14.今度は逃げない
「ぬぁぁぁっとくいかなーーーーい!!!!(納得いかない)」
高級クッションに両手を振りかぶって八つ当たりしながらみさとは愚痴る。
「あ、あ、みさとお姉ちゃん...」
イースは手を伸ばしたり引っ込めたり、どうしたらいいか分からない様子。
「そりゃあ!役に立ちませんよ?分かってますよ?まだ、この世界に関して世間知らずな自信がありますもの?!けどさ!待っていてって...何もしなくていいっておかしいよ!ねえ!?」
「......」
アルマはジーーーっと無表情のままこちらを見ている。聞いてはいるけど何も言いませんってか?
「はぁぁ~~~~...」
ここはシルヴァ家が懇意にしている商人の隠れ家らしい。
足が付かないこの場所は緊急時の退避場所の一つ...らしい。
私はここに移動してから安全のため軟禁状態だ。
「このまま何もしないんじゃ...前と変わらないじゃない...」
親戚に何をされても、言われても諦めきっていた。
殿下やフィリップさん、エレオノーラは私と違って策を練ってきちんとやり返していた。
諦めて、ただ逃げようとしていた私とは違う。
私も彼らと接して、大切な人も何倍も増えて、諦めて逃げていい場面と逃げてはいけない場面の見極めが少しはつくようになったと思っている。
それに、エレオノーラは言葉はきついし素直じゃないし甘え上手なところが可愛いし、暴走するのは相変わらずだ。
殿下は暴走しがちなエレオノーラを上手く制御している気がするし、フィリップさんのアシストもあっていいチームなのだと思う。
けど今は殿下もフィリップさんもすっかりソフィアの術中であると考えていいはず。
エレオノーラは大丈夫だろうか?
「アルマは私がここから出てエレオノーラの所に行くって言ったらどうすの?」
「御止め致します。みさと様の護衛が最優先ですので」
アルマとは仲良くなったが、あくまでも主はエレオノーラだ。
ここ数日同じやり取りを何度も繰り返す。
埒が明かないし、堂々巡りだ。
けど、このままでいいはずないと...気持ちが落ち着かない。
♦
「みさと様、これよりシルヴァ領へ向かいます。念のための処置ですのでご容赦を。イース、みさと様の所持品をまとめなさい」
「......」
「は、はい」
シルヴァ領?なんだって?
「エレオノーラは?」
「お嬢様は現在、事態収拾の為動かれています」
殿下もフィリップさんもエレオノーラもここにいる。
私は...
「...行かないわ」
「......」
「ふざけないで」
皆置いてシルヴァ領に行くってことは...エレオノーラが直接私に告げないってことは...それは念のための処置なんかじゃない。
きっと私を思っての事なのは分かる。
けど...このまま取り返しがつかなくなってしまったら...今度は事故じゃなく、私自身の選択で大切なものを失ってしまう。
腹が決まった。
そして腹も立った。
いつまでもうじうじしていられない。
アルマの前まで行って...
「貴方は私を守るのでしょう?なら付いてきなさい。嫌ならイースとシルヴァ領に向かいなさい」
「いえ、そういう訳には...」
「エレオノーラは...私の妹よ?義理でも...ずっと一緒にいたの。気持ち、分かるよね?」
ここにきて無表情のアルマの顔に少しだけ、ほんの少しだけ変化が見える。
イースが作業途中で手を止めて中腰でこちらを伺っている。
頭を抱えて手繰り寄せ頭を撫でる。
「イースの事もあるから、アルマにはイースを任せたい」
「承知しかねます。多少強引な手を使っても...みさと様を御止めします」
そんな顔...しないでよ。さっきみたいに無表情なままじゃないのずるいじゃない...。
耐える様にアルマは私を止めると言うと手を伸ばしてくる。
私に触れる瞬間...
「アルマ、私と一緒に怒られてくれない?」
「......?」
多少私が我慢すればいいなら幾らだってする。
でも...
「シルヴァ領に逃げるんじゃなくて...これまでと同じようにするんじゃなくて...やらずに後悔するんじゃなくて...やって後悔したいの」
私はこれからもずっとエレオノーラにおんぶにだっこ...は嫌だ。
「エレオノーラが私をここから移すってことは状況が相当まずいんでしょ?なら、私たちが行かなくて誰が行くの?
アルマ?手を貸して。私と一緒に怒られて、それで...また庭園に遊びに行こ?」
「......」
下がりつつあるアルマの手を取って自分の頬に当てる。
黒髪褐色美人でクールビューティーな外見とは裏腹に拳ダコが出来た頼りがいのある手の平。
「私の大切な者は...ほら、この両手だと足りないの...抱え込めない。二人しか触れられない。まだまだ沢山いるの。
ふふっ...けど嬉しい。いままで唯一大切な者は触れることすらできなかった。今は触れられるし、沢山増えたの。
だから、諦められないし逃げられない。逃げて解決するなら逃げるけど、そうじゃないなら抗わないと。
ねえ?アルマ?力を貸して」
イースは頭を私のお腹に押し付けられながらも見上げて様子を伺っている。
「それに、妹を見捨てる姉はいないわ?」
ジッとしていられないところはやっぱり似ているのかもしれませんね。
次回も引き続きみさと視点です。
次回もお楽しみに!
続き気になると思っていただけたらお気軽に☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっとよろしくお願いいたします。




