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どくはく

作者: 春風 月葉

 平均が理想的だ。それより上も、それより下も、どちらでもダメだ。どちらにも出る杭は打たれる。

 期待させ過ぎてはいけない。しかし、失望させてもいけない。優秀な者は嫉妬され、無能な者は侮蔑される。決して輪を乱さず、周囲の顔色を伺い、自分の色を隠し通すことは絶対のルールだった。それができない者から孤立していった。

 しかし、月日が経つとそれらのルールはクルリとひっくり返った。他人と同じではいけない。自分だけの個性が必要だ。周りにはない武器を見つけなさい。

 あるはずがなかった。昔は持っていたのかもしれないそれらは、もう手放してしまった後だった。上から下に、雨のように降り注ぐ言葉の槍が私の精神を蝕んだ。なぜ個性を求められているのか、理解ができなかった。必要ないと教えられたから、私は全て捨てたのに、どうして今、私は責められているのだろう。

 五月蝿い。外界の全てが敵に思えた。否、ようやく敵を認識できた。私は失ったモノを必死に拾い集めた。そしてそれらを不器用に重ね、束ね、もう一度私を作り直した。

 周囲は私を褒め称えた。けれど、私の心はちっとも満たされなかった。だって私は知ってしまっているから。彼らの目には私ではなく、私の目に映る自分たち自身の姿しか映っていないことを。

 下らない。大衆の前で吐き捨てた言葉は批判を呼び、私は周囲からひどく叩かれていた。私はヘッドホンを耳から外し、クスクスと笑った。良い音だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 他の人のめを気にしすぎると、個性を失う。 他の人のめを気にしないことは、個性を獲るが、周りからの偏見などをかけられる。 なんとも世の中はいびつだなと思いました
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