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上手くはいかないようです

頑張って書いていきたいと思います。

よろしくお願いします。


目が覚めると森にいた。


冷たい土に寝転んでおり、万緑の隙間に空から照りつけた光が射している。周りからは小鳥の鳴く声が忙しなく聞こえる。

幻想的ですらある光景だが、のんびりと見るような心境ではなかった。

俺は日本にいたはずだ。いつも通り高校に行こうとして、それで……思い出せない。体は固い土に寝ていたからか少し痛む。服装は制服のままだが荷物はどこにもない。


その時一


森の奥から悲鳴が聞こえた。女の子らしき声だ。

もはや何が何だかわからない。考える隙を与えてくれない。

だが、人がいる!とにかく行ってみるしかない。

悲鳴のした方向に走ると地面が途切れており、下に目を向けると信じられないものを目にした。

ヨダレを垂らした口から覗く鋭い牙、手には棍棒らしきものを持った二足歩行のモンスターがいた。おぞましい熱気が肌をつたい、鳥肌が立つ。


逃げよう


悲鳴が聞こえたが自分ではどうしようもない。幸い高低差があるので気づいていない。


そう思い反対方向に足を踏み出そうとした瞬間、足元が崩れた。

俺は重力に従い落下する。とっさに目を閉じた。

転落することしばし、


尻から強烈な痛みが全身を突き抜けた。

「痛ぇぇぇ」

お尻から土とは違う感触が伝わる。

恐る恐る目を開けると、あのモンスターが俺の下敷きになっていた。すぐに立ち上がり警戒するがモンスターはピクリともしない。


「ありがとうございます」

背後からかわいい声。あのときの悲鳴の声に似ている。


お礼に返答するため後ろを振り向くと、これまた目を疑うものが目に飛び込んできた。

綺麗な長髪に、大きい胸、身長は高く、かわいらしい服装をした女の子。例えるならそう一


ボディービルダーのようだった。


「あんなにも果敢にモンスターに立ち向かうなんて…」

脳の処理が追い付かないまま話続ける女。

綺麗な長髪にはゴツい顔が付いており、胸板は厚く、2mを越えるであろう身長。痛々しい服の袖には、はち切れそうな上腕二頭筋が見えていた。人間…なのか?

「すごいです!私怖くて動けなくて…」

顔を赤らめながらモジモジしてこちらを見ている。

顔が引きった。とにかくこいつから離れなければ、今度は俺が下敷きになりかねない。

「あの、私リリィっていいます!」

まだ混乱しているのにどんどん話さないで欲しい。


「あなたにホレました!結婚してください!」


「……………は?あのっ、は?え?」


「結婚してください!」

「嫌だ」

自分でもびっくりするぐらいスッと言葉が出た。

「なんでですか!私にダメな所があるなら直します!」

「ちょっと待て!急すぎる!もっと過程をだな…」

「家庭だなんて…もう子供ですか?覚悟はできてます…」

うぜぇ…なんだこいつは。

「とにかく!俺はお前と結婚する気はない!」

「そうですか…」

明らかに落ち込んだ表情になり、少し罪悪感が生まれる。

こんな見た目でも女の子なんだ、たぶん。扱いが雑過ぎたかもしれない。

まだ初対面だ、紳士に対応しよう。

「ではせめてお礼をさせてください」

「気にしないでください」

「この体をあなたに捧げます」

「いらない」

なんだこいつ!ヤバイ!数行前の罪悪感返せ。

「もういい!お礼とかも要らないから!じゃぁな」

そう言って体を反転させ、俺は一刻も早く立ち去ろうとした。

「本当にいいんですか?」

背後から声がする。無視だ、無視。

「見たことのない服装していますけど、この辺りの人ではないですよね?」

無視無視。

「どこに向かうつもりなんですか?ここは森ですよ?」

うっ

「案内人が必要なんじゃないんですか?」

くっ

「私なら街まで案内できますよ」

知能が思ったより高い。確かにここがどこかもわからない。モンスターもいるみたいだし、一人よりも…でも…しかし………

「案内…頼めるか…?」

「はいっ♥」

リリィは満面の笑みだった。モンスターが出てきたらこいつを盾にしてやる。



街に向かう途中リリィはこれまでの経緯を話した。

「私はニクキン村という所で暮らしていたのですが、毎日奴隷のように扱われていました」

こいつを奴隷にするとか根性すわっているな、村の人。

「毎日、毎日重労働をさせられ、力仕事ばかりさせられていました」

重宝されてないか?適材適所だと思うが。

「しかも村の人は私に『力仕事はやはりお前だな!』とかいうんですよ!私は女の子ですよ!」

ははっご冗談を。

「それが嫌で村を飛び出し街へ向かおうとしたのですが、途中モンスターに襲われてしまい…本当に助かりました!」

この見た目でモンスター倒せないのか。

「大丈夫、もう本当に。気にしないで。偶然モンスターを倒せただけだし」

「いいえ!あんなにもかっこよく私を助けてくれたではありませんか!私の危機に颯爽と現れた王子様…♥」

俺も貞操の危機なんだが、颯爽と現れてくれないかな王子様。

「そういえば名前はなんですか?」

名前知らない奴に求婚したと思うと恐いな。

「言ってなかったな…俺はアオト」

「アオト……未来の旦那の名前……アオトさん、アオトさん、へへ」

「きもっ」

はっ!ついに口に出してしまった!我慢してたのに。

「キモくないです~。未来の伴侶なんですからいいじゃないですか!」

「そのめげない所は良いと思うよ」

「はいっ!今後もめげずに行きます!」

余計なことを言ってしまった。



「あっ見えてきましたよ!城下街『テインプロ』!」

馬鹿な話をしているうちに開けた草原に出た。木々で覆われてあた空が一気に現れ、草原の爽やか香りも相まって解放的な気分になる。

そして草原にある道の続く先には立派な城壁に、そこから飛び出すように城が顔を覗かせていた。

暫く歩き、門の前まで来た。

「ほら!いきましょう!」

「いや、ちょっと待って、おい!」

言葉はリリィには届かず門の方へと走っていく。よく考えて無かったがこんなモンスター連れて街に入れるのか?

遠巻きにリリィを見ていると兵士と何やら話している。

少しすると戻ってきて

「入っていいですよ!」

「えっ?おっおう」

リリィに強引に手を引かれ、門を抜けるとまさにファンタジーの世界が広がっていた。

街は人や人では無さそうなもので活気づいていた。道の両端には露店が並び、肉、野菜、魚だけでなく見たことのない物まで様々。上を向けば洗濯ものが揺れていて、窓には花を飾る家。

リリィは目的地があるようにぐんぐんと進む。

街の人は特にリリィを気にしている様子はなかった。


暫くすると一際大きな建物が目につく。

「ここがギルドです。ここなら泊まれると思います」

リリィに案内され建物内に入ると、幾つかの大きいテーブルで談笑する男たち、壁際にはボードあり装備を整えたであろう人達が熱心に貼られた紙を見ている。上は吹き抜けになっていて2階の部屋の扉が見える。

正面には受付があり、耳にしっぽの生えた女の人が立っていた。獣人だろうか?

「受付を済ませましょう!」

リリィは受付に話かける。絵面は完全にヤバイ交渉にしか見えない。

「急だけど、住み込みで働いていい?」

「わかったわ、大丈夫。この書類にサインをしてね。あと身元の確認をしたいのだけど…そちら方は…」

まずい!俺はついさっきこの世界に来たばかり、身元なんてないぞ。どう誤魔化せば…

「リリィの連れだから大丈夫ね」

え?

「はいっ!未来の旦那です♥」

は?

「なら一つの部屋でいいわね」

ちょっ

「201、ちょうどあそこね」

受付嬢さんは俺たちの後ろにある2階の扉を指した。

「いきましょう!アオトさん」

「おっおう」

嫌だが文句は言えまい。生活が優先だ。

部屋は簡素で、古い木の机に椅子、ベッド。壁際にはランプと小さい棚。窓にあるカーテンが風で揺れていた。

「アオトさん、私疲れてしまったので少し寝てもいいですか?」

「おっおう」

リリィはベッドに倒れるように横になり寝てしまった。ベッドの軋む音がする。


部屋が静かになる。

ため息がこぼれる。

そして一つ言いたいことがある。


誰かツッコめよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

なぜ誰もツッコまないんだ!街中にターミネーターがいるんやぞ!誰か一人くらい二度見してもいいだろ!どういうことだよ!

「リリィさんのお連れですから」!?大丈夫だって!?むしろ逆だろ!こいつの連れの何が信用できるんだよ!!


深呼吸する。


言いたいこと言えて冷静になった。というかあの見た目で誰も動じないとは、元の世界より度量が深いのでは?

いや、俺の器が小さいだけか?


深くため息をついて、古い木の椅子に座り窓から見えるファンタジーの世界を眺めることにした。

獣人の子供が走り回り、おばさんが井戸端会議をしている。

こんな昼だと言うのに酒を持って騒いでいる人も見える。

風で翻る洗濯物の爽やかな香りがここまで伝わりそうなほど清々しく平和な街並み。それでいて何か懐かしさを感じる。

突然森で目が覚めて、モンスターに出会い、ターミネーターを救い、求婚され、街に来て…目まぐるしい展開からやっと落ち着ける。


少し考えるか、

この世界はなんなのだろうか。異世界ってもっと危険なイメージあったけど、ここまでの人みんな優しそうだし、モンスターはあれ以降見てないし、街は平和な感じだし。むしろ一番危険なのは後ろで寝てる筋肉モンスターだし。

日本語は通じるみたいだが文字はよくわかんない。

あっ!魔法とかはあるのかな?あと帰る方法も探さないとな。

やはり鉄板は魔王を倒すことだろうか?

……考えると切りがないな、情報を集めないと。


ブゥゥゥゥゥゥギュルルルルルルルル


真面目な考えを遮るように汚い音が部屋に響き渡る。

「ぐふっ、ゴホッ、うぇぇぇぇぇ」

この生物が受け付けないこの臭いは…

それはリリィのおならだった。すぐに窓から身を乗り出す。

こいつ…女の子扱いされたいならこういうところ気を使えよ!

熟年夫婦か、俺たちは。


ドタン!!


扉の向こうから大きな音が聞こえる。慌てて一階に戻ると先ほどの獣人の受付嬢が紙に埋もれ、泡を吹いて倒れていた。

「大丈夫ですか!」

返事はない。すぐに近くの人と協力して受付裏の部屋にあるベッドに寝かせた。


しばらくすると受付嬢は起きてくれた。

「ありがとうございます。 ここまで運んでくれたのですね。急にこの世ならざる臭いがしたので気絶してしまいました」

「本当にすみません」

「なぜ謝るのですか?」

「あっいえ何となく…」

謝らずにはいられなかった。おならで出禁とか嫌ですからね。

「ふふ、あの臭いはリリィのおならでしょ?」

「えっわかるんですか!?」

「リリィとは友達だもの、子供の頃から強烈だったわ」

成る程、友達だから連れの俺を信用したのか。というか気絶するほどのおならを放つ奴とよく友達でいられるな。

「リリィに文句とかないんですか?」

「いつものことだもの。気にしてないわ」

天使かな?

「自己紹介が遅れましたね。私はミリーナ、ここのギルドで働いているわ」

「あっはい俺はアオトといいます」

面と向うのは二度目だけど、改めて見ると美人だなぁ。整った顔立ちに大きな胸、時々動くケモ耳としっぽの愛らしさが近寄り難い美人の雰囲気を緩和してくれている。

かわいい。結婚して。

「あなたのことは気になるけど、それは置いといて…仕事がしたいのよね?」

「はっはい!なるべく安全なものをお願いできますか?」

「ちょっと待ってて」

そう言うとミリーナさんは立ち上がり棚から選んでくれた。

「最近は仕事も少なくて、安全なのはこれしかないけど」

「薬草の調達?」

「ええ、比較的弱いモンスターしかでない場所だから大丈夫だと思うわ」

クエスト詳細に描かれていた地図の場所は俺が倒れていた所とは街を中心にして反対側だった。

「ちょっとまってください。ここ怖いモンスターとかいませんか?二足歩行の牙の生えたモンスターとか」

「それはゴブリンね。大丈夫よ。ゴブリンは滅多なことじゃ人は襲わないわ」

「えっ?」

大分イメージと違うが。

「彼らは狩りをして生活してるのだけど大体は草食モンスターを捕らえて食べているの」

「でも、リリィを襲ってましたよ?」

「そうなの?変ね。そこら辺は私たちで調べます。あっでもアオトさんが行く所はゴブリンの巣から遠いので大丈夫ですよ」

そう言うのであれば…。不安ではあるがここに住まわせてもらってる以上文句は言えまい。

「そうですか。わかりました。その依頼受けさせてください」

「わかったわ。後これ」

ミリーナさんは小さい布の袋をポケットから手渡ししてくれた。

手柔けぇ。

「お金よ。少ないけど。どうせリリィのことだからお金なんてほとんど持たずにここに来たんでしょ?これはギルド入団祝いってことで。依頼の準備とかに使って」

優しすぎる!一緒の墓に入りたい。

「ありがとうございます!早速準備します!」


よし!初の依頼だ!頑張るぞ!頬を叩き気合いをいれる。

意気揚々と部屋に戻り、扉を開け放つ。

「クエストをもらったぞ!」

目前には着替え中のリリィがいた。

彼女の裸は男として見れば文句の付けどろがない。

スイカが入っているのかと疑いたくなるような三角筋。

見事に割れた腹筋に、足は土管のような太さだ。

リリィの顔がどんどん赤くなり、腕の血管が浮かび上がる。

いや、待て!素晴らしい!いい筋肉だ!最高にイカしてる!だから落ち着こう!

「ギャアアアアアアアアアアアアアアア エッチ!」

その言葉を認識した時には俺は宙にいた。

吹っ飛ばされた心地良い浮遊感と死ぬかも知れない絶望感に苛まれる時間もあっというま、向かいの部屋の壁に顔がめり込んでいた。

向かいに住む冒険者と目が合う。

「なんだお前は!?」

「あっあの、その…」

言葉が出ない。顔も抜けない。

「すみません事情は説明するので抜くの手伝ってくれませんか」

手伝ってくれた。そして謝り倒した。


俺は部屋に戻ると扉を開けたすぐそこにリリィがうつむいて椅子に座っていた。俺が座ると普通の椅子も、リリィが座るとおままごとのようだ。

リリィは申し訳なさそうに口を開ける。

「本当にごめんなさい、私が取り乱したせいで…」

「そうだぞ!部屋の人が偶々優しい人だったから大騒ぎにはならなかったけど…」

「ごめんなさい」

「たくっ!あんな強い…力で…殴りやがっ…て」

ん?待てよ?なんで俺生きてるんだ?

壁に穴が空いて、もう一つの扉ができかけてたぐらいなのに。

ゴブリンの時もそうだ、痛い程度で済んでいた。


もしかして…俺…強くなってる!?


こんな形で認識したくなかったけど。


「どうかしたのですか?」

「何でもない。そういえばお前、なんで着替えてたんだ?寝てたんじゃないのか?」

「それが…ベッドが中央から綺麗に割れちゃって…それで起きたんです」

よく見ると、リリィの奥には真っ二つに割れたベッドがあった。

「おい!何ベッド壊してんだよ!お前みたいな巨漢が倒れるように寝たらそらそうなるわ!」

「違うもん!巨漢じゃないし、重くもないもん!」

は?『もん』じゃねぇよ。ネジ切るぞ。


いやいや、ダメだ!ダメだ!なんかここに来てから急激に口が悪くなってきた。いかん!

「この話はもういい、とにかく依頼の準備をしよう」

「ユウトさんは強いですから準備なんてなくても大丈夫ですよ!ゴブリンの時と同じようにやっちゃってください!」

「だから!あの時のゴブリンは本当に偶然なんだ!俺はモンスターと戦えるほど戦闘能力はない!」

「大丈夫です!私のパンチ耐えられたじゃないですか」

「それならお前が戦え!」

もう嫌だ、こいつと喋ると疲れる。

息を整えて、話を進める。

「備えあれば憂いなし!お前の方がここらの事は知ってるだろ?準備に付き合ってもらうぞ」

「デートですね♥」

「よし!明日に向けて準備だ!早速街へ出て装備品を買おう!」

「無視しないでください!」

マリーナさんからもらったお金を握りしめ、部屋の入り口へと向かう。後からついてくるリリィ。



何故俺がこの世界に来たのかはわからない。

この世界がどのようなものかもわからない。

これからの生活に不安もある。


でも、少しワクワクしている自分がいた。


光りが漏れる扉に足を踏み出す度に心臓が高鳴り、口角が上がる。

力強く扉を開け放つ。



さぁ!冒険のはじまりだ!(準備)



「壁、直してから行ってください」

扉の前にいたミリーナさんの声が突き刺さる。



……………ベッドも直さなければならないのは黙っておこう。



まずは読んでいただきありがとうございます。

タイトルから、美少女とイチャイチャする話だと思った方すみません。



あと、すごくどうでもいいのですが、

「ぶり大根」という言葉はエロいですよね。

「ぶり」の女感と「大根」の男感の合体がいい味出してます。


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