7.ヘタレな王子
「お力を貸していただきたい!!!」
「えぇ...」
今日はフィリップさんと一緒に離宮の庭園へ行って陛下と元宰相のヘンリーさんのお手伝い、昨日は孤児院と病院に慰問訪問、毎日充実した毎日を過ごしていた。
たった一つの懸念点を除いて...。
それは目の前で頭をテーブルに「ガン!!」と音が出るほど打ち付けて頭を下げているカスパール第一王子殿下とその婚約者、エレオノーラに関することだった。
二人は前回の騒動ですれ違ったまま、一カ月近くが経とうとしていた。
「もう、みさと様に頼るしか道が無いと思い、この通りお願いに参った次第です...」
口調も態度もいつも以上に丁寧で、そして必死さが凄い。
「え~っと...エレオノーラの事ですか?」
「はい、流石ですね」
それ以外になさそうだし...。
「殿下、みさと嬢が困惑しています。とりあえず頭をテーブルから離して会話しましょう」
殿下の隣であきれ顔のフィリップさんが殿下に進言する。
「ああ、そうだな。いくらお願い事をすると言ってもこれではな」
顔をあげたカスパール殿下の額に赤い痕が残っているのを出来るだけ見ないようにして私は...
「エレオノーラ、呼んできましょうか?」
今日は魔術院の後は自宅で書類仕事だと聞いている。
この離宮からであればアルマに頼めばすぐ呼べるだろう。
「い、いや!待ってくれ!まずはみさと様と作戦に関して相談したい」
「作戦...?」
「......はぁ...」
フィリップさんが気だるそうに綺麗な所作で紅茶を飲んでる。
滅茶苦茶面倒なのを隠そうともしていない。
「え~っと...エレオノーラとの仲直りでいいんですよね?」
「ああ、その通りだ。どうすれば彼女に許してもらえるか...意見を頂きたい」
それこそ呼び出してテーブルに頭を打ち付けて謝れば許してくれそう...さっきみたいに。
「普通に...誠心誠意謝れば許してくれると思いますが...それより、エレオノーラの誤解を解く方が厄介では?」
「みさと嬢も私と同じ意見で安心しました」
フィリップさんがそう言うとカスパール殿下が...
「だ、だがな...こう、イメージがな...」
「えぇ...」
こんな変にカッコつけるイメージは無かったけど...もしかして謝れないのは自分のイメージを守りたいから?そんな器がちいs...
「みさと嬢。このまま殿下に説明を任せるといつまでも進まないので私からご説明します」
遂にしびれを切らしたフィリップさんが仕切り始める。
♦
「つまり、幼い頃にエレオノーラの好みのタイプはカッコいい王子様だと聞いてから、より一層王子としての責務に真摯に向き合い、今まで頑張ってきた。
だけどそれをずっと続けていた為、エレオノーラにカッコ悪い王子の姿を見せてしまうと心が離れるかもしれないと考えが至った。
そして今回、エレオノーラに自分は愛されていない、家柄と魔術師としての才能だけで婚約を結んだと勘違いされて、それがショックで言葉選びを間違ってしまった。
ソフィアの起こした事件での後始末でろくに時間が取れず、ここまで時間が開いてしまってどうやったら誤解を完璧に解けるか、カッコいい王子としてのイメージを壊さずに居られるか分からなくなってしまった。
ぶっちゃけエレオノーラを前にすると気持ちが浮ついてしまい上手く言葉を交わせない。
どうすればよいか?でよろしいですか?」
「ああ、その通りだ」
「無理です。普通に謝って、愛してるって抱きしめてあげてください。これで解決です」
カスパール殿下は目と口を見開いて固まってしまった。
イケメンはあほ面すらかっこいいから得だな~とかちょっと思ってしまった。
「ごらんのとおりです殿下、エレオノーラ嬢を良く知る、みさと嬢でさえこの回答なのです。いいから早く誓約魔法でもなんでも掛けて謝ってきてください。
嘘を付けない状態で思ったことを口にしてしまえばいいんです。
今更婚約者が代わったら色々面倒です」
殿下の隣で書類仕事を始めてしまったフィリップさんが書類から目を放さずにそう言い放つ。
「ま、ま、待ってくれ!素直に謝るという点はこの際もう納得している。しかし誓約魔法に頼らねば気持ちも伝えられない王子など...」
「薬物はダメですがこの際お酒でも良いですよ。もうなんでもいいです」
「...もしかして...カスパール殿下って...ヘタレですか?」
もう口が止まらなかった...。だってどう見てもヘタレでしょこれは...。
「......誠に申し訳ない...」
ヘタレだった。
「確認したいんですけど...殿下ってエレオノーラの事...」
「......愛している...将来妻にするのは彼女一人だと決めている」
それをちゃんと伝えてあげればいいのでは?
「それをちゃんと伝えてあげればいいのでは?」
もう思ったことが口から漏れ出る漏れ出る...。
フィリップさんの呆れた態度に今理解が追いついた。
「殿下は普段次期王として満点の評価ですが、エレオノーラ嬢が関わると途端にダメなのです。
本人は惚れた弱みなどと仰っていますが、ただのヘタレです。
気持ちを伝えるのが下手と言うか...必要のない照れと言うか...ヘタレなのです」
ヘタレだった。
「ま、待ってくれ!確かにカッコ悪いかもしれない!だが、愛する人を前にするとカッコつけてしまうというか...。
気持ちを素直に伝えられないのだ...。分かっている、これがダメなのだというのは...」
すっかり萎んでしまったカスパール殿下...。
「かっこいい王子とかそう言うの無しでなら、お力になれます」
エレオノーラも元気ないし、お世話になっている殿下の頼みだ。
ここは私も協力を惜しまない。
「殿下、諦めて下さい。そもそも素直に気持ちを伝えるだけで解決するんです。ここは私とみさと嬢の言う通りにしていただけませんか?」
「.........あぁ、そうだな。うん...しかし、婚約は絶対解消したくない。それだけはなんとか死守したい。お願いできるだろうか?」
「...まあ、その~...それは本人の気持ち次第ですけれど...大丈夫だと思いますよ?」
この二人めんどくさいな~世話が焼ける...。
「そもそも、殿下はエレオノーラを大事にされているのは見ていて伝わるのですが...初対面の頃は全然相手にしていなかったんですよね?
一体いつから...?」
「み、みさと様!聞いていただけるか?!
あれはまだ私が...」
「みさと嬢...押さなくてよいスイッチを...」
急に元気を取り戻した殿下とフィリップさんのため息...。
こんな殿下は初めて見る...え、これがもしかして殿下の素?
困惑しながら殿下とエレオノーラの幼い頃の話がここで始まった。
次回は殿下の視点で軽く小話を挟もうかと...
次回もお楽しみに!
続き気になると思っていただけたらお気軽に☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっとよろしくお願いいたします。




