Realigi 21 第二部 第一章 第三話 「早く降参しないと、死ぬよ?」
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デッキで、ビリーヴは盛大に息を吐き出す。
シミターを構えたアクティが、不敵に微笑む。
「やれ~! キャプテン‼︎」
「そんなヘナチョコ、ブッ倒せ‼︎」
海賊たちが叫び、口笛を吹き、上のデッキで観戦を決め込んでいる。
「この決闘に勝った者が、ヴィヴィをもらう! ついでに、負けたもんは勝ったもんの言うことを、なんでも一つ聞く! いいな⁉︎」
顔を押さえ、更にため息をつく。
……どうしてこういうことになったのか。
「ほらよ!」
自分用に、シミターを投げ渡される。
「キャプテン、女絡むと性格イッちゃうからな~」
「普段はもっとカッコイイんだけど……」
海賊たちが、おもしろそうに笑っている。
ビリーヴは顔を引き締め、アクティを睨む。
と、いきなり彼はアクティに背を向け、デッキを一直線に駆けだす。
アクティの目が点になる。
「……。ふっ、ふはは! いきなり逃げ出すとは、ソォトォ弱いと見た!!」
確かにビリーヴはかわいい顔だし、体も細いし、あまり強そうには見えない。
ビリーヴは角を大きく曲がり、船測方向へ姿を消す。
「ふはははは、俺様の勝利だぜぇ~! そしたら、ヴィヴィとあぁんなことやこぉんなことして……う、うほほほ、うははは」
ヤバイ系のピンク色の笑い声を上げ、余裕かましモードで走ってくるアクティ。顔が崩れまくり、目がとてつもなく妖しい。
「うお⁉︎」
角を曲がると、いつの間に並べたのか、でかいタルが横一列に壁を造っている。
ジャンプして超える。
「うおお⁉︎」
しばらく進むと、タルが二段重ねで、壁を作っている。
「なにくそ!」
ジャンプして越える。
「うおおおッッ⁉︎」
しばし進み、今度は三股重ね。
「く、くそォッ⁉︎」
そろそろキャプテンジャンプのキャパシティでは追いつかなくなってきた。
「ナニォォォッッッ⁉︎ こないだマスターしたばかりの、キャプテンハイジャーンプ!」
高飛びのように、華麗なフォームでタルを飛び超える。
当然、マットはない。
「ウギァァァ⁉︎」
床に激突して、悲鳴を上げる。
「ば、バカ言え!」
起き上がり、しばし先にある四段重ねのタルをダッシュし蹴り上げる。
「こんなんでヤラれてたまるかッッッッ!」
何を思ったのか、タルの外側━━欄干に載る。ここなら、ほとんど何も障害物がない。
「秘技! 欄干走り‼︎」
恐るべき平行感覚で、欄干を走り抜ける。
タル壁ゾーンをクリアし、デッキに降りる。
ちなみに、並んだタルの間には、ビリーヴが通り抜けていけただけの隙間が、各壁にちゃんと一つは空いていたのだが━━イッちゃってるアクティの目には入らなかったらしい。
角を走り曲がる。
「うげ⁉︎」
張られた縄につまずく。
船尾側の欄干に片端を結び、もう一端を、しゃがんだ誰かが掴んでいる。
「何しやがる、てめぇ⁉︎」
「ご、ごめんなさい……」
ヴィヴィだった。アクティは瞬時に顔を和らげ、カナリカッコよくする。元々顔には自僧があった。
「いや、いいんだ! ヴィヴィ! 君になら、縄で縛られても、鞭で打たれても!」「は、はぁ……?」
立ち上がったヴィヴィを、壁際に追いつめる。
「初めて君を見たときから~、俺様のハートは~、君だけのものさあ~♪ ハハーン♪」
両腕を壁につき、その間にヴィヴィを閉じ込める。
「俺様の、熱いベーゼを受け取ってくれ……!」
アクティの突き出された唇が近づいてくる。
「きゃ、きゃあああッッッ⁉︎」
「チェストォォォォォォッッッッ‼︎!」
ビリーヴの跳び蹴りが、アクティに微しく決まる。
デッキの上を、アクティの体が飛ぶ。
「ウゲェェェ⁉︎」
倒れた体を素速く起こそうとするが、ビリーヴの投げた網が、頭の上に降ってくる。
「う、うわわわ⁉︎」
もがくアクティを足で押さえ、ビリーヴはシミターを彼に向ける。
「段取りちょっと変わったが……結果オーライだな」
網攻撃は、もう少し進んだ先のドアの影に潜んでいたビリーヴがかます予定だったのだが……
ヴィヴィが砂時計の海賊旗を振る。
「早く降参しないと、死ぬよ?」
ちょっと棒読みに、彼は言ってみせた。




