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16.お姉ちゃんだから

「あ”あ”あ”っ!!!」


足を滑らせた。




イルマを説得?してからアルマに米俵の様に抱えられながら断罪イベントが起こっているであろう、王城の大きなホールへ急ぐ。


アルマは人間を一人抱えているとは思えない俊敏さで警備をすり抜けていく。


月影の塔は王族を幽閉するという用途の為、魔術的な防御網が厳重であったが、アルマ曰く...


「お嬢様の要求は難しいものも多く、様々なことを学ぶ必要がありました」


との事...王城の警備を抜けるスキルがなぜ必要で、どこで学べるんだ...。


大きなホールの天窓を開けて、舞踏会の会場を見下ろす。


天井に設置された天窓から見るとこのホールは高さも広さも凄い。


参加している貴族の数もかなり多い。


「フィリップさん...」


暫くぶりにフィリップさんの顔を見た気がする。


いつも助けてくれるフィリップさんの隣には今はソフィアが立っている。


ホールが大きく、遠目ではあるけれど綺麗な銀色の髪ですぐ気が付いた。


義務で優しいのかもしれないけど...また一緒に庭園へ...。


それにしても...


「なんかもうエレオノーラとソフィアが対峙してない?イルマを待つ気なかったでしょあの子...」


結局エレオノーラはわざとイルマが間に合わない様に陛下達を救出に行かせたに違いない。


イルマが近くにいて、自分がミスれば共倒れだと確信していた様に。


「お嬢様がなされている会話を拾えるように集音魔術を使います」


ノイズが多少入っているが、話の大枠は理解できた。


ただ、思った以上にエレオノーラが力技での解決方法を取ったのに頭を抱えたくなった。


『ここで殺してしまえ。どうせ適当に罪をでっちあげる予定であったのだ。もう、よいじゃろ』


嘘...?良くない。


『え?いいの?なんか適当に子供を生ませて~とかえぐい事言ってたじゃん』


あいつら...。


身体が前のめりになった瞬間...足を滑らせた。


頭に血が上って思わず場所も考えず駆けだそうとしてしまったらしい。


落下する瞬間、殿下と目があった気がする。


「またあああぁぁぁぁ!!!あるまぁぁぁ!!!」


ホールに向かって呆気なく落ちる私を天窓から弾丸のように飛んだアルマは私を荷物の様にキャッチしてそのままエレオノーラの元へ。


落下する中で周りの騎士がエレオノーラに何か飛ばそうとしているのが見える。


エレオノーラがさっき使った魔術だろうか?私には違いが分からない。


関係ない、守らないと。


相当高さがあった筈なのにフワッと着地したアルマ。長いスカートがふんわり少しだけ盛り上がる。


アルマに俵の様に抱えられているのは変わらないが、今回は頭が背中側になっている為、着地した時見えたのは横たわって虚ろな目でジッと前を見るエレオノーラだった。


その直後...


甲高い耳を劈く轟音...重たい鋼が何かを弾いたような音が連続で起こる。


後で聞いたら、アルマが片足と片腕で飛んでくる魔術を弾いたらしい。


アルマのお尻をパチパチ叩いて降ろしてもらう。


「エレオノーラ!」


「ぁ?...みさと...どうして...?」


決まってる。


「お姉ちゃんだから、無茶する妹を助けに来たの」


癒しの力を使う。


血を吐きながら苦しそうなエレオノーラ。


涙を浮かべながらなにか必死に伝えようとしている。私の胸倉を強く握って身体を離そうと...ああ、分かるよ。


「逃げるときは一緒にね、エレオノーラ」


「ぅぅう!!う!!」


なんで来ちゃったのよ?!とか、早く逃げなさい!とかだろう。


アルマの手入れで随分と綺麗になった私の黒髪は白く輝く。瞳も同様に白く光り輝いているだろう。


エレオノーラを抱えたままアルマのいる方...ソフィアとヴィクターに向き直る。


「え?なになに?え?モブ...?意味分かんない。呼んでないんですけど」


アルマが何かの格闘術だろうか?重心を下げて構えを取る。えらく様になっていてかっこいい。


「”黒狗”の姉の方か...。周囲を囲んで一斉に掛かれ。動かれたら面倒だ」


ヴィクターの命で武器を抜いた騎士達に取り囲まれる。


どうでもいい。


「このイベントには攻略対象と私!そしてその死にぞこないだけしか要らないのよ!


つか、あんた日本人でしょ?!なんで出てくんのよ!


これは悪役令嬢の断罪イベントなの!あんたが割り込んだって関係ない!


主人公には勝てないのが分からないの!ねえ!?」


どうでもいい。


「主人公とか断罪とかどうでもいいのよ。私は大事な人を傷つけられて怒っているの。


あんたの言うイベントがどういったものかも知らない。


でも...」


身体からどんどん魔力が抜けていく。興奮からかエレオノーラの治療に必要以上の魔力を消費している気がする。


ホール全体に雪が降るように私の魔力が満ちていく...。


「うるせええなあ!どうせ私が居れば魔術は使えない...!筈なのに!


モブのくせに!モブのくせに!


騎士たち!さっさと殺して!」


命令に反応して騎士たちがにじり寄ってくる。


「みさと様、退路を開きます」


うるさい。


「みさと...逃げなさい...」


うるさい...けど胸倉を掴む手にエレオノーラを抱えながら空いた右手を重ねる。


「お姉ちゃんは妹を見捨てないものよ」


騎士たちが一斉に動いて私達を切りつけた。





「限界です。殿下、行きます」


「いいよ、これ以上は僕も限界だからね」


フィリップさんが横に控える騎士の剣を抜き去ったと思ったら、一瞬姿が消えて...気が付いたら凄まじい勢いで私たちの周りにいる騎士を弾き返していく。


漏れた騎士も居たけれど、アルマが素手と足で全てなぎ倒していく。


鎧がひしゃげる音がする。


「え?」


あっという間だった。


「助けるのが遅れて申し訳ありません。あの女、ああ見えてなかなか用心深かったので、又しても遅れてしまいました」


私とエレオノーラを庇うように立つフィリップさんはそう言って剣を構え直す。


「ぬぁぁあああああ!!!」


叫び声を上げるソフィアを見ると、殿下が馬乗りになってソフィアになにか注射してる...。


一体どうなっているの...?


女性に馬乗りになって無理やり何かしら注射する王子様は流石に私も初めて見ました。


それにエレオノーラはやっぱりエレオノーラでしたね...。


次回もお楽しみに!


続き気になると思っていただけたらお気軽に☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっとよろしくお願いいたします。

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