File39 草場拓央
俺は九鬼泰照。暴露を張り切る情報屋だ。
今回の依頼者は、痩せ細った青年。名を田端堅治と言った。
「依頼内容を」
「悪夢を俺や仲間に与えた奴に社会的制裁を………与えてください」
そう言う田端は今にも湯水のように怒りが湧き出るようであった。
田端はアイドル志望であった。
幼少期からかっこいい等と言われ、小中高とずっとモテモテであった。しかも、周りから『アイドルになりなよ』と言われるほどに。
そんな本人も、テレビで見たアイドルグループに憧れて、アイドル志望となったのだ。
そして、二十歳になり、大学生活を送っていた時の事であった。
大学の寮に、一人の人物が現れる。
「どうも、こんにちは。私、芸能事務所『ブルースター』の社長をしております、草場拓央といいます」
ブルースターの名は田端でも聞いたことがあった。ブルースターは、いろんなアイドルグループを輩出した芸能事務所なのだ。
どうやら、草場は新しいグループを作りたいため、アイドル志望の人間を集めていて、田端は友人による他薦でそのグループの一人に選ばれたのだ。
無論、その事に田端は大喜び。彼は迷いなく草場の話に乗った。
しかし、後にこの決断が田端を追い込むことになる。
それから数日後、田端はブルースターの事務所に呼ばれた。
事務所にいたアイドル志望の人間は計20名。どうやら、その20名の中から5名を選んで、新しいグループのメンバーにするのだとか。
すると、社長の草場が皆を集め、言った。
「明日、ブルースターの寮に行くことになります。荷物は着替えだけでよろしいです。明日の午前10時にこの事務所前までに来てください」
そして、解散となった。
その時に、田端はある一人の人物と出会う。
「君もアイドルを目指しているのかい?」
田端に声をかけたのは、同じくアイドル志望の青年、柴崎勇平であった。
田端と柴崎は馬が合い、連絡先を交換するほどの仲となった。
次の日、田端は着替えが入ったキャリーケースを持ってブルースターの事務所前に向かった。
そこには、何台ものの黒いバンが止まっており、そのバンから一人の黒服の男が出てきた。
「お乗りください」
「は、はぁ…」
田端はその言葉のままにバンに乗った。そして、数分後に二人の男が乗ると、黒服は運転席に乗ると、田端らに錠剤を与えた。
「これを飲んでください」
田端らは、言われるがまま、その錠剤を飲んだ。すると、急に眠気が襲ってきた。
「なんだ……眠い……凄く……ね…む…い…」
そしてそのまま寝てしまった。
「着きましたよ」
田端は黒服の男に起こされ、バンを出た。その瞬間、田端は目を疑った。
「こ……ここは…山奥!?」
田端の他にも、昨日事務所で会った者たちが沢山おり、その中には柴崎もいた。
「皆さん!こちらに!」
田端達は声の方を振り向く。
そこには、社長の草場がいた。
「今から皆さんには、練習をあの施設で行って貰います!」
草場が指さしたのは、大きな洋館。皆がそこに入った。
すると、ドアに鍵が掛かったのだ。
「な!?」
すると、室内のスピーカーから、草場の声がした。
「今から皆さんには殺し合いをしてもらいます!生き残った5人は、アイドルグループを結成してもらいます!」
すると、その中の一人が反対した。
「何だと!そんなゲームに誰が参加するか!」
ソイツがその場から逃げようとする。すると、急にソイツが倒れたのだ。
「ぎゃあ!」
すると、またも草場の声が聞こえた。
「そうだ。ここから逃げようとすると、隙間から猛毒の針が撃たれるからな。気を付けてくれ」
無論。皆は殺しなんてするはずはない。最初の内は何もしなかった。
しかし、それが地獄の始まりなんて、誰も知らなかった。
この洋館からは誰も入ることが出来ず。食料も無い。
そのうちに何人かが餓死した。洋館に残ったのは、残り十人。田端や柴崎も生き残っていた。
だが、食欲は3大欲求の一つ。
生き残りの一人が、また別の一人に噛み付いた。
「食わ……せろ…」
「痛ぇぇぇ!」
すると、それに感化されたのか、田端、柴崎までもがソイツに齧り付いた。
そして、ソイツは死んだ。しかし、痩せ細った人の肉は一時的に腹を満たせただけであり、5人になるまで彼らは人を食べた。生き残ったのは、田端と名の知らぬ者4名であった。
その時、洋館に草場が入った。
「やぁやぁやぁ。よく生き残ってくれた」
しかし、草場は懐から拳銃を取り出した。
「じゃあ、死んでもらおう」
何と草場は田端以外の四人を撃ち殺したのだ。
(こっ…殺される!)
田端は最後の力を振り絞り、そこから走り出した。
「なっ、コイツ!」
草場が気付いた頃には、田端は走り去っていた。
何メートルも。何キロメートルも走った。そして途中で躓き、意識を無くした。
次に目覚めたのは、病院だった。
田端はすぐに警察に草場の事を話した。しかし、警察は妄想だと思い、田端の事を信じなかった。
退院後、彼はあてもなく彷徨った。そして、苑頭町に辿り着いた。苑頭町を歩く内に、一つの建物を見つけた。それは、暴露屋の事務所があるビルだった。
「どうか……奴を………あの悪魔を……落としてください!」
「分かりました。では、奴に無限地獄を見せます」
俺は草場の事を調べ上げた。
草場拓央。61歳。芸能事務所『ブルースター』の社長。
何と奴は人間が殺し合う姿を見るのが趣味であった。
過去に数十人ものの奴を行方不明にしたのも、コイツの趣味の為であった。
俺はマスコミに草場を売った。無論、この情報にマスコミが食いつかないわけがない。
草場の信用は地にまで落ち、奴の所有する山からは、大量の白骨化された死体が発見されたのだ。
そして、草場は逮捕され、ブルースターも倒産となった。




