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暴露屋∼社会的に殺す情報屋∼  作者: 蔵品大樹
第一部 藤絵戦争
2/139

File2 薮内諒とその父親

 俺は九鬼泰照。東京一の繁華街、苑頭町に構える店、暴露屋の代表だ。

 俺はある組にお世話になっている。それは苑頭町をシマにする暴力団、藤松会。

 そこの会長である、桂田義成(かつらだよしなり)に、当時苑頭町に蔓延るチンピラだった俺を拾った。

 俺は拾った恩を返すべく、暴露屋をしている。




 今宵も暴露屋に依頼者は訪れる。

 今回の依頼者は松堂五郎(まつどうごろう)

 隣町の小菊(こぎく)市の市長をしているのだとか。

 「貴方は、裏社会で秘密を暴露するという事をしているのだそうですね」

 「はい。ごもっとも」

 「では、この男を社会的に抹殺してください」

 松堂は、一人の若い男の写真を取り出した。

 「この男は?」

 「コイツは、薮内諒(やぶうちりょう)。次期市長候補の市議員の男です」

 「この男がなにか?」

 「この男は、私の恐怖なのです」

 「恐怖…といいますと」

 「はい。先程も言った通り、次期市長候補と言われています。しかし、私はこのままでいたい。こんな若僧に未来の小菊市を任せられるのか!まだ選挙前ですが、こんな所で落ちたくないんです。何故なら、私は総理大臣に憧れている。どうか、お願いします」

 そう言うと、松堂は頭を下げた。

 「……………わかりました。では、この男を社会的に抹殺いたしましょう」

 それだけ言い、俺は松堂を帰らせた。

 この依頼、直感でわかる。そう、自分自身の事しか考えていない依頼である。

 時折、暴露屋には暴露される側の人間同様、悪人が来る場合がある。そして、その悪人は、善人を社会的に抹殺させようとするのだ。

 しかし、それをするのが暴露屋というのだ。

 俺は情報を集めようと席を立った。すると、暴露屋の社員兼藤松会の中堅組員兼ボディーガードの比嘉が話し掛けてきた。

 「おっ、九鬼さん。この男、俺が族のとき見たことありますぜ」

 「それは本当か?」

 比嘉の話はこうだった。

 当時、不良だった比嘉に、とある仲間がいた。それが、あの薮内というのだ。

 「確か、薮内は不良だった頃に一人を植物状態にしたんです。でも、何かあってそれは無かった事になったんです。アイツ曰く、『今はもうあの頃の薮内じゃない』とかなんとかほざいていて…」

 「そうか、ありがとう」

 俺はそのことについて、もう少し詳しく調べてみた。

 薮内諒。29歳。学生時代はヤンキーをしていて、当時はエアガンを使っていた事から『エアガンの薮内』と呼ばれていた。

 しかし、17歳の頃、いつものようにエアガンを使い、敵対していたヤンキーを倒していると、エアガンの弾がたまたま一人のヤンキーの頭に命中。そして、その衝撃で倒れ、後頭部をコンクリートの壁にぶつけてしまい、そのまま植物人間となった。

 その後、傷害罪等で逮捕されたが、少年法により、少年院で約一年間暮らす……筈だった。

 彼の父親は警察の官僚で、権力を使い、今の事を闇に葬ったのだそうだ。

 俺は薮内の父親の対策を考えた。

 まず、例の事をネット掲示板で話した。

 無論、薮内諒や、その父親を知っていた者からは、驚きの声が出た。

 そして、誰が話したのかは知らないが、この事が明るみに出た。

 無論、薮内諒とその父親は、潔白だと語ったが、ネットに広まった以上、この事は止められない。

 そのまま、二人は社会的に抹殺された。



 それから数日後、お茶を嗜んでいると、もう一人の社員、伊波が新聞を持ってやって来た。

 「九鬼さん!これ見てください!」

 新聞には、『松堂五郎、横領!』と書かれていた。

 「この松堂ってやつ、この間ここに来ましたよね」

 「あぁ、悪人を潰すのも、また悪人なのかもね」

 俺はカップに注がれた紅茶を一口飲んだ。

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