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酒を呑む。ダーティーマザーを呑みながら、文章をしたためていく。
コーヒーリキュールのカルーアとブランデーを割ったカクテルを。それをロックにして吞んでいく。
なぜカルーアを呑むことにしたのか。単純になるが黒い酒だったからだ。コーヒーの苦さとリキュールの甘さ。
それを楽しみたかったのかもしれない。こじつけかもしれないがね。
今から吞み語る話の象徴として表したかったのかもしれない。徒然なるままに書いていけばいいか。
以前働いてた職場から、私がいなくなってからのことを。
私が辞めてから少し経ってからのことだ。OBの呑み会が計画されて参加した。
その時に上司の一人から私が辞めてから、仕事ができる人たちが次々と辞めていかれると呟いていた。
数年たった今でも覚えている。酒の席であったがね。
それを聞いて私は確信していた。以前の職場がブラック企業になり果てていたことに。
有能な人材の流出はブラック企業の特徴だ。連鎖的退職ともいう。それが生じていたのだから。
それにより、レベルダウンも併発している。前までは捌けていた仕事も捌けなくなってしまった。
利益の維持が困難になってしまったのだ。さらに問題もある。
それは、大問題児の存在。なまじ仕事ができるマシンクラッシャーがな。
修理費という名の連続性出費。周囲がいくら稼いでも利益が飛ばされていく苦痛。
汗水たらして得た労苦が、水泡に帰されていけば有能者ほど見切りを付けたくなるだろう。
厄介のことに自分は悪くないと思っている始末。ゆえに矯正を退けていく。
いくつかある要因の一つしかないがね。
他にも要因を述べるならば、私が駆り出されていたワックスがけもあるだろう。
私が居た頃は、私含めて10人もメンバーがいた。しかし、しばらくして、私を含め4人が辞めた。
2人は転職。もう2人は上司への反発だろう。それによってメンバーが6人に減った。
代わりの人材は1人入ってきても、素人だ。さらに疲れやすいと来ている。主力にはなれない。それもあったのだろう。
不幸の追い打ちを招く結果になったのは。
ワックスがけはあくまでもサブの事業。メイン事業のレベルダウンによって生じた人材不足を賄うために、大半を外部委託することとなった。
それはつまり、サブ事業の利益の削減を意味する。自分たちでこなせることができなくなったのだから。
必然的に規模を縮小しなければならなくなった。
バランスの崩壊が引き起こされている。それは明確になっていった。間接的にしか知ることはできないがね。
実に奇妙なことだと思わないだろうか。私が居なくなって、ここまでの崩壊が生じていることが。
妄想だというのならば、妄想でいい。しかし、当事者たちからすれば残酷な現実でしかない。
すでに過去の出来事だとしても。
コロナ前の最後の呑み会。その参加者は多かった。私が知っている残っていた有能者がOBとして参加していたのだから。
もう開かれることはないのだろう。上司たちもメンバーが入れ替わってしまったのだから。
私の不在の数年は、決して良いものではなかったと思われる。なぜならば、職場の有能者たちを知ってか知らずか判らないが、流出を相次がせ、自分たちの手で苦しめさせる結果を引き起こさせたのだから。
端から見れば因果応報そのものである。当事者たちはどう思っているかは知り及ぶことはできないが。
振り返って思うのは、タイミングよく衰退していったことだろう。私が居なくなってからこれらのことが相次いで生じていったのだから。
おかしなことだと思わないかね。私はただ普通に働いていたに過ぎないのに。
直積的に知ることはしなかった。間接的に知るに留めていた。しかし、ここまで大ダメージを受けているとは思わなんだ。
今ではそんなことどうでもいいことだがね。
次に呑み書くとするならば、100パーセント私の妄想を垂れ流すことになるだろう。胡散臭くなるかもしれない。
もはや、私のことを知っているのは少ないのだろう。栄枯衰退のただ中にいた者達だけのみ。
見切りを付けて辞めていったか否かに分かれるとしても。
それと、嘱託が切れて完全に辞めていった人もいたか。
私が知り及ぶことでもないな。
それらのことについて私から言うならば、退職には2種類あるということだろう。
予想できる退職と予測不可能な退職のな。その人がなぜ、その職場で働いているのかそれを知ることが要になっていくのではないか。
働いている理由が無くなれば、その人を繋ぎ留めておけるだろうか。理由の存続が鍵となってくるのだろう。
そのことを理解しているか否かは、私の知り及ぶことではないがねーー
《終》