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お気に入り小説4

坊やな婚約者と別れて、素敵な人が婚約者になったのですけれども、何か大きなものを失った気がするわ。

作者: ユミヨシ

「お前のような女、俺の婚約者にふさわしくないっ」


エフェル王子の言葉に周りは凍り付いた。

マリーアンナは、エフェル王子を慌てて宥める。


「いかに、わたくしがふさわしくないとはいえ、これは政略なのですから」


「しかしだな。いかにお前が帝国の皇女とはいえ、私は、自分の好きな相手と結婚したいのだ」


馬鹿なの?馬鹿だと思った。

このエフェル王子は、このイドル王国の第二王子である。


隣国のオルフェルス大帝国の皇女マリーアンナと婚姻し、マリーアンナは公爵位を貰い、エフェル第二王子は婿入りするという婚約を一年前に結んだ。


共に現在16歳。


マリーアンナはイドル王国の王立学園へ留学し、エフェル第二王子と交流を図るとともに、イドル王国の事を一年間留学中に学ぶことになっていた。


留学してまだ一月しか経っていないのに、いきなりエフェル第二王子は皆のいる王立学園の廊下でマリーアンナに対してそう叫んだのだ。


マリーアンナは冷静に、


「ここでは皆の注目の的ですわ。お話はじっくりと聞きますから、場所を移動致しません?」


エフェル第二王子はマリーアンナの言葉をなかったかのように、


「皆に聞いて欲しい。この女は帝国の皇女だからと言って、私を毎週拘束し、茶会という名の交流を図り、プレゼントを強請って、我儘放題なのだ」


マリーアンナは反論する。


「婚約者としての交流を図っているまでですわ。拘束だなんて人聞きの悪い。わたくしは将来の夫である貴方様と婚約者としての交流として、週末、わたくしの滞在している王都の屋敷での二人きりのお茶会。プレゼントだって、高価なものを強請りましたか?わたくしはただ、貴方様に贈り物を差し上げているのですから、婚約者として、わたくしのお誕生日にはお返しをするのが当然かと。わたくしは失礼な事をしておりませんでしょう?」


周りの生徒達も大きく頷いてくれている。


エフェル第二王子は、顔を真っ赤にして、


「私は帝国なんて行きたくないっ。お前なんぞと結婚して窮屈な思いもしたくはない」


「これは我がオルフェルス大帝国とイドル王国との、政略なのですわ。それなのに、貴方様は」


「うるさいうるさいうるさいっ。私は好きに恋愛したいのだ。それなのに、父上はっ」


金の髪に碧い瞳、顔だけは綺麗なエフェル第二王子。

心はとんでもない、まだまだ子供なエフェル第二王子。


この王国での第二王子の教育はどうなっているのかしら……


マリーアンナは、エフェル第二王子に向かって、


「解りましたわ。貴方様の発言は、我が父に報告させて頂きます。それでは失礼致しますわ」


周りから悲鳴が上がった。


大帝国の父、ビルドレッド皇帝。


彼は戦好きで、若い頃は先頭を切って万の軍勢を従えて、他国を次々と滅ぼして、このオルフェルス大帝国は巨大になった。


イドル王国は、他の王国と同盟を結び、対抗し、かろうじて、侵略を免れた経緯がある。

今は平和な時代だ。


皆、戦に疲れ果てて、戦争は嫌だと、平和を楽しんでいるそんな時代である。


今回の事で、まさか戦は起こらないだろうが、ビルドレッド皇帝を怒らせたら、どうなるのか。


マリーアンナだって、父の怖さは解っている。

ただ、父は皇子は二人いれども、マリーアンナが唯一の皇女であるので、とても甘かった。可愛がってくれた。


二人の兄皇子達もマリーアンナには優しい。


そんなマリーアンナが、エフェル第二王子に酷い事を言われたのだ。

あの父が、兄達がどう出るのか。


マリーアンナは、我がまま坊やの御守はごめんだわ。


と、そう思うのであった。



だが、報告しても、事態は変わらず、婚約者はエフェル第二王子のままで、

今更イドル王国との仲をこじらせたくないのだろう。


マリーアンナに対して、皇太子である兄が手紙で、


エフェル第二王子と仲良くやってくれ。


としか書いておらず、マリーアンナは困り果ててしまった。


エフェル第二王子も国王に、マリーアンナと上手くやれと、釘を刺されたらしく。


「何でお前なんぞと上手くやらねばならんのだ。私は国の犠牲になんてなりたくはない」


本当に馬鹿なの?


マリーアンナは呆れた。


「でしたら……」



「愛しい、マリーよ。来てしまったぞ」


「え?」


廊下に立っているその巨体は、帝国にいるはずの父で。


「お父様っ?何故、学園の廊下なんているんです?ここはイドル王国っ。いつの間にっ?」


マリーアンナはガシっと抱き締められて。ほおずりされた。


「お前が心配で、魔族に転移魔法を発動してもらった」


「魔族に転移魔法?????」


ビルドレッド皇帝は、真っ青な顔で座り込むエフェル第二王子に向かって、


「坊主。愛しのマリーを泣かせる男は許せねぇ。ただ、これは政略なんだ。お前の身柄は我が帝国が貰い受けることに決まっている。だが、政略の結婚は嫌なのだろう?だったら、お前、平民になれや。」


エフェル第二王子は青い顔をしながらも、


「私は王族だ。な、何で私が平民に?」


「政略で結婚し、王国の為にならない王族なんていらないだろう。自由に結婚したいのなら、平民になれや。そうしたら、自由に結婚できるぜよ」


「いやだっ。私は誇り高いイドルの……」


「何が誇り高いイドルのだ……王族だったら王族らしく生きろや。根性叩き直してやろう。俺と一緒に来るがいい」


そう言って、ビルドレッド皇帝とともにエフェル第二王子の姿が消えた。


マリーアンナはあっけにとられた。


エフェル第二王子はどこへ連れて行かれてしまったのか。

すると、廊下にイドル王国の王宮の使者が現れて、


「マリーアンナ皇女様。国王陛下がお呼びです」


「今すぐ参りますわ」


イドル王国の宮廷に行けば、国王陛下と王妃が現れて、


国王陛下は頭を下げて、


「本当に、エフェルが失礼な事を。申し訳ない」


「いえ、父がエフェル第二王子殿下を連れて行ってしまったのですが」


「ああ、聞いている。根性を鍛え直してやるとか……エフェルはともかく、改めて、二つ年下になってしまうが、ルイド第三王子はどうだ?皇帝陛下にも、話は通してある」


奥からルイド第三王子殿下が出て来て、


「ルイドと申します。マリーアンナ皇女様。私はまだ14歳ですが、どうか私と婚約を結んでいただけないでしょうか」


「父が承知しているのであれば、わたくしはルイド第三王子殿下と婚約を結びますわ」


国王陛下も王妃もほっとした顔をして、


「それはよかった。失礼のないように息子にはよく言い聞かせてあるので」



改めて、ルイド第三王子殿下と、婚約を結び、交流を始めた。


後から知った事だが、兄達はマリーアンナに政略だから、エフェル第二王子とうまくやれと、手紙に書いた時にはすでに父の姿は見当たらず……心配していたそうな。


ルイド第三王子は幼いながらも、マリーアンナの事をとても気遣ってくれて、


「王都をご案内致しましょう。とても素敵な植物園があるのです。そこには薔薇が沢山咲いているとか。皇女様もお気に召すと思います。他にもいろいろと案内致しますね」


何ていい子なのだろう。

ああ、いい子だなんて言ってはいけないわね。


まだ幼さが残るルイド第三王子殿下。


それでも、彼と共に過ごす時が愛しくて。

だんだんと彼の事が好きになっていくマリーアンナ。


ルイド第三王子も、金の髪に碧い瞳。優しい顔立ちのとても、素敵な王子で。

マリーアンナは父に似て、黒髪できつい顔立ちだけれども、そんなマリーアンナの容姿も、ルイド第三王子は、


「その黒髪がとても素敵ですね。神秘的で。私は好きです」


「そうですの?きつい顔立ちと言われていて、わたくし……」


「意志が強そうでよいではありませんか。私なんて、何だか甘い顔立ちと言われて、侮られてしまうので、とても羨ましいですよ」


日に日に、穏やかな彼の事が愛しさが増してきて。


仲良く交流していて、あっという間に一年が過ぎてしまった。


留学期間が過ぎたので、結婚までしばらく離れ離れになるのだが、ルイド第三王子は、


「来年には今度は私が留学します。帝国に住むからには帝国の事を学ばないと。来年まで待ってくださいますか」


「ええ、お待ちしておりますわ」




帝国に戻れば、兄である皇太子に皇宮に迎え入れられて、


アレス皇太子は、マリーアンナに向かって、


「来年、私が皇帝に即位することになった」


「父上はどうされたのです?」


「いやその……」


凄い、言い淀んでいる様子、そういえば、連れて行かれた元婚約者エフェル第二王子もどうなったのか?


今まで思い出しもしなかったわ。



アレス皇太子は、ため息をつきながら、


「あれから、父上は辺境騎士団へ、エフェル第二王子の襟首掴んでだな」


「辺境騎士団って、どこの国にも属していないあの?」


「そうだ。本業は魔物退治と言っていながら、美男の屑を集めているあの変態連中の所だ」


「それじゃ、エフェル第二王子殿下は……」


「いや、それがな。父上は騎士団長と知り合いだそうで、しばらく自分とエフェルを騎士団員として入団させろと」


「それで???父上は、エフェル第二王子殿下はどうなったのです?」


「戻って来ない……母上も泣いている……」


えええええ???そっち方面に目覚めてしまったの???

辺境騎士団員になってしまったと言う事よね???

美男の屑を愛でてっ……???


アレス皇太子は、更にふかーいため息をついて。


「で、私が来年、皇帝に即位する。父上はもう戻ってはこないそうだ」


とおーい目で遥か彼方を見つめる兄を見て、マリーアンナは思った。


坊やであるエフェル第二王子と別れて、素敵なルイド第三王子と婚約を結べたのは嬉しいけれども、何か大きなものを失ったような気がするのは気のせいよね……


ただ、もう、今は、父の事は考えないようにしよう。エフェルなんてどうでもいいけれども。

愛しのルイド第三王子殿下が早く帝国に来ないかしらと、イルド王国の方角を窓から見やるマリーアンナの心は、晴々としていた。


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― 新着の感想 ―
皇帝パパ……惜 (か) しい人をなくした……
( ̄д ̄)…皇帝陛下…マジ何やってんすか? (´・ω・)つか、皇妃様カワイソス…ひっでぇ、とばっちりじゃないすか。
そっち〜〜〜!??? まぁ皇帝が若い女に溺れて種を蒔かれるくらいなら後顧の憂いもないし、跡取りはもういるから問題がないといえばない…王妃様の心労如何ばかりかと、それだけが心配ですが……。 定年退職して…
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