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騎士令嬢エリーレアの冒険  作者: シルバーブルーメ
18/30

第18話 関所で悪いやつを捕まえる



 山賊は()()()しましたが、もっともおそろしい弓つかいがまだ残っています。

 あの弓矢にねらわれたら、テランスですら一撃で体をつらぬかれ、死んでしまうでしょう。


 みんな、うしろに気をつけながら先を急ぎました。


 空はさらに暗くなって、とうとう、雨のつぶがぽつりぽつりと落ちてきました。


 すぐに強い、ざああっと音を立てる(ほん)ぶりとなりました。


 エリーレアもテランスも、女の子たちもみんな、頭から布をかぶって雨をふせぎます。


「みんな、足をすべらせないように気をつけて! でも足元ばっかり見ていて、前のひとを見失わないように!」


 雨の中を進み続けましたが、空はさらに暗くなり、あたりがよく見えなくなってきました。

 天気が悪いだけではなく、日がしずみかけてもいるのです。


 夜になる前に関所(せきしょ)につかなければたいへんです。


 誰も、なにも口をきかず、ひたすら足を動かし続けるうちに――。


 けしきが、ひらけました。


 まわりから木がなくなって、雨の中ではありますが、先のほうが見えるようになりました。


 切りかぶがたくさんあります。木がなくなったのではありません、切りたおされていたのです。


「あそこが関所(せきしょ)だ」


 そこを通らないと先へは進めない、岩山と岩山のあいだに、()()()のようなものが作られていました。


 こっそり近づいてきて、かってに隣の領へ入るものが出ないように、木を切りたおして、関所(せきしょ)のまわりがよく見えるようにしてあるのでした。


 高いところにみはり台がふたつあって、こちら側と、向こう側のタランドン領、それぞれの騎士がそこに立って、近づく者をみはっています。


「悪いことをするつもりではないのです、()()()()と近づきましょう」


 エリーレアは言い、そのとおりにみんな一列になって関所(せきしょ)に近づいてゆきました。


「止まれ!」


 門番(もんばん)から、きびしい声がかけられました。


 雨の中からあらわれた、犬と女の子を連れた一団です。あやしまれるのは仕方のないことでした。


「私たちは、アルーラン領から来た者です。タランドン領へ入ろうとしていたのですが、先ほど、山賊たちにつかまっていた女の子を助けました。みなさまがたに守っていただきたいと思いまして」


 先頭のレントが門番に言いました。


「むう」


 門番は、なぜか、とても困った顔をしました。


 いちおうは貴族なのですが服装と見た目がそれっぽくない小柄(こがら)なレントと、隣にいる元気な女の子を見比べて、そわそわと後ろを気にします。後ろとはつまりタランドン領がわの騎士たちです。


「話がちがうぞ」


 声をひそめてそう言ってきました。


「約束の日は、今日じゃないだろう。いきなり来られても、あちら側に、あいつがいないんだ」


 何の話だろう、とレントは思いましたが――このおくびょうで、それでいてよく頭のまわる人物は、とっさに相手と似たような顔をして、こちらも困ったかんじで言いました。


「いや、それが、こっちもちょっと、いやかなりまずいことになってな」


「まずいこと、だと?」


「まだ話が来てないのか。いつものやつじゃなく俺が来たのも、わけがあってのことだ」


「まさか、ばれたのか? 俺たちがこっそり女の子をタランドン領へ売ってるってこと……!?」


「!」


 レントは相手に飛びかかって、()()を突かれた相手を倒し、のしかかって、腕を背中におさえつけました。


「何をする!」


 もうひとりの門番があわてたところに、黒い犬がはげしくほえました。


 騎士たちがなにごとかと剣や槍をかまえて向かってきます。


「エリーレアさま! テランスさま! お気をつけを! この者も、山賊どもの一味です!」


「なんですって!?」


 エリーレアは急いで前に出ました。


 雨のせいで、後ろの方にいたエリーレアやテランスがよく見えていなかったようで、門番や騎士たちはおどろきました。


「何者だ!?」


()()()()もなくいきなり失礼いたします。アルーラン領、領主パトリスが娘、第四位貴族、エリーレア・センダル・ファウ・アルーランです」


 なのりを聞いた騎士たちは、かみなりに打たれたようになって、雨の中に膝をついて礼をしました。


「カンプエール領が騎士、テランス・ペンタル・サン・コロンブである」


 続いて現れた、大きくてりっぱな騎士のテランスを見てはもう、うたがうどころではありません。


「レント、どういうことか、せつめいなさい」


「はい。この者は、私とこの子を見て、約束がちがう、予定の日じゃない、いきなり来られても向こう側にあいつがいないと言い出しました。もしかしてと思って、山賊の仲間のふりをしてみせると、女の子をこっそりタランドン領へ売っていると()()()ました!」


「何ですって!?」


 関所(せきしょ)はおおさわぎになりました。


 タランドン側にも話は伝えられ、そちらの騎士たちはものすごく怒りました。


「我々の仲間が、そのような悪いことをしていたとは! 許せん!」


「必ずつかまえて、()()を与えてやるぞ!」


 とりあえず、連れてきた八人の女の子たちは、雨のあたらない建物の中に入れてもらえました。


 エリーレアは関所(せきしょ)のひとたちに、あらためて事情をせつめいします。


「ああ、なんということだ。われわれの仲間が、このような悪いことに手をかしていたとは、ひどい恥だ。しかもアルーラン領のお嬢さまに助けられるとは。お嬢さま、この御恩(ごおん)をどのようにお返しすればいいのかわかりません」


「わたくしへの礼などいりません。それよりも、あの子たちをみんな無事に家に帰してあげてくださいね」


「はっ、それは、かならず! 我らの、騎士のほこりにかけて!」




 崖の下でおそわれていた人たちも、日が暮れる前にこの関所(せきしょ)にたどりつきました。


 エリーレアたちがどれほどかつやくし、助けてくれたのかを伝えてくれたので、関所(せきしょ)の騎士たちの()()()はさらにうやうやしいものになりました。


 夜を、関所(せきしょ)の中で過ごします。


「おねえさまと、ここでお別れなのですか!?」


 女の子たちがしがみついてきました。


「あなたたちには、帰るべき家が、あなたたちを待っている家族がいるのですよ。無事な姿を見せてあげてください」


 言ってからエリーレアは、これまで考えないようにしていた、父のアルーラン侯爵さまが()()()で討たれてしまったということを思い出して、涙がにじんできました。


 悲しむエリーレアに、女の子たちもいっしょになって泣き出しました。


「なかないで、おねえさま」


「ごめんなさい。でもわたくしには、この命をかけて守らなければならない、大切な(かた)がいるのです。何としても、その(かた)のところへ駆けつけなければならないのです……」


 悲しい夜をすごしつつ、決意もあらたにしてから、エリーレアは朝を迎えました。


 雨はあがり、これから下りてゆくタランドン領が、とてもうつくしい緑にきらきらと輝いて広がっていました。


「タランドンの領主さまがおられるお城まで、ごあんないします」


 騎士がひとりついてくれます。


 女の子たちとの別れをすませ、エリーレアたちは出発のしたくをととのえました。


 エリーレアは、山賊のとりででまとった布ではなく、男ものですが、しっかりした上着をゆずりうけて身につけています。


 さあ行こう……と思った時でした。


「ワンッ!?」


 ここまでいっしょに来てくれていた黒い犬が、とつぜん後ろの方を向いたかと思うと、駆けだして、関所(せきしょ)を飛び出し、いなくなってしまいました。


 ぼろぼろさんが、あわてたようにゆらゆらしています。


「これは……」


「エリーレアさま、犬というものは、ひとの耳にはきこえない音もききとることができて、そういう音を鳴らすもので犬をあやつることができるといいます」


 レントに言われて、おもいあたって、ぞっとしました。


「まさか、あの犬つかいが……?」


「この山について、弓つかいやあの女と合流して、自分の犬を呼びよせたと考えるべきではないでしょうか」


 エリーレアはいそいで、関所(せきしょ)の騎士たちにそのことを伝えました。


「わかりました。この女の子たちは、すぐにここからおろすのはやめておきましょう。女の子を売り買いしていた悪いやつらについてしらべ、捕まえるための者たちをふもとからたくさん呼びますので、その者たちといっしょに山を下らせて、それぞれの家へ帰すことにいたします」


「ほんとうにあぶない者たちなのです。無理はなさらず、できるだけ命をだいじにしてください」


「はい、タランドン領の騎士の名にかけて、おまかせを」


 心配ではありましたが、これ以上どうすることもできません。


 カルナリア姫さまのもとに向かうためにも、エリーレアは騎士たちを信じて、先へゆくことにしました。


 おねえさま、と呼びかけて手をふってくれる女の子たちに、手をふり返しながら、エリーレアは山道をくだってゆきました。


「……それにしても」


 この土地の騎士さまが道あんないをしてくれるので、先頭に立つ()()()()のなくなったレントが、エリーレアに近づいてきて、こっそり言ってきます。


「あのくらいの年の女の子を、こっそりさらって、売り飛ばしているやつがいたということは……タランドン領のなかに、女の子を買うやつがいるということになりますね……」


「何が言いたいのです」


「あの騎士さまたちをうたがうわけではありません。ですが、タランドン領の中に、まちがいなく()()()()やつらがいるということです。反乱軍とつながっているという話もあります。ぜったいに()()()してはなりません」


「ええ、姫さまのもとにゆき、場合によっては、アルーラン領へお連れすることも考えなければ……」


 エリーレアもレントも、カルナリア姫さまが心配で心配でなりませんでした。



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