社畜さん、RPGします。
皆さんは悪役に憧れたことはあるだろうか?
例えば欲望のままに自分の命が続く限り破壊の限りを尽くしてみたかったり、
例えば自分の快楽のためだけに殺戮をしてみたり。
私もそんな悪役に憧れるうちの一人である。
とはいってもその憧れはあくまで願いであって、ちっぽけな私のメンタルでは行動に移すことはできない。仕事での失敗の責任を八割部下(自分)に押し付けて怒鳴り散らかすクs、こほん。人ができていない上司を顔の原型がとどまらないほどぐちゃぐちゃにしてやったり、
最近知ってしまったみんなが血反吐はいて泣きながら残業している中、動画投稿サイトでグラビアの動画を視聴しているゴm、うぉっほん。ルールが守れない上司のすべてを壊してやることしか妄想することができず、普段は一般人としてストレスを理性で押さえつけて社会に擬態して平凡に過ごすことしかできなかった。
そう、できなかったのだ。
それは今週の月曜日の会社での出来事だった。
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「ほえ~ついにmantendoから新作ゲームか」
会社での昼休憩、最新型のスマホのディスプレイを眺めながら私はそうつぶやいた。
私が眺めていたサイトは、「色々なゲームの最新情報を世界最速でお届けする」が売り文句のニュースサイトだ。
実は私は意外と趣味でゲームを嗜んでいて、fpsからほのぼのシミュレーションゲーム、さらには格闘ホラー恋愛ゲームというカレーにいちごとバニラアイスをトッピングしたような、なんとも言えないというか形容しがたいしがたいジャンルまで、たくさんのゲームを遊んだことがある。
ゲームを嗜んでいる理由だが、とてもいいストレス発散になるからだ。主に上司への。上司への。
だから、面白そうなゲームの情報をいち早く手に入れるために大手企業の最新ゲーム情報だったり、インディーゲームなどの情報は欠かさずチェックしているのだ。なので今日も今日とてサイトのホーム画面を眺めていたら、サイトのど真ん中にデカデカと「【ついに!?】Mantendoから新作ゲーム!」というタイトルとともにその記事へのリンクが張ってあるのを見つけたのだ。
Mantendoというのは毎年発表されている世界ゲーム会社ランキングのトップ10に必ずランクインするほどのゲーム会社だ。Mantendoが作り出したゲームを世へ出すと、そのゲームの莫大な開発費用の何倍もの収益を叩き出すほどヒットすると言われてるほどMantendoのゲームはクオリティが高い。
また、ステージ上に制限時間内で自チームのインクで塗りまくり、どちらのチームのほうがインクをたくさん濡れたかできそうゲームや、相手を殴ったり蹴ったりしてステージの場外にふっとばすゲームなど、これまでのゲームになかったような斬新なゲームシステムもMantendo魅力の一つだ。
今回のゲームはAIに設定とかを入れると一つの世界を作り出すことができて、その世界の中で一人の住人として過ごすことができるそうだ。このゲーム、魔法を使って空を飛んだり、ビルよりでかいような魔物を一人で討伐したり、山の奥でこの世界にしかないような見たことない植物を独学で育てたり、本当にできることの幅が広くて、アンチが頑張ってできないことを探すほどらしい。
そんなゲームシステムの中で私が目を見張ったものが「死んだらリスポーンができない」というものだ。
今までのゲームで子供から大人までのすべてのプレイヤーがゲームで神だったり悪魔だったりに勝つ算段がなくても喧嘩を売ることができたのは、自分が死んでしまったとしても生き返ることができたからだ。死んでも生き返ることができるのであれば悪魔にだって身を売るし、神にだって喧嘩を売ることができる。これは従来のゲームの当たり前のようなことであり、よく言えば、リアルではできないようなことが誰でもできて、悪く言えば、ゲームの臨場感が少し足りなかった。
だが今回のゲームはその当たり前をはじめから否定してきた。それ即ち、死ぬとその世界での一プレイヤーとしての人生はそこで終了し、この先一生プレイヤーとしてその世界に干渉することはできないということだ。このシステムのおかげで、強敵と命をかけた殺し合いをしたり、子供をたくさん産んで幸せな家庭でたくさんの家族に囲まれながら寿命を終えたりとこれまでのゲームになかった世界の住人としての「臨場感」が味わえるという。
しかし悲しきかな、この情報を仕入れたのは今週の月曜日で、平日の深夜から夜ふかししてゲームをしようというものなら、寝不足で仕事に手がつかず、ストレスのもととなっている上司に叱られ、ストレスが溜まり寝不足で...と悪循環にハマってしまいゲームを楽しむどころではなくなってしまう。
なのでこのゲームをプレイするのは休日になる。なので休日に万全なコンディションでゲームを楽しむために早寝は必須。ということで私はこれまでにないペースで自分の仕事を終わらせ、今までは残業が当たり前の仕事ペースだったのに、今週は定時には帰れるほどになっていた。
評価してくれるととても嬉しく思います