2.少し長くなるかと思いますが
「じゃあ...ちょっと魔術院から呼ばれてるから...行ってくるわ、みさと」
殿下との一週間ぶりの再会、及び殿下の謝罪面会が終わってからすっかり落ち込んでいるエレオノーラ。
婚約を破棄されないだろうか?そもそも殿下に嫌われてしまったのではないか?いつもより忙しい殿下とエレオノーラは未だすれ違ったまま数日が経ってしまった。
私もこの問題をどうにか手助けできないか悩んでいるが、その前に二人に余りプライベートな時間がない。
ここは一先ず...
「その、様子を見てれば分かるんだけど...イルマと仲直りできた?」
「......いえ...。しかし職務に影響はないので大丈夫です」
大丈夫そうじゃないのは何となくわかったよアルマ。
「アルマ?ここ、座って?少しお話しよ?」
主と同じソファーでしかも隣に座るのには躊躇があるのか戸惑っていたが、私の膝の上に座るイースと目を合わせると諦めて座ってくれた。
二人を仲直りさせる為にはまず二人の事をある程度知らないと...。
「そう言えば、イルマとアルマっていつからエレオノーラに付いているの?」
「...十年程前で御座います」
十年前と言えば私とエレオノーラと私の交流が始まって少し経った頃だ。特に何も聞いていない。
「そっか、私と同じくらい長いんだね!どんな出会いだったの?」
「...それは...」
言い淀むアルマ。話しづらい事を聞いちゃったのかな?
「無理に聞きたいわけじゃないんだ!けど、アルマはもう友達みたいなものだしイルマもエレオノーラの事も少し知りたいなって思っただけなの」
「いえ、以前もお話した通り育ちが元々良くないので...みさと様が不快に思われるかもしれないと思い」
「...なるほど、アルマは前の世界での私の事は聞いてる?」
頷くアルマに私は続ける。
「私は諦めきって、逃げることしか頭になかったの。自分の事しか考えてなくて...今は聖女なんてやって孤児院や病院で色んな人と触れ合ってるけど、昔はエレオノーラとしか話さないし興味もわかなかった。
立ち向かうべきモノから逃げて、人とも関わろうとしなかった臆病者だったの。アルマは幻滅する?」
「しません。それに逃げることも戦略の一つ。みさと様はお優しく、お嬢様の唯一で御座います。お嬢様と同じくらい尊敬しています」
照れてしまう。ちょっと過大評価すぎる気がするけれどアルマにとってエレオノーラが大事であることも含めれば嬉しいな。
「ありがと。だったらアルマが昔どんな風だったかよりも、今アルマがどんな人なのかの方が大事だと思うし、アルマとイルマが昔どんな風でも気にしないよ」
「では...少し長くなるかと思いますが、エレオノーラお嬢様と私たちの出会いは...」
♦
「あっちに行ったぞっ!!!くそ!あのガキ!弟の腕を折りやがった!身ぐるみ剥いで売り飛ばしてやるっ!」
遠くで唾を飛ばしながら強面の男が叫んでいるのが聞こえる。
なんて言っているかは何となく分かる。この国の言葉はここに攫われてから覚えた。
教えてくれた同じ牢屋の子はもうどこにいるか知らない。
狭い路地の壁を何回も蹴って屋根に上がる。追ってくる男達の体型ではとてもマネできないだろう。
偶に魔術で追ってくる輩も居るけれど、そうなったら魔術を使えないくらい痛めつけるしかない。
追っ手を躱して今日知らない人から奪った戦利品を指先で確認しながら住処に急ぐ。
住処と言ってもただの荒ら屋、雨風を凌げているとはいいがたい...。
けど、あの子にはそれでも必要なのだ...。
「......」
「...おかえり。怪我してない?大丈夫?姉さん」
私たちの民族は皆黒髪に褐色の肌をしている。
この国から見て遠い南の国で狩りをして生活する民族。魔術が使える人、シャーマンを筆頭に一つにまとまった民族だ。
珍しい黒髪に褐色の肌...高い身体能力が特徴で...それを狙った民族狩りに遭った。
女は売られ、男は基本殺された。私達の親も、親戚も、族長のシャーマンも殺されたか売られた。
私達姉妹は奴隷業者に食べ物と自由を制限されてここまでやってきた。
まだ子供だったので...そういうのが好きな貴族に高値で売るらしい。
いつも食べ物を投げつけてくる奴隷業者の男ににやにやしながらそう言われた。
その時はなんて言っているか分からなかったが、頭のいい妹...イルマは一語一句覚えて憎々し気に教えてくれた。
「...大丈夫、ほら薬...それと、これ食べ物...ごめん、少なくて...」
「なんで謝ってるの?姉さんこそ私を置いて行けばいいのに...本当にお人よしなんだから」
困ったような笑い顔で横たわる妹を見捨てられる程、私にとってのイルマは軽くない。
「うるさい。いいから薬を飲んでちゃんと食べて」
「...薬は貰うけど、これは半分こ...ね?どうせ食べてないんでしょ?」
頭のいいイルマに基本私はかけっこや狩りでしか勝てなかった。
劣等感等は無かった。ただ、誇らしい。いつかこの子は狩りしか能がない私に、色んなことを教えてくれる様になるんだろう...なんて思っていた。
「ゴホッ!ゴホッ!うぅ...」
「...っ!」
上半身を支えて少しずつ解熱剤を飲ませる。
奴隷業者から貴族に売り渡される直前、かなり強引ではあったが私たちは逃げ出した。
それから五年、私たちはイルマの頭、私の身体能力で盗んで、奪って...時には殺して食べ物や金を奪ってきた。
殺しに関しては表を歩くような人にしてしまうと騎士たちが本気を出して私達を捕らえに来るので、野盗やゴロツキのみだけれど...初めは嫌だった。
けど生きる為に...イルマの為に私は修羅になる。
五年...五年も何とかしてきたのに、イルマの体調がここ一年で一気に悪くなって...遂には動けなくなった。
見たことない症状で...今だってどうすることもできない。症状に対して効くかも分からない薬を盗んだり、奪ったお金で買って、イルマは意識をなんとか保ってる。
けど、そろそろここもマズい。正直やりすぎた。
ここら一帯に根を張ってる裏ギルド...人身売買や違法薬物など捌いてる所から金品を奪いすぎて懸賞金すら掛けられている。
まだ、少女と言われる年齢なのに随分この首に重いお金が吊り下がってしまったものだ...。
「ごめん、イルマ。ここももう限界だ。移動しないと...暫く辛いと思うけど...」
「......ねえ、本当に連れて行くの...?姉さん一人なら...」
先を聞きたくなくて右手でイルマの両目優しく覆って...
「妹を見捨ててまで生きたいとは思わない。頭がいいから色々考える。イルマの悪い所。今は寝て」
この次はローエンベルク王国にでも行こう。
あそこは魔術が盛んで...もしかしたらイルマの病に効く薬もあるかもしれない。
私には...もうイルマしか居ないんだ...失いたくない...。
始めったぞ~アルマとイルマのお話だ~
と言ってもそんなに長くするつもりはありません。
ただ、これを読めばアルマとイルマの忠誠心の理由と、アルマの知られざる姿が!?
ここで初めて書くので当たり前か...。
次回もお楽しみに!
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