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Realigi(レアリーギ) ━━世界が誰もに微笑むなら━━  作者: うさぎさん⭐︎


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Realigi 7 第一部 第三章 第二話 「邪魔なだけだ」


   2


「おい、おい、」

 頬をつつかれている。

「おい、起きろってばよ、おまえ」

 寝返りを打ち、声に背を向け、ビリーヴはぼやく。

「……やめろよ、コーラル……今、起きるから……」

 声のしたほうに首を巡らせ、ビリーヴは固まる。

 赤い髪は、逆立てたスタイル。紫色の瞳は、傲慢そうに眇められているが、どこか楽しそうに輝いている。赤を基調とした上等そうな服を着た少年或いは青年が、天蓋つきベッドに片手をつき、自分を見下ろしている。

 ビリーヴは思わず上体を浮かし、彼を凝視する。

「……コーラル……?」

 無遠慮に、彼の頬を撫でる。滑らかな肌触り。

「おまえ、どうしたんだ、コレ、被りもの?」

 寝起きのため、糸目で、ビリーヴは彼の両側頭部を掴む。

「おまえ、なに、仮装パーティー?」

 被りもの(?)を取り外そうとするビリーヴを、赤毛の青年が殴る。

 紫の天蓋の向こうに飛び出、背の長剣を引き抜き、ビリーザのほうへ向ける。

「無礼者ッッ‼︎」

 威圧的に、傲慢に、彼は言った。

「アメシス国第三王子である、この、コーラルリーフに対して、その態度はなんだッ‼︎」


「……は?」

 寝ぼけモードの残る様子で、ビリーザはあくびする。

「……ヘンな、夢」

「夢? 夢だとォッツ⁉︎」

 天蓋を払いのけ、再びビリーヴに近寄り、コーラルリーフは微高する。

「ちょっとくらいかわいくって仙人だからって、調子に乗ってんじゃねぇッッッ‼︎」

「仙人? 仙人はおまえだろ?」

「━━は?」

「バカ息子ォォッッッッ‼︎!」

 いきなり割り込んだ叫び声に、二人して部屋の入り口のほうへ向く。

 一瞬、セシボンかと思ったが、声も姿も違った。柴の髪、柴の顎ひげ、柴のたっぷりとした服を着、アメシストの輝く王冠を被った中年の人物が、そこにはいた。

「ち、父上!」

 慌てて天蓋の外へ飛び出したコーラルリーフに、彼はダッシュし、エルボーをかますと見せかけ、隠し持っていたツボを投げつけた。

「うわ、たっ……!」

 間一髪、それを交わし、砕けたツボを見下ろし、コーラルリーフは嘆息する。

「なにをなさるのですか⁉︎」

「なにをする━━は、わしのセリフじゃつ、むしろ!」

 コーラルリーフを力尽くで跪かせ、更に力を込め、ビリーヴに向け頭を下げさせる。彼も踏き、頭を下げている。

「この世間知らずの無礼者を、どうかお許しください、()()様……!」

 ビリーヴは天蓋の垂れたベッドを抜けだし、恐る恐る二人に近寄る。

「あ、あの……い、一体、これは……ここは……あなたたちは……」 

「ここは、アメシス王宮、貴賓室。わしは、アメシス国王ヒース、これは、我が愚息、コーラルリーフにございます」

「アメシス? ここは……《レアリーキ》じゃ……幽霊海域じゃ、ないのか……⁉︎」

 薄紫のカーテンの揺れる窓辺へ駆け寄る。

 見下ろせば色彩織りなす庭が広がり、広大な敷地の先に、白い石造りの大きな別棟が建っている。紫のフラグが風にそよいでいる。

「……り、陸地……?」

 いや、この部屋だとて、とてもゴージャスだ。《レアリーギ》の特等船室なんか目じゃない! たとえあの家具や何かを磨き、直し、元通りの輝きを取り戻せたとしても、かなわないだろう。白い石造りの広々とした部屋には、紫を基調としたとても高価そうな家具や装飾品や小物などが置かれている。

「…………。わ、わからない」

 リアルな妄想? ばかけた幻?

 ついに自分の気は、ここまで狂ってしまったのか……?

「ていうか、アメシス王国って、どこ……?」

 そんな場所は、知らない。

 世界には、青の王と青の人々の支配する本土と、その国に含まれる島々。

 それしか、ない。

 ブループロミス。

 それが、国名で━━自分の知る世界の名だ。

 まだ誰も、新大陸を━━他の陸地を見つけた者は、いない……。

「まさか、ここが、夢の、新大陸……? でも、なんで━━コーラルが、王子……?

っていうか、おまえ、ホントに、あのガイコツのコーラル?」

 ━━別人……?

 の、わりに、声がそっくりだ!

 彼は決して、あんな人を見下しきった━━偉そうレベルマックスな口は利かないが……

「顔を、上げてください」

 ヒースが━━続いて、ふてくされて横を向いていたコーラルリーフが顔を上げる。

 ━━紫。

 紫の瞳をしている。……

「嘘、だろ……?? なぜ、国王と王子の目の色が━━紫でありえるんだ……?」

 わからない……

「おまえ、すっげー意味フメー」

 空目遣いに嘲笑する王子の頭を、国王が殴る。

「コラ、バカ息子、なんていう口の利きかたを━━」

「だってさ」

 身軽に立ち上がり、コーラルリーフはバカにしきったように眉を竦め、両手を広げる。

「当たり前すぎじゃん? この世には、二種類の人間しかいない。紫の瞳の支配階級と━━青の瞳の奴護階級。ガキだって知ってる、常識以前の問題だぜ?」

 ()()()()()()()()と━━

 ()()()()()()()()

「ぎゃ、逆だろッッ⁉︎」

 裏返った声を上げるビリーヴ。キレた国王が叫ぶ。

「誰か参れ! このバカ息子を、この部屋から閉め出せ‼︎」 

 すぐに兵士たちがやってきて、「ご無礼を、王子」コーラルリーフを部屋の外へ連行してゆく。

「な、なにすんだ、放せ、放せ、無礼者ォッ‼︎」

 遠さかる声に、ビリーヴは不安を覚える。

 ━━コーラル(?)が連れていかれた。 

 ここには、自分の知っている者が、いない……。

 価値観の逆転した世界━━⁉︎

「な、なんだ、なんなんだ、ここ……」

 ━━ここは、どこだ⁉︎

 我知らず震えるビリーヴに、跪いたままの国王が声をかける。

「お顔の色が、優れないようですが……」

 ビリーヴは部屋を見回す。鏡台へ走り寄る。

 人は、自分の存在を━━その姿を確認することで、心を落ち着かせることがある。

 そんなことを考えたわけではないが……

 もしかしたら、変わってしまったコーラルの姿に、自分の姿に━━存在に、不安を覚えたのかもしれない。

「……う、嘘だ……」

 鏡に指を触れ、震える声で呟く。

「あ、青…………」

 夢にまで見た、澄んだブルー。

 だけど━━……

「左は、柴のまま……」

 レアリーギの笑顔が頭に浮かぶ。

 彼女の瞳は確か、右が紫。左が、青。

 今の自分は━━、右が青。左が、柴。

「は、ははは……」

 乾いた声で笑う。

 ━━夢だ。

 青い瞳の映る鏡をなぞって、掠れた声で囁く。

「夢だ……」

 その瞳から、一筋、源が伝う。

「信じられない……」

 たとえ、片方でも、

 ━━青の瞳になれるなんて。


「神仙様……」

 遠慮がちに、背後から声がかかる。

 振り返ると、そこには跪いたままの、国王。

「まさかとは、思いますが……出過ぎた申し出かもしれませぬが、もしや、お忘れですか? その、左右色違いの瞳こそが、奇跡の力を━━三つ奇跡を━━使う、神聖なる神仙の証。━━あなたこそが、我ら、紫の瞳の者たちのために、神が使わされた神仙に、間違いありませぬ……!」


   3


「あの神仙、記憶喪失かもしれんな。でなければ、海に落ちたときに、頭をおかしくしたのか。言っていることが、よくわからん。まぁもともと神仙など不可解な存在だが。しかし、どういうわけか、あのバカ息子にはなんだかんだ言いつつ、懐いているようだ……」

 顎ひげを撫でながら、国王は笑い、目を光らす。

「きゃつが本当に、三つの奇跡を使える神仏なら、使える……」

 王座の前には、自分の一番目の息子と、二番目の息子が賭いている。。

「陸下、世継きの王子は、このわたくしです。どうかあんな愚弟など外し、わたくしが宮廷にいる間は、神仙様のお相手役は、この、わたくしめにお譲りを……!」

「いえ、わたくしに……!」

「━━ならぬ」

 玉子たちは、国王に悟られぬよう、小さく音打ちする。

「それよりも、青の瞳の反乱軍は、まだ潰せぬのか」

「わたくしどもも、全力をあげているのですが━━」 

「なにぶん、ハープを人質にとられたままでは、思うように動けず……」

「えぇい、言い訳はよいわッッ‼︎ 必ずや、ハープを救出し、きゃつらを倒すとあれほど申すから、おまえらに我が軍の指揮権を与えたのじゃ! これ以上手間取るようでは、その任を解くぞ‼︎」

「ど、どうか、陛下! それだけはなにとぞお許しを」

「必ずや、陛下のご期待に応えますゆえ……!」 

 国王ヒースは、盛大にため息をつく。

「下がれ。━━この任、このまま続行を許す」

 王子たちは顔を上げ、頭を下げ直す。

「「ありがたき幸せ‼︎」」

 王座の間を辞すると、ホープは広い通路を弟と並んで進みながら、愚類をこぼす。

「父上は、正妃の息子の俺たちより、あんな、羊飼い出の第二王妃のワガママ息子ばかり気にかけておられる……! アイツは甘やかされ放題だ。あんな、船の建造まで許されて……」

 たくましく筋肉のついた体。高い背。太くましい眉。尖った犬歯。紫の髪に、紫の瞳。

 第一王子、ホープ。

 一見、野性的な感があるが、その目や口元は優しげで、好いた相手は不器用ながら大切にしそうな━━そんな青年である。年は、二十五。実際、彼はその素直な性格ゆえに、評判がよい。考えるより体を動かしているほうが好きなタイプだが、王座を継ぐ者にたりうる頭も持ち合わせているらしい。

「バカな息子のほうがかわいい、とな?」

 冷たく凍る紫色の瞳。皮肉げな口元。黄緑色の長い髪を一本の三つ編みにしている。

 第二王子、ポーラスター。

 線の細い長身で、女性受けしそうではある。年は、二十二。知的だが━━心を見せない、油断できなそうな青年である。

「つーか、あの羊飼い女のほうが、母上よりを寵愛を受けてるってのが、ムカつくよな!」

「政略結婚の相手より、町で見惚れた下賎者のほうが愛しい、とな。奴隷じゃないだけ増しだが」

 弟の冷静な口調に、ホープは噛みつく。

「おまえは、悔しくないのか! 母上をないがしろにされて!」

「兄上はいつまでたっても、マザコンだな」

「なんだとォッッ⁉︎」

「別に、それは、父上たち、夫婦間の問題だろう。同と正妃の子どもでも、ハープは大切にされてるしね」

「ハープはただ一人の娘だからだろ! 俺だって、妹はかわいい!」

「マザコン&シスコン……」

 冷笑するポーラスターの襟元を、血管が切れそうな勢いで、ホープが掴む。

「なんだと⁉︎  家族を大切に思って、何が悪い⁉︎」

「……兄上は、血の気が多い」

 柔らかに手を離させ、襟元を正し、ポーラスターは優雅に笑んでみせる。

「口が過ぎました。両親を同じくする兄弟同士、協力し、反乱軍を打ち倒し、ハープを救い出しましょう」

「おう、わかればいーんだぜ!」

 気安く肩を組んで、ホープは笑う。

 やがて、兄王子と別れ、一人中庭に面した柱廊をゆきながら、ポーラスターは呟く。

「ホープも、コーラルリーフも、ハープも、青きも瞳も━━」 青い空を仰ぐ。「みんな、邪魔なだけだ」


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