3.巻き込めば同罪。赤信号、皆で渡れば怖くない
「そ、そこで何をされているのですか...?」
恐る恐る顔を上げるとそこには顔を引きつらせて真っ青にしたフィリップさんがこちらを見ていた...。
私とアルマ、ロバートさんにヘンリーさんと談笑しながらプロメニフィーアを植えているとフィリップさんに見つかってしまった。
「なにをされているのですか、せいz「あ!フィリップさん!こんにちは!いいお天気ですね。気分転換なされに来たのですか?いいところに来ましたね!実はこのプロメニフィーアを植えている所なのです!」
ロバートさんもヘンリーさんも私が聖女だと知らずに接してくれたのだ。
ここでダイナマイト級のネタばらしするわけには行かない。
「はぁ...。そr「それでですね!実は人手が足りなくてですね!手伝っていただけませんか?あ、こちら庭師のロバートさんにヘンリーさんです。
そしてこちらは...アルマさんの主人のご友人であるフィリップさんです」
そう言って鉢植えを手渡す。
手渡すとき、
「ごめんなさい話を合わせていただけませんでしょうか?本当にごめんなさい」と付け加えるのを忘れない。
「プロメニフィーア...」
「知ってるんですねフィリップさん!凄いです!」
「いえ、我が家にも咲いているので偶々知っていただけです」
「ほほほ、とてもいい趣味をしていらっしゃるのですな!なあ、ヘンリー」
「ええ、四季で花弁の色が変わるので手入れも景観を整えるのも大変ですが、とても美しいので一角には欠かせない花ですからな~」
「はい...そうですね...。我が家に植えた人も同じ事を言っておいででした...」
そうして始まった五人での作業。
私は作業の合間にフィリップさんに近づいて小声で謝る。
「ごめんなさい、フィリップさん。政務の息抜きでいらしたんですよね...?服も汚れてしまうし、なんてお詫びすればいいか...本当にごめんなさい...」
高そうな服を着て土いじりをしているフィリップさん...。
私も高そうなメイド服を着てはいるがレベルが違う...。
「いえ、お気になさらず。アルマからこちらに居ると伺ってみさと嬢...ミサさんの様子を見に来たのですがまさか土いじりをしているとは露にも思わず...」
どうやらアルマがきちんと私の事を報告していたらしい。
着替えを取りに行ったときかな?
「アルマを怒らないであげてくださいね。私が無茶を言ったんです。私が暇でしょうがなくてジッとできなくて...」
「ふっふふ。大丈夫ですよ。殿下も私も把握済みです。殿下も来たがっていたのですが窓から見るのに留めて私が来たのです」
心配してきてくれたのかな?ここ数日フィリップさんとも沢山話した。
クールな雰囲気とは裏腹に優しくて気遣いのできるイケメンだ。
きっとモテるんだろうな。
「そうなんですね...よかったです。けどフィリップさんも土いじりに巻き込んでしまって...」
「いえ、実家でもたまに手伝うくらいには私は花が好きなので楽しんでいます。それにこうしてミサさんと二人で話す機会にもめぐり合って、今日はツイています」
そうしてフィリップさんは微笑んでこちらを見やるとハンカチで私の汗を拭いてくれる。
急に恥ずかしくなって私はどうすればいいか分からず固まってしまう。
「フィリップ様、せめて一言断ってから淑女に触れて頂きたく思います」
アルマがそう言って追加の水を私に手渡すとフィリップさんとの間に入ってくれる。
「ほほほ、いいものが見れたかもしれんな~なあ、ヘンリー」
「ええ、誠にそうですな~」
容姿の手入れなどこれまで出来なかった私は勿論異性にこんな事されたことはない。
なんだか胸が熱くなってドキドキする鼓動に、「ああ、スマートな紳士は汗を拭いてくれるものなのか」と混乱した頭で無理やり納得するのだった。
しばらく作業に没頭して、時々フィリップさんと目が合ったり、そんな私たちをアルマが何か言いたげに見ていたりと以前の生活では考えられないような体験をしながら私は庭園での時間を過ごした。
「今日は助かった!助かった!いや〜よく手を洗って、筋肉痛になりそうならちゃんと冷やすんじゃぞ!
もし良かったらこれからも手が空いた時に手伝ってくれると、この枯れたジジイ二人も嬉しいぞ!なあ、ヘンリー!」
「ええ、特にフィリップ様は特に慣れておられた様子で頼もしいですからな〜麗しい女性二人にいい所を見せるチャンスですぞ。ははは」
途中お昼ご飯の休憩を挟んで私たちは作業をした。
因みにお昼ご飯は作りすぎたロバートさんとヘンリーさんのご飯を頂戴した。
アルマはもう、それはそれは辞退しようと必死だったが、二人が自分で握ったと言う握り飯を前に私は即答してありがたく頂いた。
聖女に出る食事に握り飯...おにぎりなんて出ないからこう言うのに少し飢えていたのだ。
心の中で虚空を見つめる様になってしまったアルマに謝りつつ、意外にも遠慮なしにフィリップさんはヘンリーさんから受け取ってからおにぎりを一緒に食べた。
「美味しいですね!フィリップさん!」と話しかけると、
「ええ、ミサさんはおにぎりの具で好きなのはなんですか?」なんて貴族らしくもない友達らしい会話が出来て私は大満足だった。
アルマもロバートさんから頂いたおにぎりを見つめて暫く固まっていたが、私とフィリップが勧めると一緒に食べてくれた。
ここらへんで流石にアルマにかなり迷惑を掛けている自覚があったので作業が終わり次第、流石に部屋に戻ることにしようと決めたのだ。
そんな昼休憩での出来事を思い出しながら私は「また来ます!アルマさんが許してくれれば!では、また!」なんてお別れすると、アルマとフィリップさんを連れて部屋に戻る。
「今日は二人ともありがとう。お礼になるか分からないけれど...、筋肉痛になるといけないからここで聖女の力を使おうと思うのだけれどいいかな?」
「...恐れ多いです、みさと様...」
「では、お願いしても良いですか?エレオノーラ嬢には内緒でお願いします」
アルマは断ると思っていたので半分無理やり癒しの力を使って癒した。
フィリップさんは...
「では、お手を...」
「はい、お願いします」
聖女の力を使うには身体に触れなくてはいけないのを忘れていた私は...まあ、有体に言って照れた。
仕方ない。こちらを優しい笑みで見つめてくるイケメンに経験値の足りない私がタジタジになるのは仕方ないのだ。
フィリップさんの両手を私の手で包んで先ほどアルマにしたように、エレオノーラにしたように癒しの力を使う。
「ど、どうでしょうか...?」
「光栄の至りです。しかし剣の修行で硬くなった手で触れてしまい、不快ではありませんでしたか?」
フィリップさんはカスパール殿下の側近兼護衛を務めているらしく、剣の腕が一流らしい。
そんな人がカスパール殿下から離れて私と一緒に土いじりなんてしていて良かったのか。
きちんと代わりの護衛を付けているらしいのでいいらしい。
「大事な友人を守るために努力なさった手なんですよね?不快に思う訳ないですよ。私の手の方が最近まで水仕事ばかり荒れていましたし、嫌じゃなかったですか...?」
カスパール殿下と同じ年で、幼い頃から側近として育てられたフィリップさんは色々な事を学んできたという。
それもカスパール殿下を支え、守るため。
私には想像もつかないような努力をしたに違いない。
「さあ?こうしてみさと嬢のお手に触れていると、聖女とは関係なく他の事が気にならなくなってしまいます」
心臓に悪い...。
恐らく貴族特有の世事であると思うのだけれど、私は元は異世界の一般市民なのだ。
心臓の音で他の音が聞こえない...。
「みさと嬢?」
いくら世辞でも照れるものは照れる。
混乱してフィリップさんの手も離せない。
こうして二人で話すのは珍しい。今日が初めてかもしれない。
フィリップさんは女性にはいつもこう接するのだろうか?
クールで落ち着いた雰囲気なのに軟派なのかな?
どうなのかな?どうなんだろう...?
「みさと嬢、暴れる牛を鎮めるのは得意でいらっしゃいますか?」
突然のフィリップさんの質問に私は少し冷静さを取り戻した。
「いえ、経験はありません。この世界では必須科目ですか?」
いや、取り戻せていないかもしれない。
「くっくく...。おっと、失礼...。ああ、続けていいよフィリップ。因みに僕はまだその科目を履修していない。これからも出来れば履修する機会はなければと思っているよ」
私は声がした方......部屋の入口を見やる。
私が気が付いていなかっただけなのか、そこには笑いを必死に堪えているカスパール殿下と完全に影を消しているアルマとイルマ、そして顔に不満を浮かべて腕を組んで仁王立ちするエレオノーラが居た。
「距離が・近く・なくて?」
そう言われてつい、手を離そうとするがフィリップさんに逆に手を引かれて握られる。
フィリップさんどうしちゃったの?この状況、私はどうすれば...?
エレオノーラのこれはやきもちです。
さらっとカスパールがみさとのメイド服姿を近くで見たように言ってましたがエレオノーラを焚きつけるためだった?どうでしょう。
自己肯定感の未だ低いみさとにはこれくらい押せ押せなフィリップにこれからも頑張っていただきたいですね。
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