秘境の発見
「凄い……」
絶景だった。
見渡す限りの花、花、花。
秘境と言われる未踏地にあったのは、色鮮やかな花の群れだった。
文明の発展と共に各地域の探索・探検が活発になっていた。
自動車に飛行機、動力で動く船。
これらが人々の活動地域を拡大していた。
それに伴い、これまで探索不可能だった場所にも人が入るようになった。
男が踏み込んだのも、そうした地域のひとつだった。
山や谷に囲まれ、機械では踏み込めない場所だった。
飛行機で上空から見渡す事は出来るのだが。
さすがに着陸までは出来ない。
そんなわけで、探検隊は近くまでは車で。
山や谷は自分たちの足で分け入る事になった。
最終的に人力を使う事になる。
だが、これでもまだマシになった方だ。
馬車などでは必要な物資を運搬することも難しい。
積載量と航続力が足りないのだ。
近くまで必要物資を持ち込めるだけでもありがたい。
そうして活動拠点を定めて踏み込んでいく。
航空機からの確認によると、一面に花が咲いていたという。
なかなかに風光明媚な場所のようだった。
また、小数ながら人の姿も確認できたとか。
航空写真からもそれらしき人影が撮影されていた。
もっとも、時代が時代なので白黒写真。
それも、遠距離からの撮影なのではっきりとした姿ではない。
実際に何がいるのかは、行ってみるまでわからない。
道を確認しつつ何とか進み。
何度か引き返しては挑戦を繰り返す。
その果てに探検隊は、目的の場所にたどり着いた。
そこには、写真にあった通りに花が咲き乱れていた。
探検隊は早速写真撮影を始める。
色彩を伝えるためのスケッチも行われる。
簡単な測量も行われていく。
調べられることは何でも調べあげられていった。
特に姿が確認されたという人影。
それがあるかどうかも確かめられていく。
望遠鏡や双眼鏡をつかって周囲を見渡していく。
もし本当に異民族がいるなら、警戒しないといけない。
いきなり襲いかかってくる者達もいるのだから。
だが、探検隊がやってきた場所にはそれらしき姿は見えない。
この場所にはいないのかも、と考えられた。
実際、人影を見たという場所は何キロか離れた所だ。
探検隊がやってきた場所までは出歩かないかもしれない。
「どうします?」
「行ってみた方がいいとは思いますが」
「危険な原住民だと厄介ですね」
皆がそれぞれの意見を口にする。
それらを聞いて隊長は、
「もう少しこのあたりを探索しよう」
と決断を下した。
それでこの場に住んでる民族に遭遇するならそれもよし。
出会わなければそれでもかまわない。
どのみち、情報は多ければ多いほど良い。
「行くぞ」
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