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狩《始章》

「なぁ今更だけど、なんで生きてたこと隠してたんだよ」


あつとが村から去って1時間、カイトと田舎道を歩きながら話していた。辺りは鳥がさえずり川の音が響き渡る。さっきまであつとは死闘を繰り広げていたのに、まるで無かったかのようにあつとは悠々としていた。


「まぁ、そうだなぁ、言おうとは思っていたんだが...何かと忙しくてな」


カイトは頭を掻きながら、照れくさそうにしていた。っとそんなことよりと、話を置いてカイトはアツトに聞く。


「それよりお前、なんで鼓最怒こもどと戦おうとしていたんだ竜級りゅうきゅうB級あいつはお前には手に負えないだろ、去年の竜級は確かC級じゃなかったか?」


竜級とは爬虫類の強さをクラス分けしているものであり一般にD〜A級までのランクが存在している。


竜級に指定された爬虫類は最低クラスD級でも銃器以上の強さを有しており、A級までいくと超規模の被害をもたらす。また竜級は狩人にも存在し、同じクラスの爬虫類ならば同等以上の戦闘力を持つ。


「あぁ、そんな時期もあったなでも、今は違う今の俺はC級の更に下D級上位って辺りかな。任務サボってたらこうなっちまった、来週までに任務こなせないと次はクビだってよ〜」


あつとはなんか言ってて辛くなってしまったようだ。カイトは呆れてため息一つ付いた。


「お前なぁB級はお前の上の上なんだよ、戦う相手を間違えすぎだ竜級の意味わかるか?」


あつとは誤解を解くように、はたまた言い訳を言うように焦って答えた。


「いや違うって、あのさ竜級の昇級システム分かるよなC級昇級任務年内50匹討伐...これ1週間で終わるか?D級だって20匹だぞ無理だろ」


「じゃあ、つまり...」


カイトは察していたが何も言わず半目でアツトを見る。


「そう、つまり...B級倒して討伐数を短縮するって訳よ」


あつとは人差し指を立て自慢そうに言った。


「へーそうかい、死にそうだった癖に」


「お?嫌味か?喧嘩か?上等だ!」


あつとの怒りを買ったようだ。


「そうだ、お前の竜級はどうなんだよ」


(どうせカイトもB級下っ端なんだろ)


「ん?俺か、A級だけど」


「…は?」


カイトは昔から俺より少し強いくらいだった。そんな実力からA級なんて普通はありえない。あつとは空いた口をゆっくり閉じた。だがそれと同時に疑問を出した。


「じゃあ、なんで棲陽能醒海類清(スピノサウルス)を倒すのに俺が必要なんだ?A級なら一人で倒せるだろ」


あつとは呆れてしまった。


「A級なら倒せるか...お前ほんと知らないのな、本部くらい、ちょくちょく立ち寄れよな」


カイトこそ呆れてため息を漏らす。気を取り直し一呼吸して、真剣に話を始めた。


「棲陽能醒海類清、3年前C級20人B級1人の大規模討伐があった、もちろん俺らも参加していたから分かるな」


「うんうん」


「結果は知っているだろうが敗退してB級1人C級8人の死亡で終わった、そのことから棲陽能醒海類清はA級下位またはB級上位と言われていたが周囲の被害からA級上位に挙げられた」


「じゃあA級ならA級のお前で倒せるじゃんか」


あつとはどういうことかとただカイトでも対策可能という話を聞いただけだった。


「いいか、お前の知らないとこはここからだ」


がやはり最後まで聞けないあつとにため息を付き話を続ける。


「これは半年前までのデータ、その半年間に起きた被害がどうにもA級最強クラスの枠に入っているそうだ...そして一ヶ月前に竜級が更新された」


「そうか、A級1位か!なら流石に」


「いや...S級だ」


「S...級」


一般にD〜Aまでの階級があるしかし時にはそれでも足りない強さをもつ時があるそれが特別枠S級。


「あれは都市伝説じゃねーのか?S級ならよく俺ら生きて帰れたな」


「あぁ、きっと俺らの時は能力を使わなかったんだろう」


S級にあつとはもちろん驚くがそんな者に挑むカイトの精神にも驚いていた。


「そこで俺とあつとで一緒に倒そうって話なんだ」


「いや、無理無理A級同士の会話じゃねーんだぞ、俺D級!!」


次元の違いにあつとは後ずさりをした。


「いいか、これはA級からしか言われないんだが」


カイトの言葉より先にあつとは固唾を呑みこんだ。


「S級は最低でも7匹は存在する」


「そんな、地球にそんなバケモノがいんだったら気づくだろ普通」


あつとは冗談かと思うくらい疑った。


「確かに被害が目立たないが......それは分からない」


「A級も忙しいんだ、それにA級の目標はあくまでA級の討伐、乗るやつもいないだろう」


「そこでお前だあつと」


カイトは指を指し指名する。


「お前のホースは能力を3つ持つ特別な武器だ2つなら聞くが3つはそうない、それを扱えるあつとだから頼んだ」


あつとはそれだけでD級を選べるかと思ったが何も言わず話を聞いた。


棲陽能(スピノ)は火力ならたしかにS級...しかし硬さに関してはB級とさほど変わらない、最初にC級なんか送り込んだのもそれが理由だし」


「けどよぉ、そいつの強いところは結局のところ能力なんだろその能力は分かんのか、能力開示が一切報道されていなかったけど」


カイトは待ってましたと言いたいのかあつとの言葉に自信を持って返す。


「それは大丈夫さ、なんてったって棲陽能に俺は接近と逃亡を繰り返していたからな」


あつと冗談かよとその根性に肝を引いた。


「それがA級になるほどの成長をくれた...で能力だよな」


そう、それが聞きたかったとあつとは目を見開き耳を立てる。


「熱だ」


「熱?それってどんな感じの?」


「皮膚に熱を持たせる能力さ、触れると肌は溶けるくらいには熱いだろうな」


それを聞いた時あつとは半目でくだらないと呟いて言う。


「そんなんでS級が務まんのかよ」


「それもそう何だが、熱量は未知数なのとやはり周囲の焼け跡から確実にS級クラスではある、が距離を置けばそんなこともない」


「じゃあ一人で行けるじゃんか」


あつとは半目で怒鳴るがカイトは話を続ける。


「皮膚まではな、しかし筋が入らねぇ、そこでお前のホースだ」


「筋を切るってか」


「そう、加速の能力で打ち付ければかなりのダメージが入るかもしれん、これで勝つんだよ」


カイトの単純な考え方にため息をついてしまう。


「これなら別にもっと強いA級一人頼むほうが得策だ、忙しい?S級を倒せるなら来るんじゃね」


「.........そうじゃないんだ」


カイトは黙り込んだ。


「じゃあなんだよ」


あつとは軽く、黙り込むカイトに聞く。カイトは物静かに口を開く。


「みんなの仇を取りたいんだ、あの時のメンバーで」


そうカイトも無理な考え方と分かっていたがカイトは仇討ちのため当時の人間と戦いたかったのだ。


だからこそ本部に能力のことを教えず棲陽能討伐の支援も受けずに一人で仲間を探していた。


「お願いだ、たしかに無茶な話だがこれが俺の戦う意味なんだ」


あつとも少し間を開けてしまった。恐怖の向かう勇気はない、があの時の殺された人を思うとキッパリ断ることもできなくなっていた。しかし。


「しゃーねーな、やってやるよ!!それにS級なら一瞬でA級に飛び級するかもだしな」


あつとは勇気を持っていた。持ってほしいのだ。なにせ主人公だから。


「んじゃ棲陽能のとこに向かおーぜ、どこなんだ」


「あぁ、もう着くぞ」


あつとは急な到着にかなり驚いた。それもそのはず、数分話したらもう到着だからだ。


「早くねーか」


「鼓最怒大蜥蜴のいた村から近かったからお前を助けれたんだよ」




到着したのは大岩が林の如く広がる大地。草は小さな雑草が少し生えたくらい、いわば茶色の風景が強く広がる大地。奥には森が続いている、きっと何かの跡地だったのだろう。


「ここに棲陽能が出るのか」


「あぁ、出る、長い間戦ってきた俺なら大型の目撃情報だけで分かる」


カイトは自慢げに言い放った。


その時。後ろからドスッ!っと大きな足音がした。


「きたな!棲陽能...」


カイトが振り返って見たのは棲陽能醒海類清...ではなかった。


「おい...どこが棲陽能醒海類清なんだよ、ここに出るとか言ったやつ出てこい」


それはカイトである。


「で、こいつは何だよ」


あつとはカイトに声をかけた。その時のカイトはまるで魂でも抜かれたようなとても青ざめた顔をしていた。


「こ...こいつは楕瑠牡醒海類清(タルボサウルス)S級3位」


竜級3位楕瑠牡醒海類清 歴史上狩人で傷を付けたものはいない。全長13m体重6トンその姿はまさに破壊の権化、そして戦いの王。今の二人では勝つことは不可能。


知能の微塵もない雄叫びが響く。それは知性を必要としない力で生き抜いた者の計り知れない絶望の雄叫びだった。


「まずい。あつと逃げるぞ...こいつは俺ら二人じゃ太刀打ちできない」


二人は動き出した、逃げる形で...しかし。


「体が動かないッ!」


「クソッ!俺もだ、たしか記録では生物の動きを奪う能力クソ、強すぎんだろ」


絶望を覚えた、これほどの恐怖を知っているのだろうか人はこれを乗り越えられるのだろうか。


「だが記録には近づこうとすると動けるようになったと書いてあったな...なるほど」


来る者拒まず、それは深淵に落ちるかのような、落下は登ることはできずとも落ちることはできる、そんなような。


「あつと...俺は隙を作るだからお前は逃げろ」


「そんなこと...!」


「お前だけでも...!お前だけでも逃げてくれ...別に逃げ帰ったんじゃない...撤退だ、だからお前は負けていないし棲陽能醒海類清もこいつも倒すんだ」


カイトは必死に叫んだ、それしかできないのだから。


「俺の代わりにみんなを、世界を救ってくれ」


でもこの言葉だけは紛れもなく恐怖に打ち勝った勇気が生んだ言葉だった。


そしてカイトは飛んだ、触れたものを錆びつかせるコインを放つ。


問題ない、鼓最怒大蜥蜴を倒し、棲陽能醒海類清の皮膚を削る強さだ問題ない。


・・・・・


「...ッ」


あつとは手で目を遮った、なぜならカイトが飛び出した時そこから爆発が起こったからだ。


「今のは...!!」


目の前にはカイトの血まみれになった胴体があった。息はない、あるのは恐怖だけだった。


不死身の如く楕瑠牡醒海類清は無傷で君臨している。


怒号が聞こえる。これはまるで次はお前だと言っているのかとあつとは感じた。


恐怖に怯えていたがカイトの死を確信した瞬間あつとは覚悟した。


「俺はお前をぶっ殺す、今は勝てない、けど!!必ず勝つ、全ての爬虫類もぶっ殺す」


その時まで体を締め上げていた束縛はもう無かった。恐怖こそが体を重くする、楕瑠牡醒海類清はまるで恐怖を操る化け物だ。しかしあつとにもう恐怖はない。そしてあつとは槍を構える。その槍はホース、その能力のうちの1つ加速は時速300kmまで持ち主を速くすることができる。縦横無尽に駆け回るあつと。


楕瑠牡醒海類清の背後、脊髄を上からホースで一瞬の動作で刺した。しかし傷はつかない。自分の情けなさにあつとは少し涙が出る。


「勝ち目...ないなぁ...逃げるか」


そしてあつとは撤退する。数秒にして楕瑠牡醒海類清は景色から見えなくなった。


脅威は消えた、とりあえず。安心さこれで...そう安心なんだ、しかしあつとの涙は止まらなかった。


「カイト...ごめっ...」


カイトは死んだしかしあつとが意思を継ぐ。


「カイト、俺ずっと強くなって、ぜってー爬虫類を終わらせるから」




始まる ここから ここまでが あつとが戦う道を見つける物語である。


そして 爬虫類を終わらせる物語である。

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