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13.フィリップ・ド・ランギエール

「婚約を...破棄させていただきますわ」




初めまして、フィリップ・ド・ランギエールと申します。


ランギエール侯爵家次男、現王太子、カスパール殿下の側近を務めております。


本日、特に急ぎの仕事も無くカスパール殿下と執務室で仕事に明け暮れていました。


そこにカスパール殿下の婚約者、エレオノーラ・ド・シルヴァ嬢がいらっしゃって冒頭に戻ります。


「...エレオノーラ?どういうことかな?もし僕に不満があるなら、聞かせてほしいな」


いつも笑みを絶やさないカスパール殿下、流石に開口一番に婚約破棄を提言されて焦っておられる様子。


正直、非常に面倒だ。ここでエレオノーラ嬢の言いたい事だけ言わせて逃げられてしまったりしたら。


今日の殿下の執務は進まなくなり、大変なことになります。


「......いえ、殿下は完璧ですわ」


先に言っておくとこの二人は不器用です。


殿下は社交性が高く、次期王として相応しい実力とカリスマ性を持ち合わせています。


エレオノーラ嬢は若干十四歳で魔術院を統括していて、正直そこらの貴族の当主より権力を持っています。


しかし二人とも色恋事になると...


「い、いや待ってくれ。完璧ではない。それに僕は...その...」


「殿下、ここはまず理由を聞いて話を整理しましょう。話が進みません」


「それは...」


何か問題が起きたなら、まず婚約者なのだから殿下を素直に頼ってくれればよろしいのに...。


殿下も普段は動揺の「ど」の字も無いのにエレオノーラ嬢が絡むと、てんでダメだ。


態度がもう惚れてますって言っているようなものだろう。


エレオノーラ嬢はそれに気が付いてないのか...殿下をあまり頼りになさらない。


「エレオノーラ嬢、お願いです。これでは執務が大変なことになってしまいます。口外いたしませんのでまずは理由をお願いします」


本当にお願いします。


「分かりましたわ...。実は...」


異世界にいるエレオノーラの家族、師匠殿が大変な目に遭っている為、召喚の儀を行いたい。


しかし、シルヴァ家の令嬢として、殿下の婚約者として貴族と陛下に黙って勝手に聖女を招いたら自分だけでは責任を取り切れない。


なので出来るだけ身を軽くしたいと...。


「......なるほどね...」


殿下は...ホッとしてる。これはエレオノーラ嬢に嫌われた訳じゃないのにホッとしておられる。


状況を考えていただきたい。


「なので婚約破棄を「却下だね」」


「ええ、エレオノーラ嬢の師匠殿の事は以前から聞いていますが、今回は強引な手段を取る他無いでしょう。


どうせ止めても聖女を招くのでしょう?


ならば聖女もエレオノーラ嬢も殿下の立場も守れる手段を取りましょう」


こういう無茶は過去にもあった。


腐った魔術院を一新するときに物理的にも社会的も爵位のある家を”潰した”出来事や、エレオノーラ嬢が滅茶苦茶した後始末とか、エレオノーラ嬢が考案した画期的な技術を巡る利権争いとか、エレオノーラ嬢が..….はぁ...ここまでにしておきましょう。


「フィリップ、どうだろうか?ここは一つ、”釣り”をしてみないかい?


勿論、聖女が”餌”で釣り人は僕たちだ」


現在、ここローエンベルク王国には三つ派閥がある。


王太子派閥、第二王子派閥、貴族派閥であり今回のターゲットは恐らく貴族派閥だろう。


詳しい話は省くが、貴族と名が付くだけあって人数も多い。


中立派や王子派閥に居ても貴族派閥にも属している場合すらある。


十年ほど前まではただ各王子派閥があるだけだった。


しかしここ十年で一気に実態を得始めた。まるで誰か別に旗印がいて、それに従っているような...。


この実態が全くつかめない。明らかに目的を持って動いている。


今回、それに聖女を食いつかせて、お金の流れ、噂、圧力等の力の流れを浮き彫りにして派閥の全体像を掴みたいという事なのだろう。


「...みさとが、餌ですって?」


完全に目が座ったエレオノーラ嬢に私はこれまで培った”フォローと言う名の言い訳”を繰り出す。


「恐らく、無断で招いた聖女を利用しようとする輩は多いはずです。なのでここで一旦敵をはっきりさせてきちんと聖女を守れるようにしましょう。勿論私や殿下が守ります」


「......そもそも本当にお二人は...協力してくれるのですか?」


い、今更ですか?!


「エレオノーラ、ここまで聞いて放っておく事は出来ない。それにその様子だと、聖女をシルヴァ領へ連れ去るつもりだろう?


もしシルヴァ領とこの国の内戦になったらこの国は無くなるよ。文字通りね」


エレオノーラ嬢が本気を出せば...もしかしたら魔術院すら敵に回る。


幾ら魔術を駆使しながら戦う騎士たちや、強大な魔術を操る魔術師達が居ても、エレオノーラと魔術院が相手となれば”相手にならない”。


エレオノーラ嬢は自分一人では責任を取り切れないけれど、自分の持てる物を全て使う覚悟はあるようだ。


「ここは、エレオノーラ嬢が苦手な”貴族の戦い”です。ここは殿下と私にお任せください。エレオノーラ嬢は聖女様の御心をお守りください。


貴方にしか出来ない事でしょう?」


「ちょっとよ!ちょっと苦手なだけよ...!ま、まぁ......まあ、わたくしにしか出来ないわね!」


「うんうん、そうだね。流石フィリップ、詳細を詰めよう」


エレオノーラ嬢のご両親は...失礼ながら親馬鹿と言われるほどエレオノーラ嬢を溺愛しておられる。


あまり珍しい出来事ではありませんが、理由が理由だけに周りもそれを批判できない。


割と本気で内戦になりかねなかった。


ああ、平和な執務に戻りたい...。


「陛下には...事後報告として、後々元々知っていたという事にして頂きましょう。報告したら止められます。


現在、第二王子派閥は第二王子が留学中なので身動きが取れない筈です。


ここで”余計な事”をしてくる連中は恐らく貴族派閥の息が掛かっています」


そうして私達は大枠ではありますが”釣り”と、聖女を保護する為の計画を話し合いました。


そして、今振り返れば私の運命を変えた召喚の儀を行うための場所、召喚の間忍び込むのでした。


婚約破棄は悪役令嬢とセットですからこの作品でも婚約破棄、登場しましたね!


え?そうじゃないと?


フィリップ視点をサクッと書いて次進みたいですが、書きたい事も沢山あるジレンマでございます。


次回、ついにみさとと初対面する一行。フィリップが感じた思いとは?お楽しみに!


続き気になると思っていただけたらお気軽に☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっとよろしくお願いいたします。

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