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12.陛下、初登場ですわ!ついでに締めですわ!


「なんじゃ、終わりか。では裁定を下さなければな」


一斉にこうべを垂れる貴族達。


ああ、これは先程の状況とは違う意味で窮地かも知れない。


「して、ワシも初めて報告に聞く事も多くあったがルシウス、カスパール、ご苦労であった」


段差を降りてこちらに向かってくる足音が二つ。


「へ、陛下ぁ!!恐れながら申し上げます!陛下の御子息であるカスパール王太子は、陛下に秘密で聖女を招かれました!その裁定を何卒!!!」


バックス伯爵は今日一番の声の大きさで陛下に訴えかける。


陛下ともう一人の足音がバックス伯爵の前で止まる。


「ほう...そうか。始めから舞台袖でお主等の話を聞いておった。この場での話は委細承知している。他にあるか?」


「え、...?あ...しかし、その...」


再度足音がこちらに向かってくる。


私の頭を埋め尽くしているのは最早バックス伯爵でもなく、周りの貴族でも無く、聖女が云々でもなく、たった一つの事柄であった。


「皆の者、顔を上げよ。さあ聖女よ、顔を良く見せてはくれないだろうか?」


膝をついていた貴族たちは立ち上がり、少し前で私を庇うように立っていた三人は。いつの間にか私の傍まで戻ってきていた。


無理だ。上げられない。だって...。


「みさと?陛下が顔を見たがっているわ。そんなに床を見ていても染みなんて無いわよ?」


誰がこの状況で染みなんて探すのか...。


私は思わず下から覗き込んできたエレオノーラに目を向けて、今私の頭の中を埋め尽くしているある事柄について口走ってしまった。





「.........恋愛小説、奥さんと、回し読み」


「...ああ、それ割と明かしちゃいけない秘密だから、その件は後で御本人にね?みさと。はい、顔を上げなさい」


ああ、きっと不敬罪で斬首で晒し首だ。


「ろろろっろロバートさん、様、陛下。し、知らなかったんです。お、お許しを...」


「ぶっふ!...」


「殿下...我慢してください」


顔を上げるとニコニコしてこちらを見つめるロバートさんと目が合った。


ロバートさん...離宮の庭園で庭師の仕事をされている方だ。


それが今、陛下と呼ばれ、上等な服に身を包み、私の前に立っている。


「ああ、聖女よ。いや、みさと殿。此度は大変であったな。しかし、我が国の民の為、自身の身の上が他の者に知れ渡る危険を犯してまで、無辜の民に癒しの力を使ってくれたこと、この国の王として礼を述べたい。


まことに大儀であった」


そう言って私の頭にそっと手を置いて撫で始めた。


私がロバートさんを手伝った時に、ねぎらいだと言っていつもこうしてくるのだ。


「あ、あの...お、奥さんって...王妃様だったりしますか?」


「っぶ......フィリップ...フィリップ...どうか今だけ僕の口を君の剣技で塞いではくれないだろうか...?っくっく!」


「殿下、お願いですから、我慢してください」


「みさと、しっかりして、王妃様だし私も偶に貸していただいてるわ」


「......っ!...不敬罪...斬首...晒し首」


「うむうむ。やはりまだ心の傷が癒えていないのに、このような場所に呼んでしまったからか動揺しておる様じゃ。なあ、ヘンリー!」


「ええ、その様ですな」


もう一つの足音の正体はヘンリーさんだった。


「愚息がお世話になっております、聖女様。いえ、みさと嬢。愚息はみさと嬢のお役に立ちましたでしょうか?」


「父上、後にしましょう。お二人の出来心のせいでみさと嬢はもう限界です」


父上?父上?!え!フィリップさんの父上って事は...ランギエール侯爵家当主...。


「ああ、そうであった…。


そうであったな......きちんと裁定を下さなければな...」


そう呟いてからロバートさん...陛下はバックス伯爵に向き直る。


「なあ、バックス。ワシは”カスパールが聖女を隠匿している”としか聞いておらん。


なあ、バックスよ。どういうことなのだ?」


バックス伯爵は全身を震わせながら答える。


「......カスパー王太子らが聖女様を隠匿されていたのは認めており、それをご報告したまででございます」


「ほう...。連れ去ろうとした事や馬車で子供を轢いたことをまずは聞こうと思ったが...まあ、よい。


して、カスパール、フィリップ。隠匿したと認めたのか?」


「いえ、陛下。私共々、”一度”も認めておりません」


「嘘だ!先程シルヴァの姫君だって”共謀”したと!それに!ランギエールの次男坊だって!」


「貴方にとって”無言”で対応されると肯定となるのですか?私達は”一度”も”陛下に報告していない”等と言っていませんが?」





《『いやいや、幾ら王太子の側近と言っても...ランギエール家の”次男坊”、現宰相で次期当主の兄君や陛下は御存じなのですかな?


おやおや、貴族である私共が知らないという事は...お知らせになっておられない?』


『...』》




《『知らなかった...知らなかったのだから仕方ないだろ!?精神的に不安定など知らぬ!大体!陛下にも報告していないのは一体どう言い訳するのだ!』


『.知らなかった。ええ、そうでしょうね。何故なら聖女の心の傷が癒えるまで保護していた我々に、何の相談もなく王族と貴族を招集して翌日にはこの場に引きずりだしたのですから。


知りようがないでしょうね。貴方には。


そもそもバックス伯爵が聖女の目の前で、よりにもよって”馬車”で孤児を轢いたのがそもそもの始まりでしょう』》





言ってない。確かに言っていない...。


そして、私も聞いてない。私も陛下は知らないと思ってた...うぅ...。


知ってたらもう少し私の心労は軽かった...かも?


思わず近くにいたフィリップさんの手の甲をつねる。


「.........エレオノーラ嬢や殿下からお聞きになっていると思ったのです...。お許しを」


こちらを向いて両手で私の手を包んで誠意を持って謝られたら...怒れない。


「フィリップさんは、ずるいです...」


照れて陛下の後ろ姿に再び視線を戻す。


「召喚の儀を行うことと、聖女の保護に関してわたくしは”共謀”したと言ったつもりでしてよ。


あと、離れなさい...(小声)」


「聖女を招いたことはワシも報告を貰っておった。みさと殿とはもう一緒に食事をする仲だ。


よって、王家そのものが聖女の後ろ盾になって保護しておる。


確かに心の傷を心配してお主等貴族たちには黙っておったが、時機を見て顔見せする予定であった。


よもや子供を轢いて、聖女に危害を加えようとするとは...」


「だ、騙したな…。カスパール殿下もランギエールの小僧も!騙したな!このような姑息な手段でわた...」


「往生際が悪いようですな。バックス殿」


「?!......サンチェス殿...?なにを...?」


バックス伯爵を糾弾し始めたのはこれまで黙って見ていた王弟のヴィクター・ド・サンチェス公爵だった。


「お主のせいで王族はもちろん、聖女と貴族にどれだけ迷惑が掛かったと思っておる。


全く、皆に話さねばならぬ重要な話だというから聞いておったが、裏も取れておらぬ与太話であったではないか。


もういい、これ以上醜態を晒す前に罪状をはっきりさせてお開きよ。よろしいですかな?陛下?」


「......はぁ...ああ、そうじゃな。今、こやつに付き合う時間が勿体無い。


大した証拠もなく己の利益を優先し聖女に多大なる心労を与えた罪、王太子にあらぬ嫌疑を掛けた不敬罪、これは特に重く罰せねばならんが民を馬車で轢いた罪、すぐに治療を行わなかった等...


宰相らに相応の罰を用意させるゆえ、疾く去るがいい」


今、心労で言うならロバートさんが一番ダメージを与えています...なんて言えなかったが、一旦一安心かも知れない...。


「ご、誤解なのです陛下!サンチェス公爵!こんなはなs」


「衛兵!この者を連れていけ!全く、貴族の風上にも置けんわ」


ヴィクターさんがバックス伯爵の言葉を遮って衛兵に連行を命じた。


最後まで喚いていたが連れていかれてしまった。


私に話しかけようとしようとする貴族もちらほらいたが、聖女は疲れているので遠慮しろという陛下の鶴の一声で、集まった貴族は各々退出していった。


最後に私を見定める様に見ていたヴィクターさんが微笑みながら私に会釈して退出したのをきっかけに、王家が使用する休憩室に場所を移した。


ヴィクターさんは糾弾する側だと思っていたし、最後の振る舞いは意外だった。


カスパール殿下と血がつながっているのもあって、笑顔は似ているが根底は違う気がして不思議な感じだ。




「ちょっと、王妃とシルヴァ夫妻を呼んでくるから待っておれ」と陛下に言われて、やっと一息付けた気がする。


「みさと様、もっと貴方の負担にならぬように事を進める予定だったのですが、私の力不足でこのような事になってしまい申し訳ございません」


「ちょっと!なんでわたくしが対面でフィリップ様がみさとの隣に座るのよ!殿下!放してください!」


「エレオノーラ、僕は婚約者なのだから君くらいは僕の隣に座ってくれないと寂しいよ」


エレオノーラの隣で相変わらずニコニコしているカスパール殿下は、エレオノーラが立ち上がろうとするのをやんわり止める。


「ん!...うっ......ん~!...分かりましたわ...」


好きな人に隣に座っていて欲しいと言われて素直じゃないエレオノーラはモジモジしていた。


さっきまでのエレオノーラはまるで主人公を虐める悪役令嬢のようだったが、その面影は既に無い。


「いいえ、お三方と陛下やヘンリーさんには助けていただきました。何も返せるものがないのが...あれなんですけど...はい...」


「不甲斐ないかとは思いますがこれからも傍にいるときも、そうでないときも私たちが守ります。ご安心を」


シルバーの髪から覗くクールな雰囲気を醸し出す鋭い目元に優しい色が乗る。

眼鏡も似合いそうだし、剣の心得があるって言ってただけあって筋肉も実はすごかった...。


お姫様抱っこしてもらった時に睡魔に襲われながら堪能してしまった。


無意識に隣に座るフィリップさんの腕に触れて、優しい目を見つめ返した。


「とっても頼りになります。けど無理なさらないでくださいね?私にできることなら、癒しの力も合わせてなんでもしますから...ね?」


「.........はい、肝に銘じます...」


そう言って目元を反対の手で覆って「あ~...はぁ...」とため息をついて固まってしまったフィリップさん。


カスパール殿下とエレオノーラは陛下たちが戻ってくるまで、フィリップさん様子をからかい続けたのだった。


みさと視点ではこの様になっていますが、もしかしたら読者の中には疑問点が残っているのではないでしょうか?


次回はフィリップ視点でこの事件の背景や、フィリップから見たみさとは?など書けたらと思っています。


単純に私の技術不足で疑問点が生まれている可能性もありますが、こちらも続けて読んで貰えたら少し解消されると思います。


ここまでは、あくまでもみさと視点では...なんですよね。


カスパール殿下やフィリップさんの真の動き、エレオノーラの献身、陛下の思惑、アルマのスリーサイズ、が明かされるかもしれません。


出来るだけサクッと読める様にしたいのですが、第二章の最後なのでいい感じに締めれたらなと思います。


第三章も書きたいことは決まっているので詳細は次回のお楽しみという事で長くなりました。


次回!『フィリップ・ド・ランギエール』。次回もお楽しみに!


続き気になると思っていただけたらお気軽に☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっとよろしくお願いいたします。

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