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あっ、これヤバイやつだ。

三話目頑張るよ。



やあ、クオ君だよ。

生まれて一年と三ヶ月が過ぎたから、刀の修行と、魔法の修行を始めるらしいね。

いや、まだ1歳なんですけど...さすが異世界。厳しいね。


「まずはクーちゃんに教えるのは構え方かな〜。基本から固めないと、あとあと壁にぶち当たって強くならないからね〜。」


教えてくれるのはおかあさんだ。なんでも刀系最終職業の、《刀客》ならしい。これはスゴイ、なんでスゴイのかっていうと、まず大抵なれない。ゲーム時代でも、取れた人は本気のやり込み勢と、PSヤバイ勢ぐらいだ。というか最終職業って時点でやばい。


あ、おとうさんも魔法系最終職業の賢者なんだそうです。やっぱバケモンだわ。


さて気を取り直して。『エルフェンリード』は、夢見たいなVRMMOなんかじゃなくて、CS機の普通のRPGだ。だから、刀の構えとか、握り方なんて一片も分からないし、習い事で刀術なんてやった事もない。

だってのに...なんだこれ。木刀を握った瞬間、無意識に体が動いて勝手に構えた。

くそ、気持ちが悪い。なんだよこれ。くそ。


「クーちゃんすごい!構え方も構える動きも無駄が無いなんて!ウィル〜!!やっぱウチの子天才よ〜!」


「おぉー、この調子だと魔法にも才能あるかな?楽しみだなぁ。」


賑やかな両親の前で、初めて心の底から笑えなかった。

頬が引きつった。


***


僕は努力が嫌いじゃない。なんでかって、余程のこと以外は、大抵努力さえすれば結果が残るからだ。

勉強や、スポーツだってそう。最初は出来なくても努力すれば結果は残せるし、満足だって行く。


だけど、努力自体を無意味にさせるのがチートだ。

地球にだっていた、いくら努力しても倒せないやつ。でも、それでも、満足行くまでは達成感が得られたんだ。


ゲーマーで、レベル上げだって好きだったし、スキルを鍛えるのも好きだった。


FPSだって、最初は全くキルできなかったのに、だんだん上手くなって、キルレが0.5を超えた時はめちゃくちゃ嬉しかった。


だからチートは好きじゃない。チートなんて有り得ない。やられたらウザいし、使ったらそのゲームは絶対につまらなくなる。 だから嫌い。

なのに...僕は望まぬまま、チートを使ってしまった。それも、僕が一番好きなゲームに酷似した世界で。

ああもう。最悪な気分だ。


***


剣の稽古はまだ続く。次は基本の型をやるみたいだ。


「んーとねー、数字で数えて型をやるから、一緒にやって覚えようね〜。そんなに難しくないから大丈夫よ〜。」


そう言ったあと、まず見本を見してくれた。

正直に言おう。美しかった。無駄なく流麗な刀捌き、足運びから、刀の先まで全てが美しかった。

画面の中で見たときには、全く感じなかった感動が僕の胸を焦がしてやまなかった。


僕もやりたい!

型自体はゲームでもひたすら使ってたからおぼえている。それに今、お手本だって見た。

チートは嫌いだけど、この世界は好きだし、今更どうしようもない。

めちゃくちゃ嫌だけど...僕は...この世界を楽しみたい!


はあっ...!!

力を込めすぎず、緩やかに、激しく、ときに早く。緩急をつける。獲物を想像し、斬る瞬間には力強く、一刀両断する気持ちで動く。

相手の剣を受け流し、力を逸らす時には柔らかく流麗に。

そして、最後に、一閃。

全身全霊の型を、残心で締める。


あぁ...気持ちよすぎる...!!!


「コレが神祖か、いや、クオ自体の力だ。やはり僕たちの息子だな。ルー。」


「..........」


「ルー?どうしたんだい?」


「きゃぁぁぁ!やっぱりすごいわぁ!大好きよ!クーちゃん!天才!もうてんっさいよ!」


「わぷっ」


突然、抱きついてきたおかあさんのおっぱいに、圧迫されて息ができない。

まぁ、まだへーきへーき。柔らかくてサイコーだわ。

あーサイコーー...あのーそろそろキツイんですけど..。

あっ、ヤバイ、ギブギブ!!本当に死ぬ!マジでやばい!

あー...だんだんと白くなって...


「ルー!息できてない!クオ死んじゃうから離して!本当にまずいから!」


あっやば、落ち......。


***


目がさめると、ベットの上だった。


「あっ!クーちゃん目が覚めた!うぅー...ごめんね!苦しかったよね!本当にごめんね〜!!」


泣きながら謝ってきたおかあさんだけど、また抱きついてきて、あ、やばい、また息できなッ...!


「あーもう!こら!だめだってば!ルーちゃんだめ!離れなさい!」


お、おとうさん、ありがとう...!!!


「あぁー!クーちゃんごめんね!ううー、でもさっきのは凄かったよ!私なんてもう、足元にも及ばないかもねー!」


さーっと、血の気が引くように心が冷めていった。


「どうしたんだい?クオ。そんなに思いつめた顔して。」


いってしまおうか。心の内を。でも、、いや、言おう。その方がいい。


「初めて刀を握ったのに、まるでずっと使ってたみたいに扱えて...努力してる人を馬鹿にしてるみたいで、気持ちが悪くて、辛くて...ひっ、く、、うっ」


なんで、泣いてんだ僕は。あほか。こんなんで、泣くなよ、みっともないな。


「ふふ、そっか、クオは優しいね。僕なんて魔法に才能があるってなった時なんて、有頂天になってめちゃくちゃ人を見下したのに。

本当にいい子だね。でもね、クオ。それは誇っていいものなんだ。神様からの贈りものなんてもんじゃない。神からもぎ取ったもんだ!


才能がある事を誇りなさい。そして、今の心を忘れないで。僕とルーの才能を継ぐだけじゃない君が、それを忘れて慢心してしまえば、どうなるか分かったものじゃない。だから忘れないで、優しいまんまのクオで居るんだよ?


ほら、泣かないの。もう疲れたね。おやすみ。ふふっ、ルーも寝てる。

クオも、おやすみ。いい夢見るんだよ。」


うんっ!うん!ありがとう...おとうさん...!!!



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