表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Realigi(レアリーギ) ━━世界が誰もに微笑むなら━━  作者: うさぎさん⭐︎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/32

Realig 8 第一部 第三章 第三話 「彼に逢えるか」


   4


「おう、ビリーヴ」

 コーラルリーフは、夜ごとビリーヴを誘いに来る。

「なんつっても、都は、あれだよ、夜こそ楽しまなきゃいけねーんだよ! 歓楽街や繁華街はいいぜー?  ギャンブルだって、奴隷どもを戦わせる闘技場だって、芝居だって、ダンスパーティーだって、サイコーに楽しいぜ! なんだったら、奴隷市場に行って、性奴の五、六人、買ってやってもいいぜ? 性奴は従順だからな、おまえみたいな奥手っぽい奴には向いてるだろ? あ、それとも、娼婦館のおねーさまのほうがいいか?」

「オレは、そんなの、いいよ……。もう、寝る」

「なんだよ、なんだよ、そんな早く復ちまうなんてよ、汗して働く庶民やら、それより更にひでー、人以下の奴隷じゃねーんだからよ。ま、逆に下賎な奴らの中には、深夜も働かないといけねぇのもいんのかもしんないけど? うわ~無すぎ」

 布団に潜り込むビリーヴに、コーラルリーフはわざとらしくなげく。

「オイオイ、何度も言うようだけど、夜の楽しみを知らねぇなんて、人生の楽しみの半分も知らねーってことだぜ」

「……それより何か、オレに仕事をくれよ。オレのしようとする仕事の邪魔しないでくれよ。落ち着かないんだ、何かしていないと」

「かー! これが天下の仙人のセリフかねー?」

 顔に手をやり、天井を仰ぐ。

「父上のご命令どおり、粗相のないように扱ってやってるだろ。何が不満なんだ? 小姓だの侍女だのだってたくさんつけてやったし、食事だって、服だって、最高級の━━それこそ父上と同格か、それ以上の物を与えてるだろ。……なのに、自ら部屋の掃除をしようとしたり、料理をしようとしたり、庭師や馬丁ばていを手伝おうとしたり、従僕の力仕事を手伝おうとしたり……ワケわかんねぇよ、俺。そんなの、下の連中にやらせときゃあいーんだ。なんで好き好んで、そんなメンドっちー、単しい仕事をしなきゃいけないわけ?」

「…………」

「仕方ない。夜が嫌なら、日中━━明日にでも、狩猟に行くか? 愉快だぞ、逃げ惑う獣どもを射殺すのは。ポーラスター兄上は、狩りがお上手で、奴隷どもを狩り場に放して貼ったりもしていらっしゃるらしい。さすがにオレはそこまではしないけどねぇ。ま、奴隷なんぞに生まれた━━神に選ばれなかった青の種族じゃ射殺されても仕方ねーよな」

「コーラル……!」

 ビリーヴは勢いよく上体を起こし、ベッドの上で、コーラリーフを睨む。

「オレの知っているおまえは、そんなこと、言わない……!」

『働かざる者は食うべからず! 人は働かなければならん。そうしなければ、美しい心が曇ってしまう』

『勝手に死んじまえ‼︎  おまえなんか━━ッッ‼︎!』

『意味がある。レアを拾ったことにも。おまえを拾ったことにも。━━きっと、意味が、あるんだ……』

『わかんねぇんだ。俺だって、誰だって、なんで、存在しているのか。自分が━━なんなのか』

『たとえそうだとしても━━やらない』

 ずっと、憧れていた、青き瞳の暮らし。

 それこそ、自由で華やかな貴族や王族の暮らし━━王宮の暮らし。

「だけど━━こんなふうなのは、なんか、違う……!」

 まくらをひっつかんで投げる。

『こんなものに、一体、なんの意味がある?』

『なぜ、わかるんだ? 相手のことが。目に見えない、ハートが。瞳の色やなんかで、なぜ、相手を虐げたり、素晴らしいと褒め称えたりできるんだ?』

『人は、生まれた時から等しく尊い者』

「おまえは、ホントに、コーラルなのか……⁉︎」

 天蓋の向こうに追い出され、コーラルは唇を噛む。

『俺は━━生前、なんもわかっちゃいなかった!』

「本当に、おまえが、あのコーラルになるのか……⁉︎」 


 部屋を追い出され、コーラルリーフは通路の壁を挙で打っ。

「……わからねぇ」

 俯き、かぶりを振る。

「……あいつの言うことは、全然、わからねぇ……」

 閉ざされた紫の扉を見つめ、苦しげに言う。

「なのになぜ、あいつの言葉が、こんなに、気になるんだ……」

 今まで、どこにもいなかった。

 ━━あんな、奴……

 マントを翻し、歩きながら、コーラルリーフは柴の瞳を揺らす。

「……わからねぇよ、ビリーヴ……」


   5


 ここは、過去の世界だ。

 ビリーヴはそう思っていた。

 だって、コーラルが……生きている、コーラルリーフがいる。

 彼が、本当にあの、コーラルなら……

 ━━どうしてだかは、わからない。

 自分は、過去の世界に来てしまった。……

 だけど、知らない。

 こんな、紫の瞳の王族なんて。━━紫の瞳が、青の瞳を支配していたなんて。

 そんな、歴史、聞いたことがない……!

「一体、どれほど━━何百年……? 過去の世界なんだ……?」

 生活レベルは、さほど低くはないようだが━━。ここが王宮だからかもしれないが……。

 わからないことだらけだ。

「それとも、意図的に、青の瞳の支配が始まってから、過去の歴史を封印したのか……?」

 しかも、自分は━━まるで、あのガイコツのコーラルのように、水や食べ物を何もない空中から出現させたり、新もないのに火を起こしたりだって、できるようになってしまったのだ。

「本当にオレは、仙人━━神仙なのか?」

 考えられるとすれば、時を越えるという奇妙な━━ありえないはずのことを体験してしまったせいか?

 それくらいしか、思いつかない……

「この、瞳だって……なぜ……」

 鏡に映す度に、思い出す。

 ━━レアリーギ。

 彼女は、どうなったのだ……?


   6


「神仙様、お食事をお持ちしました」

 紫色の外ハネの髪に、紫色の瞳の娘が、食事の載った盆を片手に、扉を開いて現れる。

「ありがとう」

 先日落としたばかりの砦を、今は彼らは拠点にしている。

「各地で、我が同胞たちが、次々と、青の瞳の支配者たちを倒しています。奴隷解放と平等の大義のためにま

 彼らは希求している、青の瞳の人々の自由を。

 ━━青も、柴もない世を。

「あなたは、本当に、それでいいのですか、ハープ姫?」

 紫色の瞳の、童顔で小柄な娘は静かに笑う。二十歳だということだが、五歳は若く見える。プロポーションはよさそうだが、慎みが深いのか、露出の少ないローブのような服を好むらしい。アクセサリーといえば、ペンダントくらいか。はでな物はあまり好まないようだ。しかし最近は、革命のため、活動的な服を着、武器も手にする。運動神経は、育ちのいい姫にしては意外といい。

「ええ。私は、父を討ち、ミストに真王になって欲しい」

 レアリーギと机を挟んで座っていた青年━━ミストが顔を上げる。

 水色の、肩より少し短い、不揃いにすいた髪。切れ長の目。脳は青━━。

 長身中肉で、青系の服を着、よく整った顔をしているが、愛想がなく、口数も少ないが、人望はあり、不言実行タイプの━━頼りになりそうな印象がある。十九歳くらいか。

 彼が、各地で狼煙を上げた、奴隷解放平等革命軍━━紫の側は反乱軍と呼んでいるが━━の内の、主な司令官の一人。

 ━━レアリーギは知っていた。

 ここは、過去の世界だ。

 自分は、教えられていた、《レアリーギ》で。

 紫の瞳が、青の瞳を支配していたこと。

 ビリーヴの出現で知ってしまった━━、

 世は変わった。

 ━━青の瞳が、紫の腫を支配している……

 ビリーヴが、時の歪みを通って《レアリーギ》に現れたのでなければ、

 世の流れは、紫から、青の支配へ流れる。

 この世界へ来るまで、時を越えることができるなんて……知らなかったけど。

「神仙様……」

 机上の地図に目を戻す。ハープが机の隅に置いた食事に、レアリーギもミストもまだ手をつけない。

「次は、どこが落ちます?」

「えーと……」

 レアリーギは、革命軍がどう動いたか、それを歴史として、いくらか暗記している。

 《レアリーギ》には、そういったことに詳しい、元軍関係の者もいた。

「そろそろ、ここが、落ちるはずですね、ミスト」

「なるほど……」

「この戦は、重要です。第一王子ホープが、前線に出てきます」

「お兄様が……」

 ミストに寄り添うように立っているハープが、悲しげに顔を歪める。


 神仙。

 進軍中、海でレアリーギを見つけた革命軍の者たちは、レアリーギをそう呼んだ。

 彼女の瞳の色は、神仙たる証。

 神が我らが大義を果たすために使わせたもうた、神仙に違いない!

 そう最初に言ったのは、誰だったか。

 レアリーギは、元いた場所へ━━《レアリーギ》に還りたかった。

 コーラルや、みんなに……

 ビリーヴに━━逢いたかった。

 だから、せめて歴史を変えないために、彼らに味方することにしたのだ。

 あのとき、確かにもう一度、ビリーヴの手を掴めたと思ったのに……どこかで離してしまったのか━━そもそも、一緒に時を越えること自体、無理だったのか。いくら探しても、あのミストたちと出逢った海に━━彼はいなかった。もしかしたら、手を途中で離した━━最後まで握っていられなかったせいで、ビリーヴは別の場所に出現したのかもしれない━━そんなふうにも考えて、革命軍についていきながらも彼を探しているのだが━━どこにも、彼は、いない……

 どうしてこんなに、彼のことばかり、気になってしまうのか。

 こんなに胸が苦しいのか……

 あまり、親しくなれたわけでもなかったのに……

 彼と友だちになったのは、コーラルのほうで。自分は、あまり、彼と話すこともできなかったのに……

 ━━初めて見た、生きた男の子。

 ずっと、憧れていた、存在……

「……ビリーヴ、どこにいるの……」

 そうして、レアリーギには気になっていることがある。

 いつもしていた舵型のペンダントを失くしてしまった。海で、落としてしまったのか……。

 あれは、自分が赤子で捨てられたとき、くるまれていた布地の内側━━ポケットに入れられていたものだったのに。

 それとあのハープのしているペンダントが、とてもよく似ている。

 そして━━、

 ━━ミスト。

 あの人の、声……


 しかし神仙と呼ばれても。

 レアリーギには大したことができるわけではない。

 コーラルたちのまねをして、彼らにできたこと━━水を出したり、火を起こしたり、食事を出したり━━試してみたそんなことが、できただけ。

 それでも、大きな驚きではあったが。

「神仙様がいれば、我らに敵は無し! 神仙様は、世界を変える力をお持ちになられているのです」

 彼らはそういう。

 だけど、そんなの無理だ。

 今の自分や、《レアリーギ》のみんなの力が、仙人クラスと呼べるなら。三つの奇跡を人に与える神仙とは━━格が違いすぎる。

 この世界では、こう考えられているらしい。

 《レアリーギ》で教わったことと合致する。

 仙人や神仙は幸福を呼ぶ。

 特に、神仙に祝福された者は、三つだけ、願いを叶えてもらえる。

 だから、皆に特別に扱ってもらえるのだ。

 ちなみに、この時代では、神は、この世界のどこかにある神山に住んでいるといわれている。人では険しすぎて昇れないその山に住むのは、金色の瞳を持つ、男の神。

 レアリーギはこちらはよく知らなかったが、ビリーヴたち紫の瞳の者が奴隷とされる時代に信じられている神は、女性で、海に住むとされている。

 共に、その時代の階一絶対神である。

 確かに、レアリーギの存在は志気を高め、その知識は戦略的に━━ミストたち革命軍の役に立っているのかもしれない。

 何よりの強みは、

 青の勝利を知っていること━━。

 だから、言える。

「必ずや、青の勝利が訪れることでしょう」 

 だからといって、それが本当に絶対だと言じているのかと自問すれば━━やはり不確かさは拭えず、不安ではあるし、命の保証があるわけでもなく、還れる保証もなく。

 彼に逢えるかもわからないけど……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ