第3章 教会の地下に棲む孤児
物心がついた頃、その少年に名前はなかった。
ただ生まれてからずっとその少年につきまとう忌まわしい噂があった。
その少年は生まれた時、ある言葉を発したというのだ。そして母親を含む家族や助産婦たちが行方不明になったり死亡している。
生まれた時からその少年は呪われていると信じられてきた。
父親は分からず、母親は失踪。そして少年は教会に併設されていた孤児院で育てられることとなった。周りの孤児たちは彼を疎み、そして町の子供たちは彼に石をぶつけた。
その少年が6歳になる頃、他の孤児たちはもう誰もいなかった。
ある人は他の子供たちは全て里子に出されたと言い、また多くはその少年以外はみんな死んでしまったのだと噂した。そして、もしあの子供たちが死んでしまったのなら町の子供たちは安全なのだろうかと不安がる人々が増え始めた。
あの呪われた子はたった1人残されたのか?生かしておいて良いのか?
噂は少しづつ過激なものとなりつつあった。
だがその少年もやがて町から消えてしまった。
それからその町の人々は教会の孤児院は閉鎖されたのだと思った。もう孤児達はいないのだと。あの呪われた少年さえ、いなくなってしまったのだと。
だがそれは、町の人々にこれ以上悪い噂が流れるのを恐れた教会が、その少年を教会の外に出さないことを決めただけだった。
教会の地下の一番深くにある小さな部屋に、彼を閉じ込めてしまったのだ。
姿を見せなければ、噂も無くなるだろうと最初の神父は考えたのだ。
その事実は教会にとっての秘密となった。
それから6年。少年は12歳になっていた。