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7.腕の中のぬくもり

イースを轢いた馬車はそのまま止まらず過ぎ去ろうとしていた。私にはどうする事も出来ない、それに今はイースの方が優先だ。


私の意を汲んでくれくれたのか分からないが、どこからか現れたアルマが止まらない馬車の車輪を破壊して物理的に馬車を止めた。


石畳を横滑りしてクラッシュする馬車を横目にイースの元へ急ぐ。


私がイースの元へたどり着いた瞬間、横転した馬車から這い出て騒いでる人がいる。


「なんだ!この無礼者が!!!ワシを誰だと思っている!」


どうでもいい。


「イース?聞こえる?イース?」


外傷は...言うまでもなく酷かった。あの小さな体で馬車の突進を受け止めたら外傷だけでなく骨も内臓も無事ではすまないないだろう。


息も浅く、顔は青白くなりぐったりしている。石畳を染めるイースの血がドンドン広がっていく。


聖女の力を使えば...。


「おい!小娘!それはお前の連れか!馬車の前に出てくるから悪いんだ!...おい!聞いてるのか!」


一瞬だけ、私を利用しようとする権力者からエレオノーラやカスパール殿下、フィリップさんが私を守る為にここ数週間動いてくれているのを台無しにするかもしれないと思った。


じゃあ、ここでイースを見殺しにするか。


それはない、イースには後できちんとお説教しなければならないけれど救えるかも知れない命を見捨てるなんて出来ない。


聖女の力を使ってイースを癒す。

白い光が私とイースを包み込む。


「大丈夫、お姉さんが絶対助けるからね」


エレオノーラに初めて使った時とは比べ物にならないほど身体が重くなるのを感じる。


実際に傷を癒して魔力を消費しているからだろう。


でも、気を失うほどじゃない。最悪気を失ってもいい。


視界に移る私の髪は白く、イースの頬には赤みが戻っていく。


どう見てももう歩けない脚や変色した肌が瞬く間に戻っていく。もう少し...もう少し。


持てる限界まで魔力をイースに集中させる。


すると突然イースが咳き込むと目を開けた。

苦し気な表情だったのがリラックスした表情でされるがままになっている。


良かった...間に合った。

カスパール殿下からは一度死んだ者は聖女の力でも息を吹き返さないと言われていたが間に合ったようだ。


「聖女か...?まさかこんなところに!カカ!おい!小娘!ワシと一緒に来い!」


そこで初めて近くで騒いでる人に目を向けた。


身なりのいい格好をした中年の男性は足音を鳴らしながらこちらに向かってくる。


「なんだなんだ、ワシは運がいい。一体全体どうしてこんなところに聖女が...。まあいい、これを利用できればワシは...カカカ!」


ああ、あの保護者と同じ目だ...。


まだ動けないイースをギュッと抱きしめてどうすればいいか考える。


私もイースも動けないし頼れる人は先ほど置いてきてしまった。


エレオノーラを呼ぼうにもこちらの世界に来てからお役目ごめんと言わんばかりに無線機能は無くなってしまった。


なんとかイースだけでもと思ったが、シスターたちも気が動転しているのか動けないでいる。


あ~やばい。これはまずいかも...。


目の前までやってきた貴族らしき男は私に手を伸ばす。


「言い伝え通り白い髪、間違いないな!カカ!」


「それ以上その方に近づかないでいただけますか?」


突然、私と男の手の間に鋼色に輝く剣身が横入りする。


「この方は私共の保護下にあります。いくら貴族と言えど許可なく触れないでいただきたい。オスカー・ド・バックス卿」


私を庇うように剣を抜いて貴族...バックス卿から庇ってくれたのは...フィリップさんだった。


「あ?貴様誰に剣を抜いていると...?お前!ランギエールの次男坊か!


保護下ぁ...?保護下にあるじゃと?貴様!聖女を秘匿していたな!秘匿していた上にこの世界でも聖女が現れると言う重要な事実をも隠していたことになるんじゃぞ?分かっておるのか?


今なら、ワシがここで保護したことにしておぬしが身を引けば、ワシはおぬしの名を出さんと約束しようではないか。なあ、ランギエールの」


ああ、エレオノーラが関わってるって知らないから私、現地民だと思われてる。


色んな意味でまずい...。フィリップさんも完全に巻き込んでしまったし...。


急に隣から肩を抱くようにして引き寄せられる。


そっと私とイースの隣に座り込んで私達を抱きこんだのはアルマだった。


「みさと様、今はフィリップ様にお任せしましょう。あのお方はカスパール殿下の右腕、きっとこの様な場面も華麗に切り抜けられるでしょう」


内緒話するように私に囁いたアルマは自分にもたれ掛かる様に促すとトントンと私の背中をなでる。


ああ~やばい状況は変わらないけど...良い匂い。これではエレオノーラをバカにできない...。


「それは出来ない相談ですバックス卿。言ったはずです、”保護下”にあると。あなたの手を煩わせることはありません」


「いやいや、幾ら王太子の側近と言っても...ランギエール家の”次男坊”、現宰相で次期当主の兄君や陛下は御存じなのですかな?


おやおや、貴族である私共が知らないという事は...お知らせになっておられない?」


「...」


「その様子ですとカスパール王太子殿下は知っていらっしゃるのですかな?王太子ともあろうお方が陛下や宰相、貴族に黙って聖女を秘匿していた...と。


カカカ、これはこれはおかしなこともあるものですな~」


「そろそろ失礼しても?これでもランギエール家の”次男坊”、王太子の側近ですので用事が詰まっておりまして。さあ、参りましょう」


「後悔することになりますぞ!このことはすぐに私から陛下や忠臣なる貴族たちに報告させていただきますからな!」


フィリップさんは完全無視を決め込むと私を抱き上げようとするので慌ててしまったが...。


「大人しくなさってください。リスクを負ったのです、これ位の役得は無くてはね」


私を横抱きに...いわゆるお姫様抱っこするのはただ重いだけだと思うのだが、足に力が入らない為大人しくするしかない。


「...すいません。大人しくしてます...」


イースはアルマに抱きかかえられている。どうやらここに置いていくようなことはしないらしい。よかった。置いていったらあの人に何をされるか分からない。


「このまま馬車に戻ります。カスパール殿下たちは一旦隠れて帰ってもらいました。突貫しそうなエレオノーラ嬢を殿下に抑えてもらっていたのですが、大変そうでした」


「あの...、聖女の力使ってしまいました。すいません...」


後悔はしていないけれど迷惑をかけてしまったことに関してはきちんと謝らないと、そう思って言ったのだが。


「ふふっ。いえいえ、大丈夫ですよ。これでもランギエール家の”次男坊”、王太子の側近ですので多少予定が早まっただけに過ぎません。安心してください。


それより、美しい魔術の行使でした。少女を救ったのです、もう少し自慢気になられてもいいのですよ?」


偶々自分に備わった力で傷を癒しただけだ...。

凄いのは私を呼んだエレオノーラだろうし、きっと殆どの人が同じようにする...と思う。


なんだかやばそうな貴族に殿下たちが聖女を隠している事実がばれてバレて、フィリップさんに助けられてホッとしたのもつかの間、こうしてお姫様抱っこして貰って町中を歩いてる。


この先の事を思うと気が重いけれど、フィリップさんの腕の中だからか、すぐ気が緩んでしまう気がする。


ああ、眠ってしまいそう...。


皆さんはweb小説をパソコンで読みますか?スマホで読みますか?


私は布団で横になりながらスマホで読む派なので今回から行間にスペースを多めに入れています。


始めから入れた方が良かったかもしれませんね。読みずらいとコメントを貰ったら戻すかもしれません。


次回、ちゃんと右見て左見てもう一度右を見なきゃだめよ?


続き気になると思っていただけたらお気軽に☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっとよろしくお願いいたします。

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