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5.お忍びのお出かけ準備ですわ!


「さあ!いくわよ!みさと!」


私とアルマが朝の部屋清掃をしているとエレオノーラがやってきた。

日に日に遠慮が無くなって...いると言うより、声だけでコミュニケーションを取っていた時も同じようなに絡まれていた気がするので、ノリが戻ってきたと言うべきか...。


「まだ、朝食前だよエレオノーラ。朝食は食べた?」


「まだね!食べたら着替えましょう、みさと」


イルマを見やると軽く頭を下げられる。ああ、止めはしたのね。いいのよ、貴方は悪くない。


朝食を四人で食べて私はエレオノーラに言われた通り着替える。


「今日はお忍びよ。商家の令嬢子息くらいに見える様に服装と髪色を変えなきゃね」

エレオノーラはそう言って手を叩くとイルマとアルマが何着か服をてきぱきと持ってくる。

私を着せ替え人形にしながらああでもない、これでもないと言いながら服を選んでいると公爵令嬢ではなく本当に普通の年頃の娘のようだ。


「私はみさとの黒髪をそのまま着飾りたいんだけど、この国では黒髪はとても珍しいの。だから魔術で珍しくない茶髪あたりに変えるわね」


私は髪を染めたことが無いのでこれはもしや初めての”カラーリング”なのでは?!


「私、髪を染めるのは初めてだな~!」


「わたくしもよくイルマとアルマの服を買いに行くときは髪を黒に染めて、肌の色も寄せるのよ。そうすると軟派な男はすぐイルマに群がるわ。

この柔らかな雰囲気に騙されて...可哀そうに...。

そもそも、この二人はわたくしが言わないと休みすら取らないから主人として本当に手間がかかるのだわ!」


きっと二人ともエレオノーラと買い物に行きたいけれど、侍女としてはそれは言い出せないだけだろう。

エレオノーラも本気で怒ってないのが態度に出てるし、本当に仲がいい主人と侍女だ。


「今度私女子会をやってみたいな!女子だけで買い物とかスイーツとか行ったことなくて、アルマもイルマも一緒に、ね?

私だけ顔つきが地味だから浮いちゃいそう...だけど。なはは~」


「???、みさとは早くその自己評価を改めないと後々大変よ。アルマ、きちんと見ていなさいね」


よくわからない指示をアルマに出して、エレオノーラはため息をついていた。





「エレオノーラ!にみさと様、お迎えに上がりました」


カスパール殿下とフィリップさんが離宮の玄関で私たちを待っていてくれた。


「すいません、待たせてしまいましたか?」


「...っ!!」


エレオノーラは自身の服を「イルマ、それらしいのお願い」とだけ言ってから、持ってきた服にパパっと着替えてしまった。

それから私の服や小物、靴等選ぶのにやたら時間を掛けていてかなりギリギリになってしまった。

普通、悪役令嬢なら自分に時間を掛けないかな?普通。

けれど楽しそうにしていたので、やっぱり元々面倒見がいい方なのかもしれない。


今日はカスパール殿下もフィリップさんも佩剣(はいけん)していた。

出来るエリート騎士の休日のような風貌だ。

とても似合っているし、かっこいい。

思わず手を口に添えて二人をぼーっと観察してしまう。


「いえ、大丈夫ですよ。時間どおりです。


エレオノーラ...、貴女のそのワンピースドレス、プレゼントした金色に合う薔薇のドレスの美しさには異なる美しさを持っていますね。淡い色調が貴女に清らかな魅力を与え、それがこの王都に新たな風をもたらしているように感じます」


「イルマのチョイスですわ。それでもうれしいですわ、殿下」


やっぱりエレオノーラは褒められ慣れているし、カスパール殿下は褒め慣れている。

美男美女のそんな絡みを眺めていると、少し顔を赤らめたフィリップさんにそっと手を取られる。


「??!?」


「みさと嬢、雪のように清らかで、まるで天使のような美しさを引き立てています。私の知る中でも最も魅力的なものをたった今見つけたような気がします」


そう言って私の手の甲に口づけを...


「っか、、あ、フィリップさん...ちょ、ちょっと...」


恥ずかしすぎて顔を、目元を隠したいけれど施してもらった化粧が崩れてしまうためそれが出来ない。


「”あの”フィリップが...なぁ~」


「女性を褒められたんですねフィリップ様って」


私は馬車に手を引かれて行く途中、フィリップさんと手をつないでいた。

なんだか心が浮つくのだ。

カスパール殿下だって紳士にエレオノーラを褒めていたではないか。

きっと同じなのだ、スマートにああやって女性を褒められるのがきっと殿下の側近なのだ。


分かってはいるんだけど心が浮ついて仕方ない。


「足元に気を付けてくださいね」


「...(コクコク)」


馬車に乗り込む際に足場を登りきるまできちんと支えてくれた。


「男性はそっち側、女性はこっちよ。まだ隣を座らせる許可は出せないわ」


エレオノーラは私の隣を素早く占領するとまるで上書きするように手を握ってくる。


「こんなに人にべたべたしているエレオノーラ嬢を見るのも初めてですが、他の目があるときは気を付けてくださいね。頼みますよ」


「私に文句が言えるなんてフィリップ様と後ほんの少ししかいないわ。それに殿下の婚約者として聖女と仲良くするのはいい評判でなくて?

カスパール殿下も納得されているわ」


「諦めているだけですよ」


「フィリップ、もし何かあったら頼んだよ」


「面倒事が起こる前提で動く上に人に丸投げなさるのですか。ダメですよ、いざとなれば肉壁にもなりますが、エレオノーラ嬢関連の出来事はきちんと殿下に動いていただきます」


三人はいわば幼馴染。


人の目がない時は立場や爵位を超えて割と騒がしい。


「護衛の方はそこまで多くないのですね」


気になっていたことを聞いてみた。

馬車の窓から外を見やると御者と数人の騎士しか居ないので不思議に思ったのだ。


「うん、エレオノーラもいるし何よりフィリップもいるしね」


「アルマとイルマも影で動いてるわ。何か仕掛けようとしてもまず二人の検閲を通らないといけないから実際に刺客を見るのは珍しいわ」


「今回はお忍びですので通達も殆ど行っていません。執務室に出向いても殿下は二日酔い、私は日帰りの出張、エレオノーラ嬢は魔術の研究かなにかしてる事になってます」


「僕、それ聞いてないよ」


「仮病を使うと医師を勝手に呼んでしまう人が一定数いますので」


そんな話をだらだらしていたら目的の孤児院に着いたようだった。

教会を兼ねた建物の前にシスターらしい人たちが頭を下げて待機している。


「僕とフィリップは護衛、エレオノーラはいつも通り慰問訪問、みさと様はエレオノーラの親戚で各々動こう。

それとみさと様にはフィリップを付けますが、護衛に様付けは少々違和感を感じますので呼び捨てでお願いしますね。

行こうか、エレオノーラ」


「今だけ特別ですわよフィリップ。今だけですわ」


え?なんかとんでもない事をさらっと言われなかった?いいの?


ついにお出かけ開始。


次回は孤児院でのエレオノーラやみさとの様子が書けたらと思っています。


続き気になると思っていただけたらお気軽に☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっとよろしくお願いいたします。

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