Realigi 24 第二部 第二章 第二話 「あなたなら、僕に何を望みますか?」
月が雲に隠れ、カーテンの間から差していた光が消える。
ミザントは寝室で、奴隷や侍女の美しい女たちを抱いていた。
アイスブルーの髪に、冷たい青の瞳。十八くらいだろうか。彼には特に興奮した様子もなく、醒めたまま、女たちだけが翻弄されている。
「ミザント様.……」
「……飽きた」
「え?」
ミザントはベッドの脇に落ちていた黒と青を基調とした服を軽く着る。
ベッドの上で女たちは息を整える。
「おまえらを抱くのは、もう、飽きた」
「そ、そんな……」
剣を拾い、闇に閃かせる。
「切り刻んで━━退屈しのぎに遊んでやる」
「国王陛下、賊が!」
「何者かが、侵入し、……ぐふッッ⁉︎」
続き部屋から悲鳴が起きる。近衛がやられたらしい。
ドアが破られ、賊どもが部屋へ飛び込んでくる。女たちが悲鳴を上げ、何人かはベッドから落ちる。逃げようとする。または固まっている。
「━━おもしろい」
口角を上げ、ミザントは笑む。
「初めまして、兄上?」
長い前髪を手で横に流し、リアライズは余裕の表情で、兄を見上げている。
「僕を捨てたのは、父や━━バカな大人たち。あんたには罪はねぇーかもしれねぇ。でも、僕が神王になるには、邪魔なんだよねぇ」
持っていた剣を振り払い、構える。
「死んで?」
ミザントの前後左右から、炎が迫る!
「な━━⁉︎」
上に飛び、長く一つに束ねた後ろ髪を揺らし、炎を避け、床に着地する。
「なかなかやるねぇ、ミザント?」
だが、その頃には、リアライズの供たちが、彼に迫っている。
「く⁉︎」
剣を捌き、次々襲いくる男たちを退け、屠ってゆく。
女たちが、泣き叫んでいる。
「結構、やるじゃん?」
大方片づけ、ミザントはリアライズを睨む。
「な、なんだ、おまえは……バ、バケモ……、ッ⁉︎」
上から振ってくる炎の群れを、ミザントは間一髪、避けるが━━長いしっぽのような髪の端に、火がつく。
「くぅぅ⁉︎」
炎を叩き消し、笑みを崩さないリアライズを見、汗を流す。
普通の人間相手なら、負ける気がしない。
だが━━
コイツは、なんだ……⁉︎
「兄上は、何がお好きですか? 炎? 氷? 水? 風? 雷? ━━他にもいろいろできますよ。一番得意なのは、炎ですけどねぇ?」
自分の赤毛を掴み、リアライズは首を傾げる。
「兄上は、アイスブルーの髪ですねぇ。━━決めた」
嬉しそうに、彼は笑む。
「つららの群れに串刺しになって、血だらけで逝っちまえよ!」
「ぐあ⁉︎」
前後左右上方から━━ドームを狭めるように二段構えで無数に迫る、冷たいブルーにきらめくそれを避けきれず、ミザントに刺さるつららたち━━
「抜けろ」
指を軽くリアライズが揺らすと、体勢を崩したミザントに突き刺さったつららたちが一斉に抜ける。
血が、吹き出した血が、部屋を染める。
「さようなら。ミザント兄上」
更に降るつらら。
屍を冷めた目で見下ろし、リアライズはしていた金の指環を抜く。
レアリーギがペンダントと共に捨てられたように━━
リアライズはそれと共に、王宮を追われた。
「母上のご意悲━━ですよね、ミスト様?」
ミストを見、指環を天井のほうへかざす。
「これを見たら、母上、僕が息子だって、証明してくれるかなぁ?」
唇を歪めるように笑む。
「でも、そしたら、母上━━王母にも死んでもらう。だって、父上たちがその場で殺そうとするのを止め、せめて海に投げて殺すよう説得し、名前とこんな指環一つくれたって━━それって、所詮━━母上は、僕らが殺されるのを止められたわけじゃない。━━同罪だ」
手に入れた王座に座り、それを叩き、リアライズは無邪気に笑う。
「今なら、もしかしたら、三つの奇跡が使えるかもしれませんよ? ミスト様━━」
不可思議な攻撃を得意とするリアライズは、まだ、三つの奇跡を使えたことがない。
「あなたなら、僕に何を望みますか?」




