5.悪役令嬢ですから、我儘を貫き通しますわ!
「そっか...私はもう、元の世界には帰れないんだね。そうだよね?エレオノーラ」
何となくだけど、そう感じたのだ。
カスパール殿下はまるで私がこの世界で暮らしていくことを前提で話しているし、エレオノーラも何かしらリスクを負って私を呼んだらしい。
もし私を元の世界に戻せるとしても、そう何度も連発出来る魔術でも事柄でもないのだろう。
エレオノーラが私から離れて居住まいを正す。
先ほどまでじゃれていたのが嘘だったのではないかと思うほど纏っている雰囲気の変化に驚く。
ふと、公爵令嬢で次期王妃なのだと再確認させられる。
「聖女様。恐縮至極ではございますが、私たちは勝手な行為により、聖女様をこちらの世界に招聘し、心よりお詫び申し上げます。どうぞ、お許しいただけますようお願い申し上げます。
召喚に関しまして、聖女様が元の世界に帰還する方法が存在しない事実をお伝え申し上げます。この点について、再度深くお詫び申し上げます」
そう言い切ったエレオノーラは深く頭を下げる。
「エレオノーラ...」
エレオノーラはどうやら私をこちらの世界に勝手に呼んだことをとても重く受け止めているようだった。
エレオノーラは務めて感情が表に出ないよう、淑女としての仮面を深くかぶる。
そっと顔を上げたエレオノーラはそのあとを続けた。
「わたくしはみさとがどれだけ便利で、飢餓や病気、戦争とは無縁な世界で育ってきたか話だけですが聞いていましたわ。
こちらの世界では今も誰かが飢えて、身売りや奴隷、紛争が堪えません。
ここ、ローエンベルク王国はその一切を禁止、取り締まりを行っていますが、事実全てを排除するには至っておりませんわ。
みさとはあまりわたくしに将来の事を語ってくれませんでしたわ。わたくしばかりいつも...。
もしかしたらみさとにも恋患う方が、将来の夢が...などと考えましたわ。
元の世界でしか叶えられない夢、それはもう叶いません。
わたくしがそういたしました。
わたくしを、いつかのみさとはこう表現しましたわ。
〝悪役令嬢〟
悪役令嬢は自分の我儘で周りを巻き込み、破滅する。
わたくしは破滅したくなくて、みさとに泣きつきました。
けれどその性根は変わっていなかった...。
みさとに恋患う方が居ても、どんな夢を持っていてもわたくしはあの世界にみさとをこれ以上置いてはおけなかった。
元の世界よりもしかしたら不便で、危険が身近にあって...わたくしの傍に居たら危ないかもしれないとも考えました。
けれどわたくしはカスパール殿下もフィリップ様も巻き込んで、わたくしは...みさとがこれ以上虐げられずに暮らしていけるように、わたくしが守りたいという我儘な偽善を貫くつもりです」
カスパール殿下もフィリップさんもアルマもイルマも黙っている。
エレオノーラの漂わせる空気で口を挟むのを拒絶しているようだった。
「みさとがこちらに来た時言った言葉はわたくしの決意でもあります。
恨んでくれていい、怒ってもいい、今はどうか保護させてほしい。
その言葉に偽りはありません。
みさとが元の世界に帰りたくなって...もし怒りを向けるなら...わたくしです。
わたくしのわがままでみさとを勝手にこちらの世界へ呼んだのですから。
みさとがもし元の世界に帰りたいというなら、わたくしが...生涯を掛けて何とかしてみせますわ」
「......そっか」
そんなに思いつめてたんだ...。
わたしはてっきり頭に血が上って思い付きでやらかしてしまったのではないかと思っていた。
いや、遠からず当たっていると思っている。
けど、そっか...。そんなに私の事を考えてくれる人がまだ残っていたのか。
嬉しいな。
嬉しい。
ちゃんとこの気持ちは伝えないと。この子はすぐ抱え込んでしまう。
「...そうです...うん」
「生涯って...王妃が魔術の研究ばかりだと怒られるんじゃないの?」
「......うん」
「私と話せてうれしかった?」
「......とっても、うれしかった」
「...私ね、エレオノーラと顔を合わせてみたかった。夢って言えばいいのか分からないけど、私の味方はエレオノーラだけだったしそれしか無かった。
それは叶わないと思っていた夢だったの。
だからね、エレオノーラ...?
夢は貴方のおかげで叶っちゃったよ?
エレオノーラが嬉しかったように私も嬉しかった。
恋患う暇なんてなかったし、便利で飢餓とか無くても元の世界に私の居場所は無かった。
エレオノーラの我儘沢山聞いてあげるから、一緒に私の居場所を作る手伝いをお願いしてもいいかな?
これもとっても自分勝手な我儘だと思うんだけど...どうかな?
手伝ってくれる?」
私は嘘偽りない言葉をエレオノーラに伝えた。
嬉しいって。
そしてこれから一緒に居ようって。
「...うん...手伝う...。任せて。わたくしがみさとを」
「”私たち”でね!エレオノーラばっかり頑張ってたら、寂しいよ。
分かった?あまり背負いこまないの!
“悪役令嬢”は余り重たい物背負いこまないものだよ?」
エレオノーラは私に抱き着いて曇った声で「分かった...一緒」と呟くと暫くそのまま離れてくれなかった。
これで少しは肩の荷を降ろしてあげられたかな?
「その”私たち”にエレオノーラが入っているなら、僕達も入れてもらおう。
なあ!フィリップ。聖女様は癒しの象徴。危険が無いと確認できれば国民に顔見せする日もやってくるだろう。
その顔に陰りがあっては王家の一員としてもエレオノーラの婚約者としても立つ瀬がないからね。
フィリップもそれアルマもイルマも異論はないと思うし、僕たちも是非頼っていただきたい」
「そうですね。エレオノーラ嬢に振り回されるより聖女様のお手伝いをする方が楽だと思いますし...アルマにイルマ、睨まないでください」
「お二人も私に敬語とか使わないでくださいね!私は聖女かも知れないけれどその前にただのエレオノーラの友達で家族なので」
「僕もそちらの方が助かるな。フィリップも嬉しいと言っている」
「勝手に私の意見を言わないでください殿下。ですがそうですね、私のは既に敬語は癖みたいなものですが私もうれしく思います」
エレオノーラと仲がいい二人にいつまでも敬語を使われているとなんだかむず痒いのだ。
「良い匂い。落ち着くわ...」
私の胸の中で大きく深呼吸をするエレオノーラ。
大型犬みたいだなんて言ったら怒るかな?
「それはきっとアルマが選んでくれた入浴剤が良かったんだよ」
「そんなことはないわ...。不思議ととっても安心する匂いなのよ...、懐かしい気持ちになるわ...。
わたくしもずっと会いたかった。わたくしの夢も叶ったのだわ...」
「ん?なんてエレオノーラ?いつまで私に抱き着いてるつもり?淑女はいいの?」
「今日は休業よ!みさと!」
こうして私とエレオノーラ、カスパール王子殿下とフィリップさん、アルマにイルマとの邂逅から私は一週間程ゆっくり休んだ。
私はここ最近久しぶりに”暇”を満喫していた。
しかし暇に慣れていない私が我慢できず、アルマを困らせて、エレオノーラがどや顔を披露して、カスパール殿下とフィリップさんに感心される事件が起こることになる。
もしかしたら私もエレオノーラのじゃじゃ馬っぷりを笑えないかもしれない。
そんな出来事が起こるのだった。
どれくらいコンパクトにまとめれば読みやすいのか、これが難題なんですねぇ~
どうも、まーるです。
次回は新たな事件?出来事?エレオノーラの暴走?の前にエレオノーラ視点で世界と、みさととエレオノーラ自身について触れていこうと思います。
エレオノーラってこんなちょっとハチャメチャで大丈夫なんですかね?って思ってる方は是非読んでいただきたい。
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