4.で、プロローグに繋がるってわけ
目を瞑っている為、音がピタッと鳴りやみ終わっても周囲がどうなってるか分からない。
カツカツ。
大理石の様な硬い足場をヒールが歩くような音が鳴る。
未だに体が強張って動かない。
目の前でヒールの音が止まり、ギュッと何かに抱きしめられる。
ビックリして目を開けてそっと下を見る。
モゾモゾ動いて...顔をグリグリされる。
されてるわグリグリ顔。え、今セクハラされてる?
深呼吸されると息が温かい。こいつまじでこの状況で人の胸を堪能してる。
そして冒頭に戻り、私は...
「はぇ?」
誰か説明できる人を呼んで...。
「うひゃ~生みのり、良い匂いする」
「エレオノーラ、聖女様が凄い目で君を見ているよ。淑女の皮が剥げかけているから少し落ち着こうか」
そう苦笑気味な声色で話しかけて来た男性が近づいてくる。
こちらも綺麗な金髪に優し気な表情のイケメンが近づいてきて、「失礼しました聖女様」と微笑んだかと思ったら抱き着いているセクハラ金髪美女の肩に手を置く。
「い、いえ...。え?エレオノーラ?」
すっと私の体を離したセクハラ金髪美女はこちらを少し探るような目でこちらを見てくる。
「エレオノーラ?え、えれおのーら?」
また泣いてしまいそう。
悲しいからか、嬉しいからか、驚いたからか分からないけど私は彼女の顔に手を伸ばす。
手が震えて指先が彼女の頬に触れたり離れたりするが、彼女の表情は変わらない。
「こんな顔してたのね...。よく...よくこんな綺麗な顔で...私に...恋愛相談なんてしたわね。相談相手をまちが...間違えたかも...しれないね、エレオノーラ...」
うまく言葉が紡げないが、そっと彼女の顔を両手で包み込んでぎゅっとしたり頬を親指でなぞる。彼女の薄い化粧が崩れてしまうが指が止まらない。
「モチモチね...。綺麗な瞳...本当に、本当にアメジストみたい...。」
エレオノーラの顔が徐々に崩れて泣きそうな顔になる。
いや、泣いちゃった。
淑女は人前では感情を出してはいけないと聞いたことがある。
ダメじゃない、エレオノーラ。
「詳しいことは明日説明いたします聖女様。今は少し混乱しているご様子、私の方で王城に客間を用意しておりますので今夜はそちらでお休みになられてはいかがでしょう?」
恭しく胸に手を当て軽く頭を下げる金髪イケメンの提案に乗りたいのは山々だが、私の手を軽くどかしてガチ泣きしながら再度私の胸に飛び込んだエレオノーラを剥がすのを手伝ってほしい。
それから私が居たドーム状の天井一面にステンドグラスが貼られた大きな部屋から出て、出口に立っていたシルバー髪のイケメンに先導されながら馬車まで歩いた。
エレオノーラが「化粧が...」と呟きながら私の肩に顔を半分隠しながら抱き着いて歩きにくい。
金髪イケメンは終始ニコニコしながら横を歩き、馬車の中でも「詳しいことは明日説明いたします聖女様」と繰り返す。
色々起こりすぎてパニックになっていたと思うが、「説明してくれると言うし、まあ、いいか」と未だ引っ付いて離れないエレオノーラの手を平を握りながら、この子が私に危害を加えるとは思えないと結論付けると不思議と落ち着いてきた。
エレオノーラの機嫌が私と初めて顔を合わせた為か最底辺から最高潮に近いくらいまで上がっているのも理由の一つだ。
正直あの綺麗な顔で感情を表に出さず、静かに憤怒の炎を滾らせて冷たい目で見られたら怖気づいてしまう自信がある。
え、この子涎拭いてる?いや、気のせいだよね...。
体感で二十分程で見上げるのもバカバカしい程大きいお城に到着して客間の前まで案内される。
入口から遠い、遠すぎるよ。
「では、聖女様。何かご入用でしたら遠慮なくこちらの侍女までお申しつけください。本日はこれにて失礼します。
エレオノーラ、聖女様はお疲れのご様子です。それに陛下も王妃も説明を求めている。流石に明日には出来ないから行こう。」
手を引かれて去っていくエレオノーラは捨てられた子犬のような表情で何度もこちらを振り向いてくる。
あの子、王妃教育は順調で「淑女はマスターしたわ!」って言ってたような。
「泣きはらした顔を他に見せない様に人払いするのも一苦労です」
そう呆れた口調でこぼした言葉が隣から聞こえて視線をやると、あのシルバー髪イケメンがジッと二人を見ながら隣に立っていた。
「やっぱりまずいのですか?」
「醜聞になりますね。ひいては殿下の弱みになりかねませんのでわたしとしても無視できない事案です」
そう言うとこちらに顔を向けて金髪イケメンと同じく胸に手を当てて軽く頭を下げるシルバー髪イケメン。
「お初にお目にお目にかかります。フィリップ・ド・ランギエールと申します。本日は聖女様が部屋に入るまで見届けろとのことですのでどうぞお入りください。
アルマ、後は任せました。」
そう言われた侍女さんはスッと綺麗な姿勢で頭を下げると、そのまま下がりドアを開けて入室を促してくれる。
「じゃ、じゃあおつかれさまです?」
「はい、お休みなさいませ。明日、お迎えに参ります」
部屋に入り扉が閉まる前、顔を上げたフィリップはそのクールな顔に似合わない優しい顔をしていたのがとても印象的だった。
とりあえず、エレオノーラも王子も側近も登場して序章終了と言ったところでしょうか。
次のお話では異世界に関しても触れていけたらと思っております。
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