8.聞いて下さいまし...みさとぉ
「殿下が他の女性と二人っきりで楽しそうにしていた?」
エレオノーラから聞かされた理由は簡単に要約するとこういうことらしい。
「この前みさとにアドバイスを貰ってから中々お互いに忙しくて顔を合わせていなかったの。
隣の帝国、ハインリッヒ帝国から急遽第二王子のマティアス・フォン・ハインリッヒ様が訪問されることが決まって忙しかったのよ」
へぇ~知らなかった。
この国、ローエンベルク王国は大きな国々に囲まれている。
ハインリッヒ帝国はその中の一国だ。
「実際訪問されたらフィリップ様も中々みさとの護衛をずっとは出来ないから、担当のわたくしは口酸っぱく言われたわ。
あの男は煩いからやめておきなさい。
話を戻すと、今日偶々手が空いたわたくしは秘密で殿下に会いに行ったの...。
政の調整のために殿下は貴族たちと舞踏会に出ていらっしゃったわ。
...わたくし、初耳でしてよ?
そこでバルコニーで二人きりで楽しそうに令嬢と話す殿下を見て...そのぉ...」
令嬢は基本的に結婚するまで異性と二人っきりにはならない。
それがこの国の貴族の常識だ。
それを殿下が、エレオノーラに秘密で出席した舞踏会で令嬢と二人っきり...。なるほど...。
「声は掛けなかったの?」
「無理ですわ...。
わたくし...これでも素直じゃなくて可愛くない自覚はありましてよ?愛想を着かされる理由なら沢山思いつきますわ...。
それに、殿下が楽しそうでしたの...。
王になるのですから側室の一人二人居てもおかしくないのだわ...」
すっかり弱気になってしまったエレオノーラ。
これは事実を確認しないとどうしようもないかも...。
「今日はもう横になるわ...ごめんね、みさと」
下手な想像で慰める訳にもいかず明日、殿下とフィリップさんに話を聞きに行くしかないと思ったみさとだった。
「え?手紙?」
「はい、朝一番にフィリップ様からみさと様宛てに預かっております」
アルマが取り出したの一通の手紙だった。
今日はなんとか都合を付けてもらって殿下とフィリップさんに話を聞きたかったのだが、それより早くフィリップさんから手紙を貰ってしまった。
内容は...
「嘘...タイミングが悪すぎる...」
手紙の内容はハインリッヒ帝国第二王子、マティアス・フォン・ハインリッヒ様が予定を早めて今日訪問されるという事。
暫く滞在される予定で、その間殿下とフィリップさんはマティアスに付きっ切りになってしまうため暫く護衛できない。
その為アルマとイルマは別任務等を受け持つことがあるのだが、一時的にそれを廃止して聖女みさとと宮廷魔術師エレオノーラに付きっ切りで護衛すること。
一時的にとは言え護衛を離れる事に関して申し訳ない...との旨が記されていた。
つまり...
「暫く会えない?」
「はい、緊急性の高い案件であれば別でしょうが、急すぎるマティアス王子の訪問に王家も王城も今は手一杯かと」
え、エレオノーラの事どうしようぉ~
「お茶会...?」
「ええ、そうなの。めんどうだわ...」
結局殿下とフィリップさんに話を聞くこともできず、朝食後にエレオノーラとお茶を飲んでいた。
「ただでさえ殿下の婚約者で魔術師としても活動しているからか、怖がられてるし良く思われてないのよ...。勿論味方もいるけれど、気が重いわ...」
立場上社交をおろそかにすることが出来ないエレオノーラ。
幾ら殿下の事で気乗りがしないとしても欠席できない茶会らしい...。
「侍女として一緒に行ってあげようか?」
いつものメイド服を着ていけばアルマとイルマの親戚として誤魔化しきれる気がする。
それに別に聖女である私がお茶会に出ても何ら問題はない。
貴族の中では殆どの人が姿形を知らなくても聖女がこの世界に渡ってきたのを知っている。
「......いずれはみさとも確かに...お茶会とか...まあ、必要か...」
弱ってる上に本当に行きたくなさそう...。
ここまで歯切れが悪いというか...いつもと違うというか...放っておけないなぁ~
「ここは貴族の先輩としてエレオノーラにはビシッとお茶会での立ち回りを教えて欲しいな~わたしは~」
「...そ、そう?わたくしが頼り?なのかしら?」
「うん、エレオノーラに教えてもらえずその内、恥をかいてしまうかも?エレオノーラが頼りだな~」
もう一押し...。
「それにエレオノーラは華があるから、もっと着飾ったところが見たいな~」
「...う、うん...殿下の事は置いておいても、みさとのサポートはわたくしの役目よね」
よしよし...これで...
「じゃあ、のんびりしている暇はないわね。みさとのドレスを...今回はオーダーメイドは流石に間に合わないからわたくしのドレスを急いで調節しないといけないわね」
「え?」
「今日は母上も居ないし...イルマ、何とかなるかしら?」
「はい、お任せください」
ちょっと...
「ちょっと待って!私侍女として...」
「一緒に参加してくれるんじゃないの...?」
私の服の袖をつまんでクイクイしてくる。
不安いっぱいの顔と上目遣いで私を見上げてくる。
ううぅ...しおらしいエレオノーラ...。
そうだ、落ち込んだ時や弱ってるときのエレオノーラに私は......弱い...。
「アルマ、イース...準備手伝って...」
「承知しました」「はい、がんばります」
殿下とエレオノーラに関しては今はまだ何も動けない。
今はエレオノーラのサポートをするしか...。
こうして私のお茶会デビューは決まった。
しかし、私は予想もしていなかった...。
私にとってエレオノーラがこの世界の悪役令嬢の様に思えるという事は、その逆が...この世界にもいるかもしれない事を......そう、主人公が...。
そして、このお茶会で私たちは初めて邂逅するのだ...ソフィア・ド・シャンポールに...。
今回はパパっと話を展開させたつもりです。
次回はお茶会で待ち受けるソフィアとの邂逅を書いていきます。
ちょっと殿下たちの出番は少なくなるかもしれませんが仕方ないですね...。
次回もお楽しみに!
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