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11.詰めが甘いのではなくて?

「ふふ...っくく......お待ちになって。是非を問う前に皆様にきちんと聖女様を紹介するべきではなくて?」


そのあとをフィリップさんが引き継ぐ。


「聖女様は既に癒しの力を行使できるほど力を制御されています。


しかし、元の世界では異能の力、そのせいで孤立されていました。そんな聖女様をエレオノーラ様はずっと心配されていました」


まるで私が元の世界に居た頃から癒しの力が使えたかのように語るフィリップさん。


「そ、そんな話は聞いてませんぞ!なにを」


「当たり前でしょう...。誰の話をしていると思っているのです?


魔術院を若干十四歳で統括した天才魔術師エレオノーラ・ド・シルヴァですよ?


たったお一人で召喚の儀を行える程規格外の魔術師が、聖女かも知れないお人を既に補足していてもなんら不思議ではないでしょう。


その事実を、貴方も言っていた様に”戦時中”でも無いのに公表する必要がありますか?


大体、一々貴方が理解できるように全て話していたら、それだけで日が暮れるでしょう?」


「な!な!貴様!あまりに礼儀が」


「わたくしは聖女様...いえ、わたくしの大切な家族、みさとから沢山の事を学びました。


彼女は魔術がない異世界にいるにも関わらず、わたくしが魔術の師として師事出来るほどの知識を持っていました。


わたくしが間違った事をしたとき、周りの誰も叱ってくれなかった中で、みさとだけはわたくしを本気で怒ってくれました」


もしかしてサブカルチャーから丸パクリしたアドバイスのことを言ってる?


そしてエレオノーラがあまりにもクソガキだったので、理論武装して叱りつけて泣かせた昔のことを言ってる?


「聖女様の身内の方はこの世界で言う、馬車の事故で亡くなられています。それから聖女様は勉学に励みながらご自身で生活費を稼がれていたようです」


凄く大げさに誇張されてる...フィリップさんもエレオノーラもどうするつもりなんだろう...?


カスパール殿下は完全に二人に任せて事の成り行きを黙って見守っているし...。


「つまりは聖女と言っても平民の出という事だろう!それが何だというのだ!」


「.........私達、貴族には想像が付きませんね。後ろ盾もなく、自身の持っている力で孤立し、毎日寝る間を惜しんで労働に身を置いて身を削っていく。


そのなかでもエレオノーラ様をこの国一番の魔術師に育て上げるほどの才覚を腐らせなかったお方。


余りに放っておくには惜しいと思いませんか?」


段々と貴族たちが騒がしくなっていく。声を聞いているとやはりエレオノーラが師事していたと言うのが衝撃だったらしい。


「だからこの世界に招いたと!?やはり何か企てを」


「いい加減にしてくれないかしら?」


扇子で自身の手の平を叩いてバックス伯爵の言葉を遮るエレオノーラ。

先ほどからフィリップさんもエレオノーラも、もはやバックス伯爵など眼中に入れていない。


「企てなどないわ...。元の世界にみさとを受け入れてくれる場所はなかった。血の繋がらない仮初の両親から虐げられて、みさとは家すら失ったわ。


この国にとって聖女は確かに戦いの象徴であり、修練を積めばたった一人で一師団位であれば癒しの力を掛け続けながら戦わせることが出来るほど規格外の力を持っているわ。


けれど、聖女は癒しと平和をもたらす象徴でもあるのよ。

聖女が健やかに日々を過ごし、慈悲深くわたくし達に寄り添ってくれるのなら、わたくし達とこの国の民にとって、これほどの恵みは無いのだわ」


「淑女一人、雨風を凌げる家も無く、外に放り出された限りなくほぼ確実に聖女である彼女を誰が見捨てられますか?


貴族議会の承認を待っている間に不埒者に襲われたら...。


未来の王妃がそれを見殺しにするような恥知らずならば...いえ、民を守る責務を第一に考える一人の貴族として、エレオノーラ様は最善の行動をとったまでかと思います」


貴族たちはここでやっと何故聖女が自分たちのあずかり知らぬ所で召喚されたのか、納得がいった様子だった。


二人の説明にはかなり脚色と、後付けの言い訳が入り込んでいる。

私は自分で家出したわけだし...。


けれどそれらを上手く織り交ぜてこちらの有利に運ぶようにこの場を制圧していく。


「い、隠匿していた理由にはならんはないか!そうやって同情を誘い!我々を誑かそうとするなどと!」


バックス伯爵も後には引けないからか声高々に糾弾する。


「.........家を無くし、頼れる人も居ない、明日のご飯すら不安に思わなくてはならない状況で、異世界に招かれて正常な精神状態で居られる程、貴方の心は強靭なのかしら?


時間を置いてここが聖女の平穏を脅かす場所ではないと...理解してもらう時間が必要だとは思わないかしら?


今この時だって、こんな衆人環視の中にみさとを居させたくないのよ...わたくしは。


だれが、この場にみさとを引き釣り出したの?


ねえ?教えてくださらないかしら?バックス伯爵様?」


貴族たちの視線は最早私達ではなく、バックス伯爵に集まっている。


「知らなかった...知らなかったのだから仕方ないだろ!?精神的に不安定など知らぬ!大体!陛下にも報告していないのは一体どう言い訳するのだ!」


「知らなかった。ええ、そうでしょうね。何故なら聖女の心の傷が癒えるまで保護していた我々に、何の相談もなく王族と貴族を招集して翌日にはこの場に引きずりだしたのですから。


知りようがないでしょうね。貴方には。


そもそもバックス伯爵が聖女の目の前で、よりにもよって”馬車”で孤児を轢いたのがそもそもの始まりでしょう」


貴族たちはフィリップさんのこの発言で一気に騒がしくなる。


“その様な話は聞いていないぞ”


“なんという...”


“あまりに惨い...”


「た、たかが孤児一人!何だというのだ!今はその様な話ではない!」


「いいえ、孤児は聖女様の癒しの力で一命を取り留めましたが、バックス伯爵はあろうことかその場で聖女を連れて去ろうとしました。


白く輝く髪と瞳で聖女だと感づいた貴方が聖女様に手を伸ばしていたのを止めたのは私です。


孤児を助けてくれた事にホッとするでもなく、礼を述べるでもなく、身体に触れようとした。


一体どちらが聖女を”利用”しようとしたのでしょうね?」


「っ!......それは...ほ、保護しようと...」


バックス伯爵の声に勢いは既に無かった。


貴族たちは黙ってバックス伯爵を見ている。


沈黙がこの場を支配する。


「ここまでですね」


静寂を破ったのは意外にもルシウスさん、現宰相でフィリップさんのお兄さんだった。


「陛下に相談役、もう出てきてください。遅刻を装う言い訳を色々考えましたが全て無駄に終わりました」


ルシウスさんが段差の上、玉座のある場所から舞台袖に向かって話しかける。


貴族たちが一斉に膝をついてこうべを垂れる。


エレオノーラ達は腰を曲げて頭を下げている。私も慌ててエレオノーラに倣う。


「なんじゃ、終わりか。では裁定を下さなければな」


舞台袖から玉座に向かって歩く足音と、その言葉を聞いた瞬間、私はある事実に気が付いて思わず愕然とした。


う、うそ...そんな訳ない。嘘だ、勘違いだ!頭を上げそうになるのを必死で我慢しながら、私は心の中で絶叫した。


フィリップとエレオノーラのタッグは案外いいコンビネーションしているかもしれません。


淑女の皮を被った?エレオノーラはいかがでしたでしょうか?


被れているか、いや漏れ出てるぞと思うか気になるところです。


続き気になると思っていただけたらお気軽に☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっとよろしくお願いいたします。

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