2.タラン伯爵令嬢の恋の行方
タラン伯爵令嬢は伏せ目がちに話し始めた。
「ご存知かもしれませんが、私の婚約者は伯爵家嫡男のハリー・チェダー様です。彼は、騎士団長の息子ということもあり、趣味鍛錬という変わり者なんですが・・・」
一度口を開けばスルスルと相談内容が口をついて出てくる。
彼女曰く、最近婚約者に付き纏う女生徒が現れた。
彼は訓練や武術にしか興味がないため、そのうち女生徒も反応しない彼に飽きるだろうと思い放置していた。
ところが、予想に反し最近夕刻頃に、よくその女生徒と彼が一緒にいるところを見かけるようになった。
婚約者に女生徒の事を聞くも、友達だよとしか言わない。
彼は、訓練が俺の友達だと豪語して止まない性格のため、幼少期から現在まで友達は3人だけ。
エリック皇太子殿下、宰相の息子 ルック・ナッツ公爵子息とアルフォンス・モンブラン子爵令息。
女性とすら滅多に会話しない彼に、女友達だと言われても到底信じられるものではなかった。
「それで?」
「私・・・ハリー様をお慕いしております。その女生徒が心の底からハリー様を慕っており、またハリー様もその女生徒が好きでしたら、私は潔く私が身を引く所存です」
なんて生ぬるいのだろう。
私は思わず両手で机をバシンと叩き立ち上がってしまった。
勢いよく叩いたため手がヒリヒリして痛い。
だけれど、気合でポーカーフェイスを装う。
「貴女、そんな生ぬるい相談をこの私に態々しにきたのかしら?」
「えっ??」
「私に態々相談する内容かしら、そのへんにいるお友達にでもその意気地なしな考えを吹聴すればいいじゃいかしら。そして、悲劇のヒロインぶればいいんじゃなくて」
「・・・」
思わず溜息がでる。
「だ・か・ら、ポッと出の輩に好きな人掻っ攫われてしまって悔しくないのと言ってるのよ!貴女の婚約者への思いは、ペラペラの紙みたい気持ちなのかしら?」
「ち・・・ちがい・・・ます」
「どうちがうのかしら?」
「・・・ちゃんと厚紙並みの気持ちです」
「だったらヤルべき事は一つよ」
「ヤルことですか?」
「そうよ!私は、合法的手段しか取らないタイプだから、手は貸して挙げれないわ。ですが、裁判時には我が家の敏腕弁護士を貸出してあげます、心置きなく殺ってらっしゃい」
タラン伯爵令嬢は、必死に首を横にふる。
「私にはそんな恐ろしいことは出来ません!!」
「・・・いやね~半分冗談よ。冗談!それはさておき、レディたる者とか、貞淑さとか全部脇に置いて考えてみた時、貴女は結局どうしたいのかしら?」
「・・・ハリー様を取られたくありません・・・」
相槌をうちつつ、続きを促す。
「思えば、ハリー様に一度も私の気持ちをお伝えした事はございませんでした。一緒にいればいつか私の気持ちに気が付いてくださると思っておりました。ですが、脳筋のハリー様には、察するなんて難易度高めな事できるはずもないですね。私が馬鹿でございました。単細胞には、直球でしか伝わらないですもの」
「・・・結構ディスるわね」
「えぇっ?!私褒めております。彼はとても、純粋無垢なんです。お茶会をしても、話す内容は筋トレ話と武器について。我が家は、武具を取り扱う商売をしているため、私を口実に、新作見るためにせっせと我が家に遊びにきているようなものですよ。あの少年のようなキラキラした目が可愛くて、単純でよいのです。私が少し胸元深めのドレスを着てると、すぐ真っ赤になり視線が泳ぐのも、見ていて面白いですし・・・やはり私は彼の事を手放したくありません!」
その後は、タラン伯爵令嬢はチェダー伯爵子息への惚気話を2時間ほど話し続けた。
流石にもういいわよね・・・。
タラン伯爵令嬢が一呼吸おいた隙を見計らう。
「彼は、貴女にこんなに愛されていて幸せね」
「いえいえ、そんな・・・」
顔を赤らめつつもまた、話し込もうとするタラン伯爵令嬢。
もう惚気話は勘弁してほしいわ!
わざとらしく時計をみる。
「あら、あと5分で下校時刻になりますわ」
「こんなに長い時間、ご相談に乗っていただきありがとうございました。丁度新作武具が手に入ったのでそれを話題に、今週末彼を呼び出しいたします。そして、私の気持ちを正直にお話してみます」
タラン伯爵令嬢はお礼を述べると、生気が宿った目をして足早に部屋を去っていった。
―――
数日後、学園内をブラブラ散歩していると、偶然タラン伯爵令嬢とチェダー伯爵子息が、仲睦まじく手をつなぎながら歩いている所に出くわした。
「タラン様、チェダー様ご機嫌よう」
「「ルマン様、ご機嫌よう」」
「ルマン様、その節はお世話になりました。お陰様で今幸せ一杯です。ほら、チェダー様!ルマン様が私達のキューピットですの。お礼を言ってくださいませ」
チェダー伯爵子息は、顔を真っ赤にさせながら、ポツリとお礼を述べ頭を下げた。
その拍子に、何か金属がキラリと光った。
光の元を辿ると、チェダー伯爵子息の首にチョーカーがつけられていた。
そのチョーカーの中心部に輪っかのような飾りがついる。恐らくそれが太陽に照らされて光が反射したようだった。
この国では、男性でチョーカーを付けるものはいない―。
そのまま視線を、タラン伯爵令嬢にスライドさせると、タラン伯爵令嬢はにこりと笑った。
―愛の形は十人十色ね。
「末永くお幸せに」
二人に伝え、ロザリアはその場をさった。




