも屋のような日々をここ最近は過ごしている。 彼女とするそれらも良いが、彼女の反応を想像してというのも偶には悪くはない。




 彼女が人間に成っていた……成りすましていたような頃の。交流があった者らが生きていたときは、度々会いに行った。

 彼女の知り合いは怒るよりも、呆れていた。

 いくらなんでも、人間の子供に幾年か成りすます。悪魔と契約。本人は天使。

 そして、家や領地の為に悪魔と共に色々していた。他にも、友達の相談やらなんやらなど。俺らがしたことは数え切れない。

 これに関しては、俺も色々言われた。『いくらなんでも__』と。むかつきはしたが、事実である。


 が、蓋を()ければ叶わないと思った恋だったとか。『何をしていたんだ』という顔をしていた彼らも、今は新しい命。彼女は今も彼らが新たな生命として生まれると、ちょっかいを掛けているようだ。


 彼らとの交流でしか見れない彼女もいるし、今の生活には彼らの導きが__などと言えることもあるだろう。

 彼らには……彼らには……。ぜひ彼女との交流を続けて欲しい。

 彼らに拒否権はないが。

 



 部屋にぼわんと突然、彼女が帰ってくる。大天使のときは、この帰宅方法なため。割と、退屈しない日を送っている。




「ごはんなにー」

と間延びした声と共に抱きついてくる彼女を腕の中に。俺は

「今日はね……」

と話し出す。

読んでくださった方、誠にありがとうございます。

宜しければ、評価などよしなにに。


もう一話は蛇足あとがきです。お暇な方などどうぞ。

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