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Realigi(レアリーギ) ━━世界が誰もに微笑むなら━━  作者: うさぎさん⭐︎


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Realigi 14 第一部 第五章 第三話 「今度こそ、離さない!」

 

 時代はミストたちに味方をした。

 プメシス王国985年10月18日。

 港街フリーダム占拠。

 コーラルリーフ王子の夢の船、《コーラルレッド》が船出して、まもなくのできごとだった。

 

 アメシス王国歴985年11月20日。

 この日━━ついに、奴顔解放平等革命軍━━青の瞳とその友軍たる柴の瞳の者たちは、王都ブレッシングを囲む外壁の外に、陣を構えた。


「神仙様」

 その夜。それまでの余裕を捨て、ヒースはビリーヴを私室に召した。その足元に跪く。

「どうか、神仙様の奇跡で、卑賤なる青の奴隷どもと、それに与する柴の者どもを殲滅せんめつし、この王都を━━わしの繁栄の世を、守護いたしてください……」 

 ビリーヴはしばし口ごもり、こういった。

「できません……。オレには、そんなこと、できない……」

「神仙様」

 顔を上げ、すがるように自分を見上げる王から、ビリーヴは目を逸らす。

「すみません、わからないのです。……三つの奇跡なんて、そんなものが、本当にあるのか。オレが神仙なのか。その奇跡の使い方が。オレに使えるのかも……」

「……神よ……。父なる山におわす神よ……」

 ヒースは指を粗み、今度は神に祈りだした。

「どうか、どうか、わしの世を……」


「ホープは死に、ハープも、その子どもも死んだ。コーラルリーフも……」

 王都の外に陣取る反乱軍を迎撃するため出陣しながら、ポーラスターは囁く。

「海で、死ぬ……。おまえは船旅を楽しみにしていたからな。本望だろう? 大好きな海で死ねるのだから」 

 馬上から顔を上げると、遠く陣取る反乱軍が、視界に現れてくる。

「……なぜだ、なぜ、下賎なる奴隷ごときに、こうも遅れを取る? ここだけは、王都だけは護らねば。でなければ、なんのために━━」

 なんのために。

「王都を死守せよ!」

 声を張り上げる。


 ポーラスターは馬の名手である。

 馬上で弓・槍を、必要に応じ使い分ける。また、余り知られてはいないが、拳法の達人でもあり、アサシンスキルも多少あるらしい。

 砲撃戦はいつしか白兵戦に変わり、ポーラスターたちはじりじりと後退する。

 王都にまで潜んでいた裏切り者が━━きゃつらに与する者どもが、街中でさえ、戦闘を開始し、王都へ通じる別門は破られ、奴隷たちが雪崩れ込んでいる。

 だんだん大きくなる焦燥に顔を歪める。

「なぜだ、神は我らを見捨てたのか? 神は━━きゃつらの味方をしているとでもいうのか……⁉︎」


「もうじき、もうじきですわ」

 馬上で、周囲の革命軍に譲られながら、レアリーギは神々しく笑む。

 フードのついたマントが、砂埃と血の舞う戦渦の中、大きく広がる。

「もうじき━━……」


「はぁ、はぁ、はぁ……」

 獣のような目をし、ほふったしかばねを踏み越え、ミストは王宮アメシスを━━国王打倒を目指す。

 だが、その前に……

「ポーラスター……」

 奴を、この手で殺す……!


 王宮前の広場に防衛陣をしき、ポーラスターはミストを睨む。

 ここだけは、この場所だけは、誰にも譲れない……!


「ポーラスター!」

 歩兵のくせに、ミストはしつこく自分を狙ってくる。

 その大刃の剣は、馬を自分を狙い、鋭く軌跡を描く。

 すでに弓は捨て、ランスで交戦している。 

 友軍の志気が低い。

 戦鼓も、戦歌も、血と悲鳴に霞む。

「凱歌を上げるは、我らなり!」

 ほとんど悲痛な声を上げた直後、ポーラスターの背に、次々と矢が刺さる。

 ミストの副官、弓の名手ウェザーの手柄だ。

- 馬上から落ちたポーラスターを見下ろし、ミストは無慈悲に唇を歪めた。


「……父上……」

 兄も、妹も、弟も、みんな邪魔だった。

 欲しかったのは━━ただ一つ。

 父王の、微笑み……


 大剣が、振り下ろされる━━

 真っ赤な返り血が、ミストを染める━━


「第二王子ポーラスターを討ち取ったぞ!」

「王はどこぞ!」

 王宮へ雪崩れ込み、青の奴隷たちは、王に敵対する紫の民たちは、高揚した声を上げる。


   4


「コーラル!」

 呼ばれた気がして、振り返る。

 潮風が強く吹き抜け、赤髪を揺らす。

「ビリーヴ……」


 城内を闊歩する青軍の靴音や声に、城の者たちは怯え逃げ惑う。

 王宮の背後は、海を臨む岸。 

 街には敵が溢れ、宮殿もこのありさま。

 ━━もう、遅すぎた。


 王宮の地下迷宮と呼ばれる場所がある。非常時に要人の脱出をはかるために造られたその通路を近衛兵たちと走っていた王が、突然、地に膝をつく。

「もう、だめじゃ……」

 迷宮は、長い間使われていない。

 元々追っ手を惑わすため、入り組んだ迷路になった脱出路は、ところどころ崩れ、思うように先に進めない。

「もう、すべてが終わりじゃ……! 紫王しおうたるわしが倒され、長く続いた紫の世が終わる……! 青の者どもは、我ら紫の者たちを支配する! そうに、決まっている……!」

 涙するヒースを見下ろし、ビリーヴは瞳を揺らす。

「どうしたら、どうしたらいいんだ……? どうしたら、こんな世界を変えられるんだ……? 柴王が倒され、青王せいおうの世が始まる……。だけど━━そんなの、間違っている……。世界は変わらない。ただ、支配者が変わるだけ……」

 コーラル。

 オレ、どうしたらいいんだ……?


「いたぞ! 偽王ぎおうヒースだ!」

「我らが真王ミスト誕生のため、その命頂戴する!」

 信頼できる青の同胞と神仙のみを連れ、ミストは迷宮内へ、ヒースの元へ辿り着いた。

 ここにいる皆は、ミストを心より崇拝し、ヒース亡きあとは彼こそが真主となることを望んでいる。

 これまでの戦果で、ミストの人望とカリスマ、彼を真王へという声は高まり、多くの者がそう唱えるようになっている。

 それに彼には、神仙が━━神が味方してる、神仙は神の奇跡を使いし者。其に祝福されているミストは、つまりは神にも祝福されているのだ。

 ここにいる青の皆は、そう考えている。


 レアリーギは、ミストたちから離れた背後の暗がりで、俯く。

 ……これが、自分のしたことの答えだ。

 わたくしが、ミストを変えてしまった。

 ミストはもう、青も紫もない世など、望んでいない。

 良心の呵責から、フードを深く被り、下を向き、せめてそこから目を逸らそうとする。

 彼は、真王となった暁には、青の支配する世を創る。まだ、極限られた者たちにしか知らされていない。

 平等の大義を心よりじている者。

 ただ、己の利益のためのみに共闘し、隙あらばミストを蹴落とそうとする者。

 青を言じる者。

 紫を言じる者。

 ━━いろいろいるが、ミストが王になれば、きっと、彼に逆らう者は制圧されるのだろう。

 ……わたくしが、時代を━━世界を変えた?

 違う。

 わたくしは護ろうとしたのだ……歴史を。

 そう、きっと、わたくしが動かずとも━━こうなる運命だったのだ。


「どうしたら、どうしたらいいんだ……コーラル」

 ミストたちがヒースを発見する直前、ふと触れた壁の仕掛けが作動し、ビリーヴは一人、壁の向こうの隠し通路に放り込まれた。

 スロープを転がった先で、うずくまって震えている。

 ━━暗い。

 灯りを持った者たちは、あの見上げた壁の向こう側だ。

 人々が争う音が、声がする。

 『父上のために、三つの奇跡を使ってさしあげてくれないか?』

『父上を頼む』

「死ね、鶴王ヒース!」

「正義は我らに!」

 悲鳴の間に聞こえる、微慢な声。狂ったような嗤い声━━。

「……だめだ、あいつらには……青の奴らには……世界を任せられない……」

『父上を頼む』


「船を戻せ! 俺は、王宮へ━━アイツの所に、戻る!」

 操舵室で喚くコーラルリーフ。

 若き操舵手シーマイルは、顔をしかめる。

「無理ッスよ、王子! いきなりそんなこと言われても」

「船長! 航海士! 誰でもいい! 俺を、俺を━━ビリーヴの元へ連れていってくれ……!」

「コーラルリーフ様……」

 乳兄弟でもある小姓のセイルが、黒髪を揺らし、困ったように言う。

「わがままを申されまするな……。この船には、たくさんの紫の民が乗っているのですよ」

「わかってる! そんなことは、わかっている‼︎」

 操舵室を飛び出し、コーラルリーフはデッキへ上がる。

「ボートでもなんでもいい! 乗って━━俺は、還るんだ……!」

 アイツは、行くなといった。

 だけど、俺は意固地だから、聞かなかった。

 アイツは、何か言いたそうにしていた。

 だけど、言っていいのか迷っている様子で……

 もっと、ちゃんと、話を聞いていれば。

 ━━意味がない。

 こんな、こんな船。

「何が、夢だ……?」

 こんなに、後悔している。

 意味がない。

 おまえがいなきゃ、

 ちっとも、楽しくなんか……

「王子! 困ります! 無茶です! ……スケジュールが、狂います……」

 デッキのボートに手をやるコーラルリーフを、セイルが止める。

「王子! ……仕方ありませんね、こちらへ」

「セイル?」

 食事時で人気のない、宵の船尾のほうへ連れていかれる。

「なんだ、セイル? 俺は、今……」

「王子は、海がお好きですよね? せめてもの、ご慈悲に……」  

 セイルの拳が、鋭く、コーラルリーフの腹を打つ。

「な……⁉︎」

 腹を押さえ、デッキに崩れる。

「何を……」

「海で、永遠にお眠りください。ポーラスター様の、ご慈悲です」

「あ、兄上が……なぜ……」

 欄干に手をやり、立ち上がろうとする。

 セイルは素速く蹴りを入れ、再びコーラルリーフをデッキに崩す。

「結構、しぶといですよね、王子は」

 俯せに倒れたコーラルリーフの上に乗り、背の剣を引き抜こうとするその手を捻り上げる。取り出したアサシンダガーで彼の頬を二度三度叩く。

「猛毒が塗ってあるんですよ、このダガー。ちょっとした傷口からでも、毒が回れば、致命的ですよ? 第二王子に頂いたんですけどね」

「……なぜだ? なぜ、おまえが……」

「あなたのお母上は、いくら国王の寵愛を受けているといっても、所詮第二王妃でありませんか。そして、第三王子は確かに国王の気に入りかもしれませんが、国王たる器があるとはとても思えませんし? それよりも、正妃の子でもあり、王位継承権も上の第二王子につくのは、道理ではありますまいか?」

「……俺を、裏切ったのか……!」

「あなたの敵は、おれのほかにも、たくさんいますよ? 一見あなたの味方に見えてもね。この船にだって。いますよ。ほかにも、たくさん。裏切り者が。そして、状況次第で、敵にも味方にもなりえる者が。━━華やかな貴族社会、ダンスし芝居を見、笑う……そんな輝きの裏で、この社会は嘘だらけですよ? 虚栄心が強く、自尊心が高く、笑顔の裏であざ笑い、騙し合い、取り入り、隙あらば蹴落とそうとする━━そういうの、わかってます?」

「…………」

「簡単に、人なんかじちゃだめなんですよ! あの、神仙だって━━陰でどう思ってるかわかりゃしない」

「………! やめろッッッ‼︎!」

 屈みがちだったセイルに、頭突きを食らわす。

「がっ⁉︎」

 うまく顎だか顔だかにヒットしたらしく、セイルに隙ができる。その間に膝蹴りを入れ、なんとか相手の体の下から抜け出す。

「アイツの悪口は言うな……!」 

 慌てて立ち上がり、後退する。

「あなたは、何も知らなすぎる。ホープ王子とハープ王女は、とっくに青き瞳の奴らに計たれたのですよ!」

「……な、兄上たちが⁉︎ 嘘だ!」

「王女の子どもも死んだしね。━━ポーラスター様はおれを信頼して、すべて話してくださった。反乱軍は、あなたが思っているほど、弱者ではない! 港街フリーダムだって、いつ、落ちるか……!」

「嘘だ嘘だ! 父上はなんの心配もないと、おっしゃったッッ‼︎」

「そう━━これ以上の心配はいらない。おんたを殺して、おれたちが港に戻るころには、反乱軍は制圧されている、そうポーラスター様はおっしゃられた!」

 セイルは知らない。

 ポーラスターはすでに、この世に亡い。

「バカなあんたは、海に落ちて転落事故死━━。そう、おれがあんたを海へ放り込んでやるよ! 王の後を継ぐのは、ポーラスター様ただ一人! おれは次期国王たるポーラスター様の第一の側近にしてもらえる!」

「━━残念だが、それはない」

 突然躍りかかった黒い影が、セイルの脇腹から胸を、ダガーで斬り上げる。

「ウワァァッッ⁉︎」

「おまえは、手際が悪すぎる。喋りすぎる」

 セイルの首から血が吹き出す。

「うまいこと第三王子を殺れたら、王子殺害の大罪で死刑にしてやったのに。━━手際が悪すぎて見てられない。返って邪魔、目障りだ。ポーラスター様も、なんでよりによってこんな……」

 デッキに足をつけ、ため息つく赤毛の子ども。

 セイルは倒れ、動かない。あまりのことに、コーラルリーフは動けない。

「……な、なんだおまえは⁉︎」

「ボク? まぁいーか。冥土の土産に教えてやるよ」

 彼は上目遣いにコーラルリーフを見、嗤う。

「ボクはポーラスター様の私兵。アサシンのオクト━━……。いい加減人が来る。その前に、死にな!」


   5


 ヒースと近衛兵を袋小路の壁際に追いつめ交戦する同胞たちを見、ミストは息をつく。

「これで、終わる……」

 少し離れた場所で俯いているレアリーギに近づく。

「神仙様、感謝いたします! 俺がここまでこれたのは、あなたのおかげです!」

 レアリーギは、弱々しく笑う。

「いえ……。ミスト、これであなたが真王です」

「は!」

 ミストがレアリーギの前に片膝をつく。

 ミストは顔を上げ、レアリーギの胸に輝く舵型のペンダントに目を留める。

 気づいたレアリーギが、それを外し、ミストに差し出す。

「しかし、これは……」

 ためらい、だが、ミストはそれを受け取る。

 ペンダントとレアリーギを見比べ、ペンダントを握り、彼はレアリーギを見上げる。

「……どうか、これを、我らの━━永遠の信頼の証に……」 

 金のペンダントを掲げ、彼はそういった。

「え、えぇ……」

 少し口ごもってから、彼女は頷く。

 ミストはそんな彼女を、真摯に見つめている━━。


「神仙様。我らの感謝の証として。どうか、三つの願いをお受け取りください。

 一つ、神仙様が、元の時代へ還れるよう。 

 一つ、歴史が変わらぬよう、神仙様が我らが出逢ったあの夜明けの海へ、あの時、おいでくださるよう……」

 ミストは、珍しく首を傾げる。

「これで、よろしいのでしょうか? このような愚考しかできなくて、申し訳ありませぬが……」

 ミストはレアリーギに聞いて、知っていた。彼女が時代を越えてやってきたこと。元の時代へ還りたがっていること。探している、ただ一人の人がいること。歴史を、変えたくないこと。

「ミスト……」

 レアリーギは目を見張る。

「それは、まさか、三つの奇跡……⁉︎」

 気持ちは嬉しいが、自分にはそんなことできな━━

「一つ━━……」

 ミストは、背後を振り返る。

 ヒースを覗いた紫の者は、全滅した。

「待て!」

 立ち上がり、剣に手をかける。

 抜けば玉散る、氷の刃。

「俺が━━、殺る……!」


『オレー人いなくとも、世界は変わらない』

 確かに、オレが何かしても、この世は何も変わらないかもしれない。

 だけど……!

「待て、だめだ……! やめろ━━!」

 スロープを昇り、壁を押し、外へ飛び出す。

「彼を、殺すな━━……!」

 誰も、殺しちゃいけない。

『人は、生まれた時から等しく尊い者』

『どうして、人を助けるのがバカなことだって、おまえは決められる⁉︎』

 ……そうだろう、コーラル……?


 しかし、ビリーヴが飛び出したのと、国王ヒースが斬られたのは、ほぼ同時だった。


「ふ、伏兵⁉︎」

 血塗られた剣を構えたミストが、振り返る。

「━━⁉︎」

 青と紫の瞳を持った、黄緑色の髪の少年━━

「し、神仙……⁉︎」


 世界から、音が消えた。

 一陣の風が吹いて、自分の赤毛やマントを━━いや、心を揺らすよう。

 …………彼が、いる。

 ビリーヴ。


「う、うぅ……」

 ヒースには、まだ、息があった。

 彼は最後の力を振り絞り、ビリーヴへ手を伸ばす。

「神仙よ、わしの最後の願い、今こそ、叶えたまえ……」

 ミストがとどめを刺そうとする。

「だめだ、やめろ!」

 少年の声に剣が止まる。

「だめなんです、国王、オレには、三つの奇跡なんて、あの話の神仙のように、王座や不老不死を与えるなんて、きっとできない! あの神仙がはぐれ者とずっと一緒にいるという奇跡を叶えられなかったように、制約が━━できることとできないことがあるんだ! オレに━━それぞれに、或いはその時々に、できることとできないことが、あるんです……。━━きっと、人を生き返らせることもできやしない。だって、オレは……」

 生死のやりとりができるような、

 そんな大層な奴じゃない。

 自ら死を選んでしまうような━━そんな、そんな奴だから……

「だけど、オレにできることがあるなら、なんでもします! コーラルと、コーラルと約束した━━約束したようなものだから……!」

 あなたを頼むと。

 それから━━

 生きること。


 衝撃から立ち直ったミストたちが、ビリーヴへ剣先を向ける。

「奴は、国王ヒースに与する者! 我らが崇高なる神仙様とは似ても似つかない! ━━魔王ヒースに飼われた魔法使いに違いない!」

 刃物の輝きに、ビリーヴは硬直する。

「おやめなさい!」

 少女の声が響く。

「彼に手を出すことは━━許しませんッッ‼︎」

 ビリーヴは不思議そうに、フードを被った少女を見る。

 ━━その不思議な瞳。……


「レ、レアリ……」

 掠れそうな声がその名を呼ぼうとする。


 ━━コーラル。

 ビリーヴの連呼した名が、ヒースの朦朧もうろうとした頭の中で回る。

 ━━今となっては、コーラルリーフだけが、わしの希望……

 もう、青の世が訪れるのを止められない……?

「おやめなさい! 彼に手を出すことは━━許しませんッッ‼︎」

 少女の声と━━ざわめく青の者どもの声。

「神仙様⁉︎」

 ……神仙……?

 違う、奴こそ、魔王ミストに与する、呪われた魔法使い……!

 上げた目の端、ミストのしている舵型のペンダントが光る。

「決めた! 神仙ビリーヴよ、我の三つの願い、叶えたまえ‼︎」

 皆が、最期の声を張り上げるヒースを顧みる。

「一つ、悪の魔法使いを永遠の海へ閉じ込め、」

 きゃつが、不老不死なら、せめて、永遠なる封印を━━

「一つ、我が息子コーラルリーフを番人とし、」

 せめて、訪れる青の世から、呪われた力持ちし魔法使いだけは排除せねば━━、「一つ、きゃつから魔王の力を失わせよ」

 万が一海から逃れても、

 おまえは、ただびと……!


 ビリーヴの体が金色に光りだす。


「しまった!」

 取り乱したミストが、声を上げる。

「最後の一つ、神仙レアリーギよ、あなたの力が……」

『わたくしは、十五になってこの時代に来てから、力が使えるようになりましたの』 いつか聞いたレアリーギの声が、脳裏に閃く。

「あなたの力が、十五で目覚めるよう……!」


 レアリーギが、金色に光り始める。


「国王……⁉︎」

 喋らなくなったヒースに駆け寄ろうとするビリーヴ。

 同様に光に包まれたレアリーギも駆け出し、手を伸ばす。

「ビリーヴ……! わたくしの手を……!」

 三つの奇跡が━━いや、《《六つの奇跡》》が発動した!

 瞬間そう確信し、彼女は必死に彼に手を伸ばす。

 ━━今度こそ、離さない……!


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