第八話 向こう
「あと3時間だ。それまでに作戦を練るぞ。」
俺はみんなの心の内を知ってからいままで背負ってきたものがすべてなくなった気がした。
みんなと肩を並べる、自分では意識してなかったのにみんなからはそう思われていた。
「国王?ボーっとしてどうしたんですか?」
「いや、なんでもない。新しい作戦がなかなか思い浮かばなくて。時間がないのにな。」
もうすぐ残り2時間を切る。
背負ってきたものがなくなったといってもみんなの先頭には結局俺がたたなくてはならない。
苦しい。
押しつぶされそうだ。
すると突然
「あの、国王。こういう作戦はどうでしょうか。」
手を挙げたのは少し小ぶりの男子だ。
「とりあえず言ってみて。」
彼の作戦は素晴らしいものだった。
ちなみに、みんなが言っているのは俺が自分が怪我をすること前提で戦うことであり、俺自身が戦うことには異論がないらしい。
彼の作戦はそれをしっかり考慮し、被害を最小限に抑える作戦だった。
「こ、これはすごいな。考えもしなかった。君、名前は?」
「僕はリットと申します。」
「リット君か。よし、君にはこれから俺たちの国の指揮官になってもらおうかな。」
俺がそんな無茶ぶりを言うと
「そ、そんなこと僕にはできません。荷が重すぎます。ましてや国王様がおりながら僕が上からものを言うなど恐れ多すぎます。」
必死で自分の言い分を述べるリットがおかしくてとうとう笑い出してしまった。
それにつられて周りのみんなも笑い出す。
リットはというと赤面しながら唇を尖らせている。
緊迫していた空気がいつの間にか和らいでいた。
「向こうでも、こんなふうにみんなと笑えたらなぁ。」
「国王?何かおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない。」
今のこの生活が本当に楽しく、幸せだ。
このまま永遠続けばいいのに。