10.糾弾されて火に油を注ぐエレオノーラ
「カスパール殿下とその側近であるフィリップ殿は、そこにおられる聖女を我々貴族に隠していた疑惑がございます。
現在、我が国ローエンベルク王国は戦時中ではございません。聖女様を無理やり異世界からお呼びする理由はございません。
では、何故聖女様がおられるのか...聖女様を利用して何をなさるおつもりだったのですかな?」
こちらが何かすること前提で話を進めている。恐らく、なぜ?、どうして?など元々明らかにするつもりなど無く、糾弾して蹴落としたいだけなのかもしれない...。
「発言の許可を頂けますか?宰相殿」
「許可します、フィリップ・ド・ランギエール殿」
一歩進み出てフィリップさんは発言の許可を求める。
心配で顔を伺ったけれど、只まっすぐ前を見つめるフィリップさんの横顔しか見えなかった。
「確かにこちらにおられるのは聖女様で間違いありません。彼女は聖女として非常に優れたの能力を持っており、とても慈悲深く、清廉なお方です。
まさに聖女として今日、この場で皆様にこうしてご紹介できるのを私は誇りに思います」
世辞!世辞だって分かってるけどちょっと身体がモゾモゾするような気恥ずかしさを感じる。
やめてエレオノーラ。隠れて指先でツンツンしないで。
「聖女だとお認めになられるのですね...?聖女様は本来我が国の民、領地、危険な魔術の知識を守る為のある意味最終手段。
それを戦時中でもないのに...政に引っ張ってくるなど...なにか企んでいるとしか思えませんな!」
“確かに今は戦時中では...”
“そもそも召喚術には大量の魔力が...”
“カスパール殿下は聖女をどうするおつもりなのか...”
色んな声が貴族たちから漏れ出るのが聞こえる。
そもそもこの場に無理やり引っ張ってきたのはバックスさん...バックス伯爵じゃないか!
どの口が言うんだ!パッションと口車でこの場の雰囲気を掌握しつつあるバックス伯爵に、だんだん腹が立ってきた。
「......」
「そもそも、その聖女様の召喚には議会の承認と陛下の承認のどちらも必要なはず、少なくとも我々貴族は承認した覚えはございません。
召喚に必要な魔術師たちを集めた話も聞きませんし...もしや今回の聖女様はこの世界の住民なのでは?」
「宰相様、エレオノーラ・ド・シルヴァ、発言の許可を」
「許可します」
一歩前に出て優雅にカーテシーをした後、いつもの溌溂とした雰囲気はなりを潜め、この場広い謁見の場であってもよく通る声と優雅で堂々とした雰囲気で話し始めた。
「今回の聖女様、みさと様はこの世界の住人ではございませんわ。
わたくし、エレオノーラ・ド・シルヴァがカスパール殿下とフィリップ様と共謀してこの世界に招きました。
魔力はわたくし一人で十分賄えましたわ......それがなにか?」
え?開き直った?え、エレオノーラ?
貴族に動揺が広がっていくのを感じる。
貴族側から「え、エレオノーラ!なにを言っておるのだ!」、「ああ、あなた...」って聞こえた。
エレオノーラの親御さんかも知れない...。やばい。
そりゃあ、本来自分たちの許可無く行われる事のない召喚の儀を勝手に行った挙句、糾弾されている側が開き直ったのだから動揺するよね...。
ちょっと忘れてたけどエレオノーラって根は悪役令嬢な所あるから......このままじゃまずいのでは?
「も、問題大ありでしょう!?この国の次期王妃としての自覚はあるのですか!?
いくら宮廷魔術師と言えど勝手が過ぎますぞ!」
「......」
エレオノーラはバックス伯爵を無表情で見つめてる。凄い...雰囲気は淑女だ...。
「っ!......もはやカスパール殿下もフィリップ殿もシルヴァの姫君も罪を認めたも同然!
聖女様を無断でこの世界に招き、隠匿して自分たちの企てに利用するつもりだったに違いない!
このような勝手がまかり通っていいはずがない!この場で皆様に是非を問いたい!」
“まさか、王太子殿下が聖女の力を利用して...?”
“癒しの力をもし好きに扱えるとしたら確かに...”
“宮廷魔術師までもが共謀していたとなれば魔術院は...”
“第二王子殿は今留学中、もしやそれを狙って...”
「私からみてもここまでの話、元王族として看過できませんな。よもや勝手に聖女様を招いておきながら、報告せずに隠匿し何も企んでいないとは信じられない。
バックス殿からこの国の”今後”に関わる一大事と聞いたときは大げさな...と思ったが...」
ま、待って!
王弟であるサンチェス公爵までもが甥であるカスパール殿下と私達を疑いの目で見始めたのを感じたとき、私はそう言おうとした。
私はここ数週間楽しかった。今までまともに遊んだことも無いし、大切にされたのも久しぶりだった。
彼らは私に聖女として何かを強制することもなく、ただエレオノーラの家族として大切に扱ってくれた。
正直少しくらい自分を利用しても良いとすら思っていた。ただ、優しくされるのに慣れていなかったから...。
私が知らないだけ?ううん、彼らは私を利用して悪さをする人じゃない!
私の大切な人たちが......窮地に立たされて......。
けど何も言えなかった。
約束した。黙っていると、信じるべきだ。
私を家族だって言ってくれたエレオノーラと、その大切な人たちを。
胸の前で握り締めている手に力がこもる。
「ふふ...っくく......お待ちになって。是非を問う前に皆様にきちんと聖女様を紹介するべきではなくて?」
あまりに場違いな、さもおかしな茶番に我慢できなくなったみたいに笑うエレオノーラに、私はギョッとした。
思わずエレオノーラを見やると口元を三日月に歪めて笑うエレオノーラが見える。
「悪役令嬢......」
私は思わずそう呟いた。
本来貴族の代表が集まる場に夫人は参加しませんが、今回シルヴァの姫君...エレオノーラが糾弾される側と言うのもあって過保護な夫人は無理やり当主でもある旦那さんに付いて行きました。
後ほど出番もあるかと思いますが、みさとはこの事実を察する知識がまだないため一応ここに記しておきます。
まあ、そんなに重要な事ではありません(笑)
は~なる~ほえ~くらいに受け取ってください。
次回、炎上するのは得意ですわ!デュエルスタンバイ!嘘です。
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