15.信じられません。見損ないました
「アルマァァァァァァァァァァ!!!!!!!ぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!」
私は今、空を飛んでいます。
正確には落ちています。
私に協力してアルマは共にエレオノーラの為に動くことになった。
それまで私に内緒にしていた現状を教えてくれたアルマ。
陛下が軟禁されていること、シルヴァ夫妻が捕らえられていること、帝国の第二王子もソフィアの術中であること等...。
アルマ曰く、直接エレオノーラを助けるのではなくて先に陛下やシルヴァ夫妻を救出して動きやすくする方が、エレオノーラの為になるかもしれない...そこで私たちは罪を犯した王族が幽閉される、”月影の塔”に潜入することに。
肝心の潜入方法が...
「え?待って?つまり、転移魔術は高位すぎてアルマには使えないし、そもそも防御機構が働いていて転移できない。
正面からは目立ちすぎてダメ。忍び込むには途中の階の探知魔術が厄介...。
だから、上から高速で探知魔術を突っ切る...?」
という事で...落ちてます。私。
「アルマァァァァ!!!!すぐすぐすぐ前前前!!!」
月影の塔最上階に球体状に張られた幾重の探知魔術はエレオノーラが改修と言う体で手を加えたものだった。
そこで“わざと”脆弱性を残しておいたらしい。
それは...
「塔の上空から高速で飛翔し、一定のルートを辿れば見つかりません。これはルートを知っているお嬢様と殿下達しか知らない情報です。
飛翔する速度もとても高速で、それだけで実現できる者が少ないので安心して下さい」
安心?
「私では重力落下による加速が必要になり、かなり上空から一気に降下する必要があります。
みさと様をお抱えしてのエントリーになりますので、想定より高く飛ぶ予定です。
地上からの飛翔時に強力なGを感じて気を失うかもしれませんが、保護魔法を掛けるのでご安心を」
安心...?
「大丈夫なんだよね?ちゃ、着地とか...大丈夫だよね?」
「実際に試すのは初めてですが、全力で挑みます」
そっか、初めてか。そうだよね、うん。
高く飛ぶために人気の少ない私有地を商人さんに借りてきた。
ここに”アルマの身体能力を一瞬だけ上げる”魔法陣を描くらしい。
“飛翔する”魔法陣じゃないんだ...。
♦
“飛んで”からは一瞬だったと思う。
私を抱えたアルマは爆音を上げながら”飛んだ”。
そして落ちた。
ピンポン玉のような軌道を描いて、重力によって凄まじい速度に達した速度を維持しながら...私は叫びながら...。
イースはお留守番だ...流石に危なすぎる...ソフィアがって言うのもあるし、この大道芸がってのもある。
あの大道芸を振り返るとアルマは「かなりギリギリでしたので着地に少々失敗しました」と語っていた。
「ぁぁぁ...あるま、あるま。かかか肩貸して...」
塔の上部にある物置のような所に転がり込むように着地した私達。
アルマは腰を抜かしてしまった私をお暇様抱っこしながら最上階を目指す。
「人いないね?」
「ええ、そもそもここまで侵入されるのを想定していません。お嬢様が用意した抜け穴以外で侵入するのは不可能に近いです」
凄いなエレオノーラ...。
少し装飾に凝ったドアの前で、
「陛下、王妃様、エレオノーラ付き侍女のアルマでございます。拝顔の許可を頂けますか?」
走ってくる足音共に扉が開いて...
「アルマではないか!おお、よかった!其方が来たという事は...はっは!みさと殿!」
ロバートさんに王妃様、それにヘンリーさんと宰相のルシウスさんも...みなさんお揃いで...。
「た、助けに来ました!」
黒髪褐色美女にお姫様抱っこされたまま両手を握りしめてみた...。
格好がつかない...。
「姉さん?」
部屋の中からイルマが顔を見せる。
♦
「分かってるの?みさと様の身を危険に晒して...信じられません。見損ないました」
イルマが今まで見たことない程キレた顔でアルマに詰め寄っている。
「姉さんの使命はみさと様の御命をお守りすること、それをお嬢様から...誰より信頼されている貴方に任されたのに...」
「......」
どうやら、エレオノーラはもう一つ魔術的な脆弱性をここに残していたらしい。
アルマは脳筋...力技で侵入したが、イルマはもっとスマートに侵入したらしい。
陛下達を救出して、エレオノーラの元へ行くらしい。
今エレオノーラは舞踏会...断罪イベントらしい会場に一人向かっていると...。
シルヴァ夫妻は別で捕らえられていて、恐らく舞踏会に居ると...。
「最悪です。本当に見損ないました。陛下達をお願いします。話は後で聞きます」
そう言い捨てると脱出の為の準備を再開しようとするイルマ。
「なあ、ヘンリー。一応秘密裏に王都から離れていた貴族に団結の指示は出して、みさと殿を守るように指示していたが...この場合どうなるんじゃ?」
「さあ?どうもこうも...来てしまわれてますな...」
「弟よ...何をしているんだか...」
「行動力はエレオノーラといい勝負ですわ。クスクス」
陛下たちにも何だかちょっと呆れられてるかな?
「イルマ、ごめんね。けど、どうしてもって私が...」
「みさと様の所為ではありません。後で首を落とされる事になっても主を守る。それが私達の忠義だった筈です」
「......」
いつもニッコリ陽だまりのような彼女は額に青筋を浮かべながら言い切る。
「イルマ、エレオノーラの所に行ってなにか作戦でもあるの?」
「...いえ、最悪私が身代わりになってお嬢様に逃げていただく可能性があるだけです」
聞いていた通り思った以上にまずい状況らしい。
「うまくいかないと思う」
イルマが手を止めてこちらを見る。
「うまくいかない。だって、エレオノーラがイルマを放って逃げるはずないから。
イルマなら、分かってるよね?」
「ですが...」
イルマはエレオノーラを慕ってる。いつも隣でエレオノーラを見てるイルマなら、想像がつくはずだ。
幼い頃と違い、エレオノーラは公爵令嬢だから、未来の王妃だから、命が惜しいから...そんな理由でイルマを置いて行かないって。
「多分ソフィアと私は同じ世界か、似たような世界で過ごした経験があると思うの。
召喚されたのか、それともテンプレ通り転生したのか分からないけど...。
だから、私が行くよ。エレオノーラの所には」
恐らく私たちはフィリップさんが説明してくれた、『理の異なる存在』なんだと思う。
目には目を、歯に歯を...どうにかできる算段なんてない。
もしかしたらエレオノーラはもう、この状況を解決しているかもしれない。
けど、もし窮地なら...
「イルマ?絶対戻るよ。だから陛下達をお願い。貴方は貴方の主の命を守り切りなさい。
私もエレオノーラにガツンと言いたいこともあるし、ソフィアにも怒ってるし...。
後でアルマとの仲直り、手伝うよ」
「......しかし...」
「イルマ、みさと様を守るのは私の使命です。それは忘れていません。早く行きなさい」
「...のこのこ一人で戻ってきたら承知しませんからね?
ほんっと~に後で話を聞きますからね?姉さん?
みさと様、後で私も向かいます。どうかエレオノーラ様を...お願いします」
未だキレてるイルマに苦笑しながら...
「うん、任せて。お姉ちゃんだから!」
すこしイルマの顔に笑顔が浮かんだ気がした。
アルマは脳筋説が出てきました。
次回はなんとか山場を盛り上げたい...そしてアルマとイルマの話を...ここまで書けなかったエピソードを書きたい。
次回もお楽しみに!
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